寒さ暑さも彼岸まで。暖かくなり本格的に春の訪れを感じるようになると、こたつやヒーターなど暖房器具を、そろそろしまおうと考えている人は多いでしょう。ひと冬分の掃除と収納となると面倒に感じますが、メンテナンスを怠るとトラブルの原因になりかねません。整理収納アドバイザーの丸マイさんに、冬物家電の正しいメンテナンス方法を教えていただきました。
片付ける前にメンテナンスが必要なのはなぜ?
期間限定で使う冬物家電は、 “使い終わってしまう前のメンテナンス” が一番大切なのだといいます。代表的な家電を挙げて、メンテが必要な理由を聞きました。
・ホットカーペット
「冬の間ずっと床に敷いていたホットカーペットは、ダニの死骸やフンのほか、人の皮脂汚れや髪の毛、食べこぼしなどたくさんのハウスダストが付着しています。これらを放置するとアレルギー症状をおこす恐れもあります。また、一見目立たない汚れを放置したまま長期間保管することによって取り出して、いざ使おうとしたときには大きなシミになっていることもよくあります」(整理収納アドバイザー・丸マイさん、以下同)
・こたつ
「こたつはホコリに気をつけてください。ホコリがあるまま湿気のある場所に保管すると、カビが発生しやすい環境を作ってしまいます。以前、こたつの天板を拭かずに収納していて、次のシーズンに出したコタツの天板にカビが発生しているのを見たことがあります」
・加湿器
「加湿器は水を使う家電製品ですので衛生面がとくに気になるのではないでしょうか。加湿器にピンクぬめりのついた状態で使用するのは気持ちの良いものでもありませんし、放置していると黒カビとなり、加湿器の中の汚れがそのまま気化してお部屋中に漂うことになります。それを吸い込むことで、人体に影響を及ぼすこともあり、とくに小さな赤ちゃんや子どものいるご家庭では注意が必要です」
このようにメンテナンスを怠ることで何が起きるかというと……。
「家電製品の寿命を短くするリスクや、人体への悪影響がないとも限りません。また怖いのが、発火です。ごみやホコリが大量に溜まったまま使用すると発煙や異臭の原因にもなります。季節家電のメンテナンスは面倒くさいと思われがちですが、長期保管の前には必ずしてもらいたいと思います」
メンテナンスしやすい環境づくり
続いて、丸さんが冬物家電をしまうときに意識しているポイントについて解説いただきました。「冬物家電と同様に、夏に使う扇風機や除湿機についても同じようにしています。ぜひ参考にしてください」
・お手入れ方法をすぐ確認できる環境をつくる
「長期保管の前のメンテナンスは年に一度なので、また次のときにはメンテナンスの手順を忘れてしまいます。わざわざ取扱説明書を探すのも意外と面倒です。私は、スマホに『お手入れ方法』のページのみを抜粋して写真に撮り、写真アプリの中で『電化製品』などラベリングしていつでも見れるようにしています」
・取扱説明書をよく読む
「『お手入れ方法』のほか、取扱説明書をくまなく読む人は少ないと思いますが、じつはとても大切なことです。とくに冬物家電はカビや発火の恐れもあるため注意して読んでください。読むことで『こんなことができるのか』という発見があったり、逆に『これはしてはいけないんだな』といったことに気付いたりすることも。事細かに記載されているので、取扱いの仕方を知っているだけで電化製品を持ちよく、そして長く使うことができます。
最近はインターネットに製品の型番を入れると取扱説明書を見られることも多くなりました。ぜひ手元で確認できるよう環境を整えましょう」
・購入時の箱をとっておく
「整理収納アドバイザーの観点から基本的に『購入したものの箱は捨ててください』とお伝えしていますが、季節家電の箱は例外です。なぜならば、保管の際にちょうど良い大きさ・形をしているからです。購入時の状態で保管することがもっとも良い保管方法なんです」
・冬物家電はまとめて保管する
「同じタイミングで使い始める冬物家電は、できるだけまとめて同じ場所に保管をすることをおすすめしています。これにより、出し入れしやすく管理もラクになります。保管する場所は、押入れやクローゼットなど、室内の換気できる場所が良いでしょう。マンションのトランクルームは建物ごとに状況が異なるため、そのマンションの『預けてはいけないもの』リストなどを確認してから冬物家電を保管するかを検討してください。高温多湿にならない湿度が調節できる場所を選びましょう」
冬物家電のメンテナンス方法
ここからは、冬物家電として代表的なホットカーペット、こたつ、加湿器について、掃除の仕方や収納方法、注意するポイントなどを教えていただきます。
ホットカーペット
「冬の間、毎日使うホットカーペットは、肌と接することの多い家電なのでお手入れはとても大切。水でじゃぶじゃぶ洗えないため、こまめなお手入れを日頃から心がけてください。ちなみに食品のカスはやシミは、カビ発生の原因になるので使用中も掃除機かけを含むメンテナンスが必要です」
【用意するもの】
・掃除機
・ごく少量の中性洗剤入りのぬるま湯
・乾いた布
1.掃除機をホットカーペットの表と裏にかける
「ホコリを掃除機できれいに吸い取ります。ホットカーペットの裏の繊維に髪の毛がついていることが多いので注意して吸い取るようにしてください」
2.布で拭き取る
