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2020/3/23 19:30

販売累計173万台の「BRUNO コンパクトホットプレート」はなぜ売れた? ヒットのワケを担当者が自ら分析

近年、家電業界で高いシェアを誇っているのが、家電量販店ではなく雑貨店などで発売されているちょっとおしゃれな家電製品の数々だ。その代表といえるのがイデアインターナショナルが手掛けるブランド「BRUNO」(ブルーノ)の製品。カテゴリーは広く、調理家電から季節家電、雑貨やアウトドアグッズまで幅広くラインナップしている。なかでも、ブランドを牽引する大ヒット商品が「BRUNO コンパクトホットプレート」(実売価格9680円~)だ。

 

BRUNO コンパクトホットプレートが「売れ続ける理由」を担当者に聞く

BRUNO コンパクトホットプレートは、2014年に発売されて以降、贈答品などでも注目を集め、累計で173万台(2019年12月31日時点)を販売。2020年の前半には200万台を突破する勢いだという。では、数ある大手メーカーが続々と新製品を発売するなか、「BRUNO コンパクトホットプレート」はなぜ売れ続けるのか。その秘密を探るべく、イデアインターナショナルの担当者(下写真)に話を聞いた。

↑今回お話をうかがった取締役兼商品部の須崎博之部長(右)、商品本部 商品部 インテリアMDグループ グループリーダーの須藤智美さん(中央)、マーケティング&セールス本部プロモーション部 チームリーダーの上村美穂さん(左)

 

BRUNOは「デザインや暮らしを楽しむこと」をキーワードにブランディング

BRUNOは2012年にイデアインターナショナルが立ち上げたライフスタイルブランドだ。BRUNOを立ち上げる以前、同社は他社製品の販売代理店をしながら、雑貨や加湿器などをバラバラのブランドで取り扱っていた。これを改め、独自に家電製品を用意し、雑貨などもイメージを統一してラインナップしたのがBRUNOだ。最初に手がけたのはスチーマーやケトル、そしてストーブなどの季節家電、傘や革雑貨など。

 

立ち上げ当初からのブランドコンセプトは「大人を楽しむライフスタイルブランド」。これは現在も変わっていないとのこと。ターゲットは「楽しみ上手な大人」。家電や雑貨を選ぶときでも安さだけでなく、「プラスαの魅力のある製品を選びたい」と考え、また、それらを「誰かにプレゼントして喜ばせたい」と考える人たちだという。

 

「イデアは大人のライフスタイルを提案したいと考えたのが成り立ち。これをより明確にしたいと思ってBRUNOをブランディングしました。キーワードは、『デザインや暮らしを楽しむこと』。例えば、普段の食卓をパーティにしたい、オブジェのようなインテリアで自分たちの暮らしを楽しみたい、と考える人たちのブランドです」(須崎さん)

↑「BRUNO コンパクトホットプレート」とそれを中心としたパーティシーン

 

「半歩先を届ける」「ちょっと背伸びすれば手が届く」という絶妙な立ち位置を取る

BRUNOの魅力の1つが、常に新しい市場を切り開いていることだ。まだヨーグルトメーカーが一般化する前に「発酵フードメーカー」を商品化するなど、企画力や先進性の高い製品を発売した実績がある。近年では、ピクニックというカテゴリーで幅広いアイテムを投入し、アウトドアのライトユーザーを取り込むことに成功した。

 

「新しい需要を捉えて、市場を切り開いていくことはBRUNOの生命線だと思っています。大切にしているのは一歩先ではなく『半歩先をお届けする』こと。一歩先だと『かっこいいとは思うけど、自分には手が届かない』と諦めてしまう人もいると思うんです。でも半歩先なら『ちょっと頑張って、ちょっと背伸びをすれば届くんじゃないか』と思ってもらえる。それを生活にとり入れることで憧れに近づく、そう思ってもらえることをBRUNOは大切にしています」(上村さん)

↑2014年に発売された「BRUNO コンパクトホットプレート」。現在はギフト向けも含めて30種類以上のカラーやセットパッケージをラインナップしている

 

ホットプレートのデザインには徹底的にこだわった

そして2014年に発売されたのが「BRUNO コンパクトホットプレート」だ。当時、ホットプレートというと、週末にお好み焼きや焼きそば、焼肉などをするために取り出す「大きくて代わり映えがしない調理家電」というイメージだった。しかし、それでも多くの家に一台はあるメジャーな家電でもあることから、BRUNOブランドの立ち上げのときから製品化のターゲットになっていたそうだ。

 

