東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年、大学センター試験がなくなり、大学入試制度が大きく変わります。この大学入試制度改革に向けて、教育変革の大きな波が押し寄せようとしています。
学習指導要領ってなに?
2017年2月14日、文部科学省は、小学校・中学校の学習指導要領等の改訂案を公表しました。小学校は2020年度から、中学校は2021年度から、新たな学習指導要領等にもとづいて授業が行なわれます。
そもそも学習指導要領ってなんでしょうか。
文部科学省は、学校教育法等にもとづき各学校で教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準を定めています。これを「学習指導要領」といいます。
全国のどの地域で教育を受けても、一定の水準の教育を受けられるようにすることが学習指導要領の目的で、日本の公立の学校では、学習指導要領に沿って授業が行なわれています。時代の変化に合わせて、学習指導要領は、10年に一度の頻度で改訂されています。
「確かな学力」の育成をめざす
前回、平成20年の改訂は、知識基盤社会※1でますます重要になる子どもたちの「生きる力」をバランスよくはぐくむ観