家電
2021/5/2 18:00

大手とは違う「本質家電」で勝負! 新潟発の注目メーカー・ツインバードの「ナンバーワンを取る戦い方」

手ごろな価格で性能十分な家電を多数手がける“バリューブランド”のルーツや、製品開発にかける想い、アプローチ方法についてインタビューを行う企画。本記事は、ツインバードのヒット商品を紹介しながら、同社の成長の経緯とモノ作りの哲学に迫る!

※こちらの記事は「GetNavi」 2021年6月号に掲載された記事を再編集したものです。

【ツインバード基本DATA】

社名:ツインバード工業

創業:1951年

本拠地:新潟県燕市

ヒット家電第1号:タッチセンサーインバーター蛍光灯、くつ乾燥機

1951年に野水電化皮膜工業所として創業。79年、ツインバード工業株式会社に社名変更後、自社ブランドの家電製品の開発を精力的に進める。2020年には「ぜんぶはない。だから、ある。」を新たなタグラインに掲げて製品開発を行う。

 

【今回ピックアップする家電】

新たな商品開発体制で軽さと使い勝手を追求!

↑SPEC●集じん方式:紙パック式●吸込仕事率:70W●集じん容積:0.25ℓ●充電時間:2.5時間●運転時間:強モード7分/自動モード30分●サイズ/質量:W235×H1050×D135㎜/1.4㎏

ツインバード

コードレススティック型クリーナー TC-E263GY

実売価格2万1780円

吸込仕事率70Wの強い吸引力と、1.4㎏の軽量性を両立。自走式ヘッドで操作性も抜群だ。センサーがゴミを感知するとLEDライトが赤く光り、自動で吸引力を上げる。不織布素材使用のダストパックを約2年ぶん付属。

↑関節ジョイントとボールキャスターによりヘッドが左右180度回転。フルフラットになり、ソファの下などの狭い隙間もラクに掃除できる

 

↑ワンプッシュでダストパックを外せる「ラクステ」構造により、手を汚さずゴミ捨て可能。ホコリの舞い散りを抑えて不快感を軽減する

 

【インタビューに答えてくれた人】

ツインバード工業
開発本部 商品開発部 次長
古川泰之さん

全カテゴリの製品デザインディレクションを行う。クリーナーカテゴリの製品企画・デザインにも尽力している。

 

開発とマーケが一丸となり“軽量紙パック式コードレス”を実現

TC-E263GYの開発は、商品開発部とマーケティング部がユニットを組んで進行。よりリアルなニーズを参考にして本当に必要とされる機能を研究した結果、「軽さ」「吸引性能」「使い勝手」を徹底追求することを決定。“軽量紙パック式コードレス”という新セグメントの確立に成功した。

↑前身モデルのTC-E261S。操作時に手に負担がかからないよう、ハンドルの角度を調整し、家具の間のスペースもスムーズに掃除可能だ

 

ヒット第1号のくつ乾燥機は雪国のツラい実情がヒントに

ツインバードは今年で創業70年。金属加工の街、新潟県燕市に本社を構えるメーカーだ。メッキ工場からスタートした同社は、1970年代に下請け業務から自社製品開発へと舵を切り、家電の開発にも着手。「カタログギフト商品」のビジネスモデルに着目し、製品作りを行った。

 

最初のヒット家電は88年発売のタッチセンサーインバーター蛍光灯(※1)と、くつ乾燥機(※2)。商品開発部の古川泰之さんはこの製品を「生活者視点でモノ作りをする自社のDNAが反映された製品」と語る。

 

「新潟のような雪国の冬は、靴の中が濡れて本当に大変です。そこで靴をすぐに乾かして快適に履ける製品を作りました。従来存在しなかった靴乾燥機というジャンルを生んだ、市場創造型製品です」

 

開発者自ら店頭に立ちユーザーの声に耳を傾ける

ツインバードの「生活者視点」のモノ作りの姿勢は、開発の現場以外にも表れている。

 

