緊急事態宣言が出されてから、早2週間が経過しました。リモートワークを導入する職場も増え、家で仕事をする機会が増えた人も多いでしょう。
労働者にとっては出勤の手間が省けるなど、リモートワークにはメリットがある一方で、もちろんデメリットも存在します。そのひとつとして挙げられるのが「在宅時間の長さが光熱費の高さにつながってしまう」という問題です。この記事では、その不安を解消すべく、家電コーディネイターとして活躍する戸井田園子さんに、在宅勤務時も、それ以外でも使える光熱費節約のコツを聞いてきました。
【教えてくれた人】
家電コーディネイター
戸井田園子さん
あらゆるジャンルの家電に精通し、それらを駆使した節約術にも定評アリ。GetNaviwebでは、ユーザー目線の製品レビューなど、多数の記事に登場し、好評を博しています。
リモートワークで光熱費が高くなってしまう……節約のカギを握る家電は?
リモートワーク時の光熱費節約のカギを学ぶ前に、光熱費が高くなってしまう原因を考えましょう。
「水道やガスは使うシーンが限られていますが、リモートワークで使用量が特に増えるものは電気ですよね。データがやや古いですが、資源エネルギー庁が公開している資料によれば、家電で最も多く電気を使っているのが冷蔵庫で、照明器具、テレビ、エアコン……と続いていきます。資源エネルギー庁のページにあるグラフを見ると、その4つで家の消費電力の4割以上を占めている計算です。電気代を節約するなら、消費電力の高い物から着手していくのがコツですね」(戸井田さん)
では、それぞれの家電はどのように電力を節約していけばよいのでしょうか。ここでは戸井田さんの解説をもとに、冷蔵庫、照明器具、エアコンの光熱費節約術をお届けします。
①冷蔵庫の電気代節約術
戸井田さんによれば、冷蔵庫が消費する電気代を抑えるためには複数の方法があるそう。すぐに始められることとして「食材の入れ方の工夫」を教えてくれました。
「まず前提として、冷蔵庫内の冷却エネルギーは入っている食材の量に比例します。つまり、冷蔵庫にたくさんの食材を入れれば入れるほど電気を使うわけです。なので、冷蔵不要の食材を入れないようにし、庫内の密度を抑えていけば、冷蔵庫にかかる電気代は下がります。また、食材を入れすぎていると庫内が見にくくなり、食材を探すために長時間扉を開けてしまうことにもなりかねません。
扉を長く開けていると冷気が逃げてしまうので、電力消費が一気に増えます。それを防ぐため、庫内の密度は7割くらいを目安とし、どこに何が入っているのか分かりやすくするのがいいでしょう。たとえば朝食用のバター・ジャム・チーズ・ハム・ヨーグルトといった同時に使うことが多い物を同じ個所にまとめて入れておくことで、食材を探す時間を大きく減らせます。また、庫内の冷気吹き出し口を確認しておいて、そこをふさがないように食材を収納すると、冷却効率がさらに高まりますよ」(戸井田さん)
と、ここまでも十分ためになる話ですが、冷蔵庫の節電はもっと奥が深いとのこと。食材の入れ方以外にも、電気代節約につながるカギがあるそうです。
「庫内の温度設定は適切なものにしましょう。もし、お使いの機種に『自動』や『エコ運転』といったモードがあれば最も経済的ですので迷わず採用してください。手動設定での切り替えを行う場合、『強』から『中』にモードを変えるだけで、平均11%の節電になるといわれています。そのため、『強』モードは使いたくないところですが、夏は外気温が高いので扉の開閉を繰り返しているうちに庫内の温度も上がりやすくなります。そんな季節にはやはり『強』の出番もあるので、シーンによる使い分けができる『自動』や『エコ運転』がほしいところですね。冷蔵庫は省エネ化が進んでいる家電でもあるので、長く使っているものであれば買い替えてしまうのも手です。いまお使いの機種に比べて消費電力が半分、なんてものも見つかると思います」(戸井田さん)
