象印は、圧力IH炊飯ジャー「極め炊き」(NW-AS10型)“南部鉄器 極め羽釜”を8月21日に発売します。実売価格は14万円前後(税抜)。その主な特徴は「新形状の羽釜」、最適なタイミングで大火力と高圧力を投入する炊き方「プレミアム対流」、ボタンひとつで自動でふたが閉まる「スマートクローズ」の3つ。しかし、開発を担当した後藤 譲さんによると、実はリリースにも書かれていない部分が開発のキーになっていたと語ってくれました。
「吹きこぼれとの戦い」を制する2つの穴
「本機の開発の肝となったのが、蒸気口の新構造です。おいしいごはんを炊くということは、吹きこぼれとの戦い。ごはんを炊くと、おねば(ねばねばした汁)が上がってきて吹きこぼれの原因になります。今回は二重内ぶたを深くして対処していますが、それでも止められない泡は、蒸気口へと続く2つの穴でおねばの泡を割り、吹きこぼれを防いで旨みだけを内側に戻してくれるんです」
蒸気口の改良で洗うパーツの数も半減!
この新機構の蒸気口がもたらしたメリットはそれだけではありません。
「まず、蒸気口のセットが不要になったため、洗うべきパーツが従来の6つから3つへと半減。また、従来は蒸気口セットが占めていたスペースを利用できるようになり、より大きく見やすい液晶画面を設置することができました」(後藤さん)
つまり、蒸気口を刷新したことで、火力アップを阻んでいた吹きこぼれの課題をクリアし、洗浄パーツを減らし、見やすい液晶の搭載を可能にする、という3つの効果を実現したわけです。
大きく発表しないのは「伝えづらいから」
そんな重要な進化をなぜもっと大きく発表しないのか、後藤さんに問うと、「本当は伝えたいんですが、やはり伝えづらいので……」というのがその理由でした。たしかに、一般の方が興味を持つのが難しい部分であるうえ、わかりやすく伝えるには多くの言葉、あるいは文字数が必要です。それならば、ひとめでわかる羽釜の形や、もっとも重要な炊飯技術に解説の労力を割いたほうがいいという判断でしょう。
この新たな蒸気口に機能名などはないのですか? と聞いたところ、特別な名称はないとのこと。ニュースリリースを見ても、“「蒸気口セットなし」で毎回のお手入れが簡単”と、新機構がもたらす結果のみが書いてあるだけでした。派手でわかりやすい部分に注目が集まりがちですが、本当に重要なのはそれを支える部分にある、というのがわかる好例ですね。
しかし、さすがは14万円の炊飯器です。「おいしいごはんを炊く」という目的のため、この筐体にはいったいいくつの技術が詰め込まれているのでしょうか。改めて、高級炊飯器の価値を思い知らされた製品でした。
象印 https://www.zojirushi.co.jp/index.html
ニュースリリース https://www.zojirushi.co.jp/corp/news/2016/160728/NWAS.html