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2017/3/5 16:00

「源氏物語」と少女マンガにみる共通項――女たちは単なるイケメンに萌えているのではない!

覗けば深い女のトンネルとは? 第13回「女は“痛みを共感できる男子”を探している」

先日、1人で新宿二丁目のキャンピィ!バーで飲んでいたときのこと。スタッフさんたちがいろいろ構ってくれました。そのときに「お姉さんはノンケなの?」と聞かれたんです。恋愛対象の性別を聞かれるところが二丁目らしいけど、そういうオープンなところがとても気持ちのいいところでもあります。

 

男と女、どっちが好きか。その流れで、とある二丁目のバーの店長さんがめっちゃくちゃボーイッシュで一目でメロメロになった、という話をしたら、

「ボーイッシュな女性が好きということは、やっぱりノンケなんじゃない?」

とのこと。なるほど。まあ普通に好きなアイドルは男性だし、そもそもはノンケなのでしょう。

 

だけど、男性(特に中年以降)のおっさんたちの傲慢なところにかなりの嫌悪感を抱いているんですよね。同じような理由で「学歴の高い男は嫌いだ」と言っている女たちもけっこういます。一緒に仕事してると傲慢なんだってさ。事務や派遣の女性への蔑視が激しいらしいです。残念なことです。当たり前のように権利を持って生まれて、それを行使して、圧倒的な弱者の立場に立ったことのない人たちは、やっぱり想像力に欠けるところがあるのかもしれません。おっさん世代も男尊女卑思考の年代ですから。

 

少女マンガ随一のヒーローと言われている『BANANA FISH』のアッシュは、リバー・フェニックスに似たお顔だちでイケメンなことはもちろん、頭脳明晰で情に厚いところも萌えの完璧なヒーローです。だけどアッシュは、悪いおっさんどもに捕まって、めっちゃくちゃレイプされてるんですよね。もうボッコボコ。読みながら思わずお尻を押さえてしまいます。

 

だからアッシュは圧倒的権力を持つ傲慢なおっさんたちへの激しい怒りと復讐心を抱えています。なおかつ、弱い者への深い情愛と繊細な心を持っています。

 

多くの女性ファンは、彼の痛みをシェアして自分のものとして受け止めていたはず。アッシュの心の奥にある怒りの炎は、女子たちのそれと同一なんです。アッシュが単なる無敵のスーパーヒーローだったら、これほど人気が出たかどうか。

 

女に生まれると、まあ人生で1度や2度や100度は、セクハラの経験があります。電車や人混みで身体を触られたり、わいせつなことを言われたり。自分がもののように扱われたことに猛烈に腹が立ったし、人権を損なわれたことに深い悲しみを覚えました。

 

そういう体験と折り合いをつけて、女はしたたかになっていくんです。無神経な人たちにどう対応するか、怒りをぶつけるのか、利用するのか、徹底的に避けるのか。それは人それぞれです。後天的に同性愛者になる女性って男性よりも多い気がします。

 

面白いのは、ティーンズラブコミックなどのエロもので、男性キャラのトラウマが性的行為の免罪符として使われていることです。子どものころに負った心の傷を癒すため~、家族を失い孤独の心を満たすため~、とまあいろんな理由が描かれます。単に「さかっちゃって」「溜まってたから」「誘われたから」みたいな動物臭のする理由は女子的にはNGなのです。

 

『源氏物語』の主人公、光源氏は1000年以上も女性を虜にしてきました。彼はイケメンっていう設定ではありますが、女たちが彼をステキだと思うのは、彼の持つ切なさにあります。義母への満たされない愛のための女遊びです。うん、それなら仕方ない、可愛そうな光源氏……!(私があなたの傷を癒してあげる……!)

 

恋愛ものの少女マンガでも、アンニュイ男子の傷を主人公が癒して愛が深まりハッピーエンド、みたいな話は定番です。それなら軽々しく浮気されたり愛が消えたりすることがなさそうだからね。

 

二次元にしろ三次元にしろ、女たちは単なるイケメンを追いかけているわけではありません。アイドル本や少女マンガを読んでキャーキャー騒ぎながら、密かに「痛みを共感できる男子」を探しているのです。