「ホットプレートって、使う頻度は高いのに、あまりデザインなどに手を付けられていない不思議な領域の製品でした。でも、だからこそ『もっと楽しいものにできる』という思いは当初からありました。テーブルに通常のホットプレートがあるとおしゃれな雰囲気や世界観が崩れてしまいますが、たとえば、ホーロー鍋のような温かみのあるものがあったらどうだろう、と」(須崎さん)

 

そんな着想はあったものの、実際にホットプレートを発売するまでには2年の歳月を要した。

 

「『BRUNO コンパクトホットプレート』の基本となるカラーはレッドですが、世の中にはいろんな赤がある。どの赤がいいのか、当時の担当者は徹底して歩き回って様々な色を模索し、現在の赤を探し出しました」(須崎さん)

さらにカーブの丸みや本体のサイズ感、使いやすさなどを見極めながら現在の形、サイズを見つけていったという。こうして徹底的にこだわり抜いて練り上げられたデザインが売れた要因の1つだと須崎本部長は語る。デザインがいいからテーブルに出しっぱなしにできる。そうすると自然に使用頻度もアップする、ゲストの目にも入りやすくなるというわけだ。

 

他社に先駆けてオリジナルの”映えレシピ”を提案

次なるポイントは「オリジナルレシピを提案したこと」。現在では当たり前のようにレシピサイトに載っている、ホットプレートを使ったパエリアやアクアパッツァ、そして、たこ焼きプレートを使ったアヒージョといった、いわゆる”映えレシピ”を用意したのは「BRUNO コンパクトホットプレート」が先駆けだった。

↑たこ焼きプレートを使ったアヒージョ

 

ただし、レシピのハードルが高すぎると一般のお客さんは手を出しづらい。例えば、「プロヴァンス風」と言われるとハードルが高いが、「オリーブオイルだけでできる」と言われれば手を出しやすいはず……というわけで、BRUNOはこうした”手が届く憧れのレシピ(生活)”という絶妙な間合いを計り、これを具現化してみせた。いままでレストランでしか食べられなかったメニューが、ホットプレートでおしゃれに、カンタンに作れる。焼きそばや焼肉などの定番料理以外もできるんだ……。BRUNOの提案がユーザーの気づきを生み、提案した料理がレシピ投稿サイトに次々と掲載されていった。そしてこれを見た人が「自分でも作りたい」と感じ、新たなユーザーとなったわけだ。これが後述の売れた理由「アンバサダーのサポート」「写真の広がり」につながっていく。

 

アンバサダーが写真やレシピを拡散してくれた

BRUNOにはコンパクトホットプレートの販売以前から、様々な形でサポートしてくれている料理家などのアンバサダー(商品やブランドを応援・支援する顧客のこと)の皆さんがいた。アンバサダーは元々、ブロガーとして活躍している人に1人1人声をかけ、BRUNOの世界観に共感し、相思相愛の付き合いをしてくれる人にお願いしていったことから始まった。アンバサダーは紹介で広がっていき、彼女たちが、様々な料理の写真やレシピをネット上で拡散してくれたのだ。現在は約30人のアンバサダーが日本各地にいて、それぞれが地方や特性に合った様々なレシピを日々考えてくれている。

 

「最初のころはまだインスタグラムがそれほど流行っていなくて、”フォトジェニック”と言っていました。コンパクトホットプレートが売れていくなかでだんだんとインスタが広がってきて。”インスタ映え”なんて言葉も出てきて、タイミングよくその波に乗りました。新たなレシピも意図せず勝手に広がっていったので、一般の人たちがヒットさせたという面もあると思います」 (須崎さん)

↑公式サイトには、アンバサダーさんと共同開発したレシピの数々が

 

フォロワーとの関係作りでもアンバサダーが重要な役割を果たしている

このアンバサダーは、BRUNOのファンを増やすのに一役買っている。現在、BRUNOのSNSには約9万人のフォロワーがいて、このフォロワーとの関係作りの重要な部分をアンバサダーが担っているのだ。例えばBRUNOのホットサンドメーカーを使って、各地方の特産物を使ったレシピのアイデアをフォロワーに募り、アンバサダーがそのアイデアを現実化した企画では、味噌カツを挟んだホットサンドや、たこ焼きを挟んだホットサンドなどの様々なレシピが飛び出し、シェアされていった。さらに、インテリアに強いアンバサダーがアップした素敵な写真がSNSでシェアされ、BRUNOの世界観を演出していく、というわけだ。

 