<冷蔵庫の電気代節約術まとめ>
- 庫内の密度は7割を目安に
- 冷蔵不要な食材を入れない
- どの食材がどこに入っているか分かりやすく収納場所をまとめる
- 庫内の温度は「自動」や「エコ運転」モードに
- エネルギー効率がいい機種に買い替える
②エアコンの電気代節約術
続いてエアコンです。つけっぱなしvsこまめなオンオフなど、”どっちが節約論争”が多いジャンルですが、プロの答えを聞いてみましょう。
「エアコンの電気代を節約するにあたって基本となるのは、温度設定の見直しです。まず温度について、よくいわれるのは、設定温度を1度上げる/下げるというものですね。実は、夏の不快さには温度だけでなく湿度も関わっていて、湿度が15%増すと、体感温度も1~2度上がるとされています。湿度計を設置しておいて、その日の湿度にあわせて設定温度を上下させれば、快適さを維持しつつ、節約ができます。
また、温度を下げずに風量を強くすることでも体感温度を下げられるので、節約術として有効です。なお、こまめな電源のオンオフは、かえって損になる場合があります。電源を切っている間に室内が暖まってしまい、もう一度冷やすのに再度電気を使ってしまうためです。使用環境にもよりますが、日中30分、夜は15分程度なら、オンオフをするよりつけっぱなしにしたほうがいい場合が多いです」(戸井田さん)
基本の温度設定について教わったところで、運転モードの話に移ります。「除湿」には、意外な落とし穴があるので注意が必要です。
「基本的には、『自動運転』を活用するのがおすすめです。温度・湿度などを勘案して、最適な運転モードと風量・風向で運転してくれます。また、『除湿』モードは意外に電力を使うケースがあるので知っておきましょう。一般的に、除湿は『弱冷房』と同様、通常の冷房時よりは少ない消費電力で運転できるのですが、一部の機種には温度だけ下げずに湿度だけを下げる『再熱除湿』が採用されていることがあります。この場合、機種によっては冷房以上の電力を消費する場合があるため要注意です。お使いのエアコンが、どのような除湿方法を採用しているのか、取扱説明書などを参照してチェックしてください。」(戸井田さん)
最後に聞いたのは、お手入れについて。ついつい忘れてしまいがちなエアコンの掃除ですが、定期的にやることで節約につながるそうです。
「フィルターが目詰まりしていると、消費電力に約6%の差が出るとされています。お使いの環境にもよりますが、2週間から4週間に1度、エアコンのお手入れをするのが理想的です。最近の機種には自動掃除機能が標準的に搭載されているので、買い替えてしまうのも手ですね。
また、室外機の配置もエアコンの運転効率に影響します。室外機は室内の熱を外に出す役割があるので、その周りに物を置かず、風通しをよくするように心がけましょう。また、室外機周辺の気温が高くなると運転効率が悪化するので、できるだけ日陰に設置。植物などを活用して、日陰を作る方法も有効です。その際は、風通しを悪くしないよう気を付けてください」(戸井田さん)
<エアコンの電気代節約術まとめ>
- 湿度を参考に、温度設定を見直す
- 暑ければ設定温度を下げる前に風量を強くする
- こまめなオンオフは逆効果になることも。日中30分程度ならオンのままでOK
- 自動運転モードを活用
- 除湿モードは採用方式に注意。「再熱除湿」の場合、電気代が高くなることも
- フィルターの掃除は2週間から4週間に1回が理想
- 室外機は、風通しの良い日陰に設置する
③照明器具の電気代節約術
近年大きく普及したLED。高効率低消費電力であることから、節約にあたっては必須のアイテムとなっています。
「照明器具の電気代を抑えるには、LEDをこまめにオンオフする、ということにつきます。しかし、うっかり電気を消し忘れてしまうなんてことは誰しもあると思います。そこで使いたいのが人感センサーや照度センサーを活用した自動操作。これならつけっぱなしになることはありません。また、スマートリモコンを併用して遠隔操作ができるようにすれば、手動でも電気の無駄遣いを防止できます」(戸井田さん)
