2018年、創業100周年を機にフルモデルチェンジして発売し、累計45万台出荷のスマッシュヒットとなった象印マホービンの炊飯器「炎舞炊き(えんぶだき)」。その新製品が圧力IH炊飯ジャー「炎舞炊き NW-FA10/18」(6月21日発売)です。大きな改良を加えてより美味しく進化したとのことですが、いったい何が変わったのか? 都内で行われた記者説明会に参加し、詳細をレポートします!
いままでは十分に米が混ざっていなかった!
「炎舞炊き NW-FA10/18」は2つの方向性を持って開発されました。それは、「炊飯性能の向上」と「多様な好みへの対応」です。炊飯性能の向上とは、つまりはより美味しいごはんを炊くということ。2020年モデルのアンケートでは炎舞炊きユーザーの95%が「おいしい」と答えて満足度は激高でしたが、そこで満足しないのが象印。
「そもそも、美味しいごはんとは何か。ごはんを構成する要素は米と水と熱。米に水をしっかり浸透させ、その後、高火力で沸騰して米に熱を伝える。水分と熱によってデンプン質が分解して甘味成分へと変化する。これがごはんの旨味。さらに、米を激しくかき混ぜることで甘味が増す」と、象印マホービン第一事業部の三嶋一徳氏は説明します。
かき混ぜることで米の表面からデンプンの粒が飛び出し、水分と熱に触れる機会がより多くなり、それだけ早く甘味成分に変化する。水分に含まれた甘味成分は最終的な炊き上げ工程で米の表面にコーティングされるとのこと。
「ごはんを食べるとき、最初に舌に触れるのは米の表面。つまりは、甘味成分を米の内部だけでなく、表面にいかに多くコーティングできるかによって、美味さを感じる度合いが変わる。そのためには激しくかき混ぜることが重要となるんです」(同)
……というように、美味しいごはんを科学的に分析した上で、前モデルをあらためて検証してみると、思ったほど米がかき混ぜられていないことがわかったそうです。え、そうなの?
「炎舞炊き」は底面にリング状の電磁コイルを搭載し、対角線の2つのコイルが対になってローテーションを組んでオンオフを繰り返すことで釜内部に温度差を起こし、激しい対流を起こすという仕組みでした。赤く染めた米粒状の加工食品を下に敷き詰め、その上に青く染めた米粒状の加工食品を重ねて炊いたところ、しっかり混ざっている……ように見えていました。
しかし、米の動きをもっと分かりやすくするために大きめの玉こんにゃくを実験してみたところ、中心にはあまり近寄らず、釜の縁に沿いながら規則的な動きを見せました。赤青の米粒を使った実験をもう一度よく見ると、中心部分が真っ青で、下部の赤米と混ざっていないことがわかったのです。
そこで今度は、赤と青の米粒状の加工食品を横方向に6等分して配置して炊き上げてみたところ、ほとんど最初の配置のままきれいに6等分された炊き上がりとなりました。つまり、外周部分も一見よくかき混ぜられているように見えていたけれど、それは上下方向に混ぜられていただけで、左右には全く動いていなかったということです。
立体的にコイルを配置して複雑な対流を実現
「もっとかき混ぜることができたら、もっと美味しくなるはず」と象印の炊飯器開発スタッフは考え、新たなIHコイル開発に取り組みます。試行錯誤の結果生まれたのが、縦横3次元対流を可能にした「3DローテーションIH構造」。釜底に縦の対流を生むコイル3つと、釜底側面に横の対流を生む横長の大きめのリングコイル3つをT字状に配置し、2つのコイルを対(つい)にしてローテーションを組んでオンオフを繰り返す仕組みです。
釜底のコイルが中心寄りになったことで、釜内部の中心部分にも強い対流が生まれるとともに、縦の対流に横の対流が加わって不規則かつ複雑な対流を生み、米を激しくかき混ぜられるようになったのです。あらためて赤青米を上下と左右に分けて炊いてみると、両方とも前モデルに比べてよく混ざっているのが分かります。