「お客様の声を迅速に商品開発部へフィードバックするため、コールセンターを本社内の商品開発部のすぐ近くに設置しました。また、開発担当者が自ら販売応援で家電量販店の売り場に立ちます。私も店頭で年配の女性に、自分では軽いと思っていた商品を勧めた際に『こんなに重いのは使えないわ!』との意見をいただき、お客様の生活におけるリアルなニーズに触れた経験があります。そうした声を体系立てて拾うため、昨年はマーケティング部を設立。市場規模など定量的な調査も行い、ツインバードの良いDNAは残しつつ、精度の高いマーケティングとのシナジーを狙っています」(古川さん)

 

そんなシナジー効果が顕著に表れたのが、コードレススティック型クリーナーTC-E263GYだ。商品開発部とマーケティング部がユニットを組み、開発に取り組んだという。

 

「数多あるクリーナーのなかから当社の製品を選んでいただくためのカギは『軽さと使い勝手の良さ』と考え、企画時点で『もっと軽く』『付属の紙パックの量が足りていないのでは?』など、集めたお客様の声を積極的に取り入れました。同モデルの売り上げは当初の年間計画の187%を達成。前モデルとの同期比でも2.4倍の売れ行きです」(古川さん)

 

製品の本質機能だけピカピカに磨き抜く!

ツインバードは2020年、「ぜんぶはない。だから、ある。」というタグラインを打ち出した。

 

「当社は大企業ではないので、すべての要素で100点の製品を作ることは困難です。しかし、ありそうでなかった紙パック式のコードレススティック掃除機や単機能の電子レンジなど、セグメントのなかでナンバーワンを取る戦い方はできる。大手メーカーの製品は『この機能は欲しいけど、要らない機能が多すぎて予算オーバー』という声も多い。我々はお客様に必要とされない機能は“引き算”し、残ったエッセンシャルな部分だけをピカピカに磨き抜くモノ作りをしています」(古川さん)

 

一方、18年にはコーヒー界のレジェンドが監修したコーヒーメーカーを発売。新たなブランド展開への意欲も見せる。

 

「今後は、単なる価格競争に巻き込まれない、体験価値の高い製品の開発も目指します。もちろんこれまでの『お客様の生活を支える必需品』的な製品の開発にも注力しますが、今後は『お客様の生活をより豊かにする嗜好品』ポジションの家電も積極的に生み出していきます」(古川さん)

 

【ツインバードのヒットアイテムたち】

(※1)FL-8271 タッチセンサーインバーター蛍光灯

くつ乾燥機(下)と同時期にヒットしたタッチセンサーインバーター蛍光灯。自社設計の電子回路によりリーズナブルな価格を実現。累計200万台を超える主力製品だった。

 

HS-221 電気保温ポット

1984年発売の電気ポットは家電開発の最初期の製品。

 

(※2)SD-501B くつ乾燥機

88年発売のくつ乾燥機「シューズパルU」は現在まで続くロングセラーに。

 

パワーハンディークリーナー ハンディージェットサイクロンEX2

コード式ハンディ掃除機シェア1位。「音はうるさくてもいいから、小さくて吸引力が最高の掃除機を作って」との声に応えた。

 

【コラム・バリューブランドの神髄】燕三条の職人たちとの絆が同社の製品開発のカギ!

ツインバードの製品開発を支えるのは、新潟県燕三条の協力工場の高い技術。同地区は江戸時代から「和釘」製造で栄えた職人の町で、同社の開発者は職人たちと仕事を進めるうえでともにお茶を飲んで雑談するなど、独特なコミュニケーションを体得している。同社こだわりのコーヒーメーカーも、そんな燕三条の職人なしには作れなかった。

全自動コーヒーメーカー CM-D465B

「カフェ・バッハ」の田口 護氏監修。コーヒーの挽きムラをなくすため、ミルには燕三条の職人が作った独自設計のステンレス刃を採用した。