<照明器具の電気代節約術まとめ>
- LED照明を導入し、こまめにオンオフする
- 人感センサーや照度センサーで自動操作をする
- スマートリモコンを使って遠隔操作する
掃除や洗濯、お風呂もエコに! その他の光熱費節約術
ここまでは、在宅勤務時、主に多くなってしまうであろう電気代について扱ってきました。以降は、電機以外も含めて、掃除や洗濯、お風呂など、家庭の様々なシーンで使える節約術を紹介していきます。
①食洗機やロボット掃除機は光熱費節約に役立つ
新しい家電を導入すると「新たに電気代がかかる要因が増えてしまう」と思っていませんか? 戸井田さんによれば、導入することによって光熱費の節約につながる家電があるそうです。
「食洗機は、水道代・電気代・ガス代をトータルすれば、手洗いよりコストが安くなります。また、ロボット掃除機『ルンバ』は1回1時間の掃除で電気代はわずか約1円だそう。紙パック掃除機の消費電力850~380Wなので、その中間値を600Wとすれば、1時間の使用で約16円となります。これなら、普通に掃除をするより断然お得ですね。食洗機やロボット掃除機は、家事を任せて新たな時間を産む『時産家電』としての活躍も見込めますし、導入するメリットは大きいです」(戸井田さん)
②掃除・洗濯は「まとめて」、光熱費を節約
戸井田さんによれば、掃除や洗濯といった毎日の家事においても光熱費節約の工夫があるそうです。キーワードは「まとめる」ことです。
「掃除の際は、部屋を片付けてから、一気に掃除機をかけましょう。運転モードは『自動』で。フローリングであれば『弱』でOKです。洗濯物はできるだけまとめて、洗濯機を回す回数を減らしましょう。ちなみに、洗濯機は容量の8割で回すのが最も省エネといわれています。洗濯機を複数回回す場合は、1回当たりの量を調節して電気代を抑えましょう」(戸井田さん)
③シャワーか浴槽か? 3人までならシャワーがお得
お風呂をシャワーだけで済ますのと、浴槽に湯を入れるのと、どちらがお得か考えたことのある人は多いでしょう。政府の資料を参考に計算すると、3人までならシャワーのほうが得だそうです。
「資源エネルギー庁が公開している『家庭の省エネ徹底ガイド 春夏秋冬』のデータによれば、シャワーを15分使った場合の湯の消費量は180Lです。もし、200Lの浴槽にお湯を張って入浴し、10分シャワーを使う(湯を120L消費)と仮定した場合、3人が入浴して使用する水は200+120×3=560L。その3人がシャワー15分(湯を180L消費)だけで済ませると、使う湯の量は180×3=540Lとなります。使い方次第で逆転しますが、一般的には、3人までならシャワーのほうが得、といえるでしょう」(戸井田さん)
④電気やガスの契約見直しで光熱費節約
電気やガスの契約を見直すことで、光熱費が割安になるケースがあります。これまで契約を見直してこなかった方は、検討してみる価値アリです。
「電気会社やガス会社でも、契約を一元化すると色々と特典があります。あるいは、オール電化という手も。我が家のケースでは、引っ越しを機にオール電化にしたところ、約30%も節約ができました。いきなりオール電化に踏み切るのは大変ですが、契約一元化は簡単な手続きだけで可能です」(戸井田さん)
<その他の光熱費節約術まとめ>
- 食洗器やロボット掃除機は、光熱費節約だけでなく時産にも有効
- 洗濯機は極力まとめて回す。容量は8割が最もエコ
- 掃除機をかけるのは、部屋を片付けてから一気に。フローリングは「弱」モードでOK
- 3人までなら、浴槽に湯を貯めるよりシャワーのほうが消費湯量は少ない
- 電気やガスの見直しやオール電化は大きな節約のチャンス