新型コロナウイルス対策において、さまざまな薬剤に関する「効く」「効かない」論争がメディアやネット上で繰り広げられています。次亜塩素酸水のその一つで、名前の似ている次亜塩素酸ナトリウムと混同されながら、さまざまな情報が飛び交いました。
厚生労働省もホームページ上で、モノに付着したウイルスへの直接噴き付けに関しては「一部の次亜塩素酸水も有効です」と有効性を認め、詳しい使用方法を記していますが、空間噴霧に関しては「国際的に評価方法は確立されていません」とした上で、「消毒効果を有する濃度の次亜塩素酸水を吸い込むことは推奨できません」(一部抜粋)と注意を促しています。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/syoudoku_00001.html
そのような中、次亜塩素酸水の科学的かつ有効な規格基準をつくり、安全で効果的な使用の普及・啓発活動などを目的とした「一般社団法人 次亜塩素酸化学工業会」が8月4日付けで設立、同工業会の設立趣旨や次亜塩素酸水に関するオンライン説明会がこのほど開催されました。
そもそも次亜塩素酸水とは何なのか?
同工業会の石田智洋代表理事(洗剤メーカー、ピュアソンの専務取締役)は、「次亜塩素酸水は有効性、安全性、低コスト、製造のしやすさ、空間噴霧への対応など、高いポテンシャルを有している。そのような次亜塩素酸水をもっと普及させるべきではないかと、技術力のあるメーカーが集まって工業会を立ち上げました」と設立の経緯を説明しました。
ただ、WHOおよび日本の厚生労働省が現時点では空間噴霧に関しては“望ましくない”との判断を示していることに対して、「インターネットやメディアの報道などで、次亜塩素酸水に対して間違った情報が提供されていたり、必要な知識を持っていない製造業者や販売業者が一気に市場に参入した結果、実際に効果が疑わしい商品が多数出てきたりと、消費者を惑わす事象が氾濫しているのは事実です。だからこそ、行政と連携して空間噴霧に対する効果・安全性の検証や情報提供ができる業界団体が必要だと考えました」と力説します。
こうした背景を踏まえて工業会では今後、消費者が安心して製品を選別・購入できるよう、(1)次亜塩素酸水の製造法と成分の規格を策定、(2)規格基準を満たす商品と製造装置に認証マークを付与、(3)正しい使用方法と保管方法を啓蒙、(4)行政と連携しながら空間噴霧の効果と安全性を研究していく考えです。
また、石田氏は次亜塩素酸水の空間噴霧に関する誤解として、いくつかの事例を示しました。例えば、次亜塩素酸水を空間噴霧した瞬間に空中の浮遊ウイルスを殺菌するのではなく、継続または間欠して噴霧することで、天井や壁などに付着したウイルスや菌をゆっくりと不活化することを主目的としているということ。こうした誤解を解き、正しい知識を周知させることが工業会の役目でもあるとします。