ダイソンには同じ開発姿勢を感じる
――2年の開発期間を経て、BALMUDA The Cleanerは2020年の11月に発売されるわけですが、それ以前の2020年7月、ダイソンは、同じ様にダブルブラシを持つ製品「Dyson Omni-glide(ダイソン オムニグライド)」を韓国で発売しています(日本での発売は2021年の4月)。これについて、どのように感じましたか?
比嘉 私としては、「これまでにない素晴らしい体験を世界で初めて提供する」という思いで必死で開発してきたので、韓国で発表されたという事を聞いた時は驚きました。しかし、世界No.1のクリーナーメーカーがスペックのアップデートだけではなく、常に新しい価値を追求している姿を改めて感じました。自分が開発していたこともあり、この1台を世に送り出すということは、掃除の時間・体験を良いものにしようという似たような開発姿勢があったのかなと思います。また、似てはいますが実際のメッセージは違うので、バルミューダは変わらず‟掃除の時間をよりよくする”という体験を押し出すことに迷いはありませんでした。
――ちなみに、ダイソンのオムニグライドは「フローリング専用」を謳っているので、カーペットでの使用は想定していないようです。また、BALMUDA The Cleanerのような浮遊感は感じなかったですね。
比嘉 バルミューダも一番得意なのはフローリングです。独自の浮遊感を一番感じていただけるのではないかなと。一方で、カーペットの上では毛足によってヘッドが転ぶこともなく、低重心のヘッドが活躍するでしょう。
――マーケティングご担当の原賀さんはいかがでしょうか?
原賀 市場ではスティッククリーナーが主流の中、「自由自在に動く掃除機」として、一つのカテゴリとして認識いただけたと思います。バルミューダは扇風機で「DC扇風機」、トースターで「スチームトースター」というカテゴリを作りました。実は今回、BALMUDA The Cleanerでも同様に市場のカテゴリを作ることも目指していたため、同様のコンセプトの製品が出ることで、お客様にも「こういう選択肢もあるんだ」と感じていただけたのではないかなと思います。今回、掃除機を担当して研究しましたが、各社それぞれいいところがあると思います。もちろん、僕はこれ(BALMUDA The Cleaner)が一番好きですが(笑)。
今後もクリーナーはラインナップの拡充や製品の改良を行う
――原賀さんがおっしゃるように、「BALMUDA The Cleaner」は2本のブラシを持つ掃除機の市場を作り出す可能性がありますよね。御社は高級扇風機や高級トースターの市場を作った例もありますし。
原賀 そうですね。特に、これまで積極的に掃除をしていなかった方に対して訴求するパワーは大きいかと。寺尾が試作機を家に持って帰って使ったところ、「掃除が楽しいんだよ」と言っていました。また、体験会や量販店の店頭でお客様が初めて手に取って使ったとき、みなさん、必ず驚きの表情をされるんです。その意味で、「BALMUDA The Cleaner」は新しい体験のもと、掃除に対する意識を変えることができると自負しています。ただ、一方で購入者アンケートやユーザーレビューを見ると、必ずしも良さが伝わってきているわけではありません。多くの人に素晴らしい体験をしてもらうためには、もっと製品を磨き上げていかねばならないと思っています。
――ということは今後、クリーナーはラインナップを増やしたり、改良版を出すお考えなのですか? 御社はこれまで、一度発売した製品のメジャーアップデートは行ってきませんでしたが。
原賀 昨年の発表会でもお伝えしましたが、この1本で終わるつもりはありません。今回、コンセプトとしては良いものができたので、この方向性を堅持しつつ、もっと多くのユーザーに手にとってもらえるようより良い製品の開発に取り組んでいきます。
――今後も楽しみにしております。ありがとうございました!
バルミューダはこれまで、「五感に訴える家電」を標ぼうし、家電を単に家事を代行する機械ではなく、「人生に寄り添うもの=人生の一部」と考えてものづくりをしてきました。今回は、動かしたときまったく新たな感触=触覚を生むクリーナーを開発することで、ユーザーの人生を豊かにしようとしています。しかし、「新しい体験価値」とは「いままでにないもの」であるがゆえ、やっぱりその裏には想像を超える生みの苦しみがあったんですね。……とはいえ、ユーザーにしてみれば、だからこそバルミューダの家電は面白い。今後も同社の製品に期待していきましょう!