ガラスの間のピラー(支え棒)にヒミツの独自素材を採用
強化ガラスの熱貫流率は0.49/0.58W/㎡・Kとさらに断熱性が高いのも特徴。ただし、真空断熱ガラスの場合、間が真空になっているので、何もしないとガラス外側の大気圧に押されて2枚のガラスがくっついてしまいます。それを防ぐためにガラスの間にはピラーと呼ばれる支え棒が多数配置されています。このピラー、2枚のガラスに接しているため、ここから熱が伝わり断熱性を下げる要因でもあります。となると、断熱性を損なわないためにピラーはなるべく小さく少ないほうが良いのですが、小さすぎるとガラスを突き破ってしまうし、数を減らすと大気圧に耐えられず2枚のガラスがくっついてしまう……という課題を抱えているのです。
他社はピラーの素材にアルミやセラミックを採用していますが、パナソニックでは「低熱伝導性と高耐圧、高強度を保持する独自素材を開発しました。それが何かはヒミツ」(瓜生課長)。このピラーの性能に加え、強化ガラスの場合、ガラスの強度自体が高いためピラーの数を減らすことができ、さらに断熱性がアップしたのです。
景観を重視する欧州では、透明ピラー仕様に期待が掛かる
もうひとつの特徴が、透明ピラー仕様。先述のピラーは従来、使用している素材の都合上、黒色になっています。そのため、よく見ると黒い斑点が多数並んでおり、景観を気にする顧客からは不評でした。そこでパナソニックでは透明ピラーを開発することに成功、製品化に漕ぎ着けることができたのです。
欧州の都市部は住宅街でもオフィス街でも歴史的建造物が多く、中古物件が活発に取り引きされています。歴史的建造物の場合、新品のアルミサッシではなく、景観を保存するために既存の窓枠をそのまま使用したいというニーズが強いため、厚みのある従来の複層ガラスは使用することができませんでした。
その点、パナソニックの真空断熱ガラスは厚みが6mmなので既存の1枚ガラスの窓枠に組み込むことができるため、省エネ意識の高い欧州市場では注目されているのですが、課題となっていたのが有色ピラーの存在。しかし今回、透明ピラーを開発できたことで、真空排気孔がない点と併せて、景観を重視する欧州市場にマッチするのでは? と期待されているのです。なお、強化ガラスは2020年度の上期中に、透明ピラー仕様は2020年度内に市場投入できる見込み。
真空断熱ガラスに未来への希望とロマンを感じた
冒頭でも触れましたが、パナソニックは1月のCESに製品を展示しました。展示したのは、真空ガラス窓に有機ELディスプレイを組み込んだもの。有機ELディスプレイは熱に弱いため屋外での使用に向きませんが、真空断熱ガラスの中に組み込むことで太陽熱の影響を受けずに済む、という技術アピールです。将来的に、通りに面した店舗のショーウインドウに色鮮やかな映像を流すことができるようになるのです。
グラベニールは1枚の最大サイズが2540×1600mm、網入りガラスがないなど、まだラインナップが少なく住宅1棟すべてを賄えないため、現状では国内一般住宅市場への参入が難しい状況です。そのため、より断熱窓のニーズが高い欧米から事業をスタートしていますが、徐々にバリエーションを増やして将来的には一般住宅市場にも参入していく考え。6mm厚のグラベニールは汎用性が高く、1枚ガラスのサッシにも2枚ガラスのサッシにも取り付けられるため、新築・リフォーム両方の市場を狙えると期待されています。
グラベニールは断熱性の高さも魅力ですが、その背景にあるストーリーも魅力。かつてAVファンに人気だったパナソニックのプラズマディスプレイの技術が自宅の窓で生き続けるなんて、なんだか胸が熱くなりますよね。ぜひ国内市場にも早く普及してほしいものです。