新型コロナウイルス騒動ですっかり影に隠れてしまいましたが、今まさにスギ花粉のピークが始まっており、花粉症を患っている人にとってはつらい日々です。電車の中でクシャミなんてしようものなら一斉に睨まれて…なんて経験も多いのではないでしょうか。花粉シーズンに突入したいまこそ、有効な花粉対策の情報が必要。というわけで、「花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)」が1月末に開催したセミナー「2020年花粉シーズンの花粉症対策と最新情報」を振り返っていきましょう。
経済損失を防ぐためにも、健康経営への注力が重要
同セミナーで、花粉症臨床研究の第一人者である日本医科大学大学院の大久保公裕教授は、「米国の調査では、花粉症の薬を飲んで眠くなると、花粉症患者の平均生産性損失額は年間600ドル弱になるという。1日10時間の労働時間のうち1時間うとうとすると月間200ドルのロスで、それが3か月間続く。日本でもだいたいそのくらいだろう」と説明します。
そのうえで、大久保教授は「今、企業にとって重要なのは、『健康経営にいかに力を注ぐか』ではないか。オフィス内の空調を改善してクリーンな空気の流れを作り、飲み物や軽食などでリフレッシュできる環境を作るなどして、花粉症の薬を飲んでも眠くならないようにして生産性の低下を防ぐべきだろう」と語りました。
花粉症患者が増え続けるのは、花粉の飛散する量が増えているから
花粉症患者は年々増加しています。大久保教授によると、現在の日本では成人の4割以上が花粉症に罹っているとのこと。近年、花粉症患者が増え続けているのには、母体・母乳の影響や大気汚染、居住環境の変化、感染症の減少など様々な要因が考えられていますが、最も大きな影響を与えているのは、飛散花粉数の増加という根本的な問題です。
東京都がまとめた花粉飛散数の経年変化を見ると、年ごとに飛散量の多寡に大きな差がありますが、平均してみると過去10年で2-3倍に増えています。「戦後に植林したスギの木が成長し、花粉を多く飛散させ始めている。今後50年はこれが続く」とウェザーニューズ予報センターの草田あゆみセクションリーダーは解説します。スギは樹齢30年を超えると花粉を多く産出するようになり、おそらく樹齢100年までは花粉を出し続けるだろうと言われています。戦後に植林されたスギのうち、まだ成木に成長していない木が2割ほど残っていると見られており、これらが成長するとさらに花粉飛散量が増えると見られています。
なお、人工林で樹齢100年を超えたものが存在しないので、樹齢100年を超えたときに花粉がどうなるかは誰にもわからないそうです。つまり、われわれが生きているうちは、花粉の飛散量が増えることはあれ、大きく減ることはないということ。花粉症に罹ってしまったら自衛するしかないのです。
飛散の開始は早まったが、終了の時期は例年と変わらない
「昨年の夏が天候不順だっため、今年の飛散量は昨年に比べると少ないですが、それでもピーク時は多く飛ぶので油断はできません」と草田さん。特にこれからピークを迎えるヒノキに関しては「開花直前の気象状況も影響を与えるので注意が必要です」とのこと。
なお、今年は暖冬の影響で花粉が飛び始める時期は1週間ほど早まっていますが、「終わりは例年と変わらない予想です。5月初旬までヒノキ花粉が残る可能性が高いです」(草田さん)。ウェザーニューズでは現在、スマートフォンアプリ内に「花粉Ch.」を設置し、全国のリアルタイムの飛散状況や1時間ごとの「ピンポイント花粉飛散予想」を掲載しているので参考にしましょう。毎日の花粉飛散量を予測して大量飛散情報をプッシュ通知する「花粉対策アラーム」もあるので、外出する時には服装や装備の参考になります。