「アンバサダーさんにはそれぞれのカラーがあります。スイーツが得意な人や、トークが上手で周りの人を巻き込みながらお料理ができるイベント向きの人、『自分でもできそう』と思える日常のお料理をされる人もいれば、もう少しハイエンドなデザイン性のあるレシピを作る人もいます。そのときそのときの製品や自分たちが何を伝えたいのかに合わせて、アンバサダーさんをアサインしています。このほか、アンバサダーさんと一緒にアイデアを考えてもらうキャンペーンを行ったり、社内イベントに来てもらって商品部の人間と話せる機会を作ったりして、コミュニケーションを取れるようにしています」(上村さん)

↑BRUNOのホットサンドメーカー シングル(中央)とホットサンドメーカー ダブル(右)

 

↑BRUNOのインスタグラムのアカウント。レシピなどが数多く投稿されている

 

一方で、一般ユーザーに対するリサーチも怠っていないという。

 

「5000~1万人の大規模なアンケート調査を定期的に行うことで、BRUNOのファンになってくれている人がどういう特性を持っているのか、明確にしています。それによって、例えば『BRUNOを好きな人は、ギフトを贈る割合が高い』といったことがわかってきます。どういう人たちに愛されているのかを自分たちが理解して、コミュニケーションの取り方だったり、ビジュアルだったりというものを、しっかり作り込んでいます」(上村さん)

 

こうしたアンバサダーやファンの意見、データなどを参考にしつつ、さらに取引先のバイヤーの意見などもとり入れてBRUNOの世界観に合った製品が生まれていく。ただし、ファンの意見は大切にする一方で、いい意味でそれを裏切る必要もあるという。

 

「お客様の言ったことそのままやったのでは潜在的なニーズには応えられない。顕在ニーズは捉えますが、あえてそのままは作らない、ということを常に意識しています。お客さんの暮らしを楽しくするために、驚きや感動を提案したいんです」(須崎さん)

 

サービスやコミュニティまでしっかりアプローチしたのがヒットの理由

では、最後にBRUNO コンパクトホットプレートはなぜヒットしたのか、ざっとポイントをまとめてみよう。BRUNOは「これまでにないものを切り開く」というブランドの姿勢に基づいて、デザイン性の高いアイテムを開発。その後、レシピとビジュアル、世界観の提案というソフト面でも訴求を行い、ブランドのイメージを「手が届く憧れ」という絶妙な位置に設定した。さらには製品を応援してくれるアンバサダーを地道に獲得し、そこにSNSの時代の流れが重なったというわけだ。このように製品を開発するだけでなく、サービスやコミュニティにまでしっかりアプローチしてきたことがBRUNO コンパクトプレートのヒットの理由といえる。

 

今後は、「インスタ映えの代わりに暮らしのテンションが上がる”暮らし映え”という言葉を提唱したい」と須崎さん。その言葉の通り、これからもBRUNOは「心が華やぐ憧れの存在」でありながら「手を伸ばせば届く」、そんな絶妙なラインの製品を世に送り出していくことだろう。BRUNO コンパクトプレートに続く、次なる大ヒット製品に期待したい。

 

おまけ・BRUNOでオススメの家電を教えて!

【その1 須崎博之さんオススメ

ハイブリッドUV加湿器 CALM MIST

実売価格1万6500円

薪ストーブをモチーフにしたぬくもりを感じるデザインが特徴。加熱ヒーター、UVライト、イオン交換樹脂フィルターを通したミストが心地良い空間をつくりだします。ミストの量は4段階で調節可能。加湿をしながら香りが楽しめるアロマパッド付き。

 

【その2 上村美穂さんオススメ

マルチ圧力クッカー

実売価格1万6500円

下準備をしてボタンを押すだけの電気圧力鍋。5種類の基本料理(ごはん、スープ、カレー、煮込み、肉じゃが)がワンタッチで作れる「ワンタッチメニューモード」に加え、加圧時間を1分単位で設定できる「マニュアルモード」、じっくり煮込んで味が染み込む「スロー調整モード」など、一台で幅広い調理が楽しめます。

 

【その3 須藤智美さんオススメ

マルチふとんドライヤー

実売価格1万3200円

マット不要で、ふとんに伸縮式のノズルを入れるだけでふとんを隅々まで温めるアイテム。ふとんの温めやダニ対策以外にも、衣類乾燥やくつ乾燥(専用アタッチメント付属)、暖房としての使用もOKです。縦置きで収納できるので、省スペースなのもメリット。コンパクトボディに木目調のハンドルで、インテリアにも馴染むデザインです。

 

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