「汚れが気になる場合は、ごく少量の中性洗剤を入れたぬるま湯で拭き、日陰で自然乾燥させましょう。さらに、最近のカーペットについている『ダニ退治機能』を活用するのもおすすめです。『ダニ退治機能』が効果的に機能する所要時間は製品ごとに違います。取扱説明書を読み適切な時間、『ダニ退治機能』をオンにしてください。汚れの拭き取りは、日ごろから発生したらすぐに固く絞ったクロスで拭くことでシミ防止になります」
3.湿気をとる
「パネル部分の水拭きは避け、乾いた布でホコリを拭き取りましょう」
4.通電してから折り畳む
「しまう前に一度、ホットカーペットを通電し、温度を上げて湿気を完全に除去しましょう。温度が十分に下がったことを確認してから、表面が表にそしてパネルを上にして折りたたみます。購入時の折りたたみ跡があると思いますので、その折り方通りに折るようにしましょう。購入時の箱またはポリ袋に収納し、パネルや発熱体に負荷をかけないよう、上にものを乗せないでください。パネルや発熱体を傷める可能性があるので防虫剤は決して使用しないでください」
こたつ
「こたつの内部にはホコリが溜まりがちです。放っておくとカビの温床になります。しっかりとホコリを除去しましょう。また、こたつ布団はとくに分厚い布ものです。湿気対策を忘れずに」
【用意するもの】
・掃除機
・空気ポンプ
・濡れた布
・乾いた布
1.天板をしっかりと拭く
「天板を濡れた布で拭きあげます。汚れが気になるときは、中性洗剤を少量入れた水を使います。その後、乾いた布でしっかりと水気を拭き取りましょう」
2.こたつ布団を取り、手入れをする
「天板を外して、こたつ布団をベランダに干ししっかりと湿気を取り除きましょう。食べこぼしなどが気になる場合は、クリーニングに出すと次回も気持ちよく使うことができますね。こたつ布団は完全に空気を抜けるわけではないため圧縮袋ではなく、寝具の季節布団をしまうような布製の袋に入れることをおすすめしています」
3.こたつの脚を水拭きする
「意外と汚れを見落としがちなのがこたつの脚です。冬場ずっとこたつ布団やカーペットに接しているためホコリが多くついています。水拭きしてホコリを除去しましょう」
4.プラグを抜いてコード、コンセントの手入れをする
「プラグとコード、コンセントを乾いた布でしっかりと拭きましょう。火災の予防としてもコンセントは日頃からホコリがたまらないように手入れをすることを心がけてください」
5.ヒーター部分を掃除機でホコリをとる
「ヒーター部分は起毛になっていますので、布で拭くとさらに繊維が付着してしまい逆効果です。掃除機をブラシノズルに変え、丁寧にホコリをとっていきます。最近では、ヒーター部分の作りもさまざまです。メーカーの推奨するの手入れ方法をぜひ確認してください」
6.ヒーター部分内部のホコリを空気ポンプで吹き飛ばす
「ヒーター部分の内部は手が届かない場所です。ボールや自転車のタイヤに使う空気ポンプで空気を送り込み、ホコリを吹き飛ばしましょう。そして湿気の少ない場所に保管してください」
加湿器
「水を使う加湿器は手入れを怠るとすぐにカビである “ピンクぬめり” が発生してしまいます。これは見た目にも気持ちよく使えませんし、黒カビの原因ともなり、発生すれば空気中にカビを撒き散らしてしまい、衛生的ではありません。使用時には時間を決めて、1日1回は水を捨てて新しい水を入れ替えるようにするだけで掃除をする回数を減らすことができます。
また、加湿器に浄水器の水を入れている方も多いと思いますが、雑菌繁殖しやすくなる原因です。塩素処理されている水道水を入れるようにしましょう」
【用意するもの】・掃除機
(・漂白剤)
・濡れた布
・乾いた布
1.外側のホコリを布で拭き取る
「まずは外側のホコリを乾いた布で拭き取ります」
2.内部の清掃をする
「ふたを開けて内部の掃除を行います。外フィルターがある場合は、掃除機でホコリを吸い取りましょう。加湿フィルターがある加湿器の場合は、水洗いを行います。メーカーによっては漂白剤を使えるものもあるので確認してから行いましょう。加湿フィルターを洗浄の後、ドライヤーで乾かすと縮む可能性もあるため日陰干しにします。その他のパーツは、ブラシで強く擦ると破損の原因になることもあるので注意が必要です」
3.しっかりと乾かしてから保管する
「内部の清掃が終わったら、十分に乾燥させましょう。乾いたら、購入時の箱またはポリ袋に入れて、歪まないよう立てた状態で保管してください。加湿器は製品によって手入れの仕方がまちまちです。必ず取扱説明書をよく読みメンテナンスを行ってください。水を入れてはいけないと書いてある送風口などに水が入ると破損の原因にもなり得ます」
メンテナンスをしてからしまうことで、思わぬトラブルを防ぎ、家電製品を長持ちさせられます。何より、次の冬に使うとき、面倒な手入れなく使い始められるのもうれしいですね。まずはそれぞれの取扱説明書を確認し、家電製品にあったお手入れの仕方を確認してみましょう。
プロフィール
整理収納アドバイザー・クリンネスト2級認定講師(お掃除スペシャリスト) / 丸 マイ
整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師、クリンネスト(お掃除) 1級、防災士。片づけが苦手な方やもっと片づけのスキルをアップしたい方に向けて、整理収納アドバイザー2級認定講座、片づけサービスを行う。忙しい人の休日が家事や買い物など平日の準備で終わらないよう、効率の良い家事の動線と動作を考えた「片づけ」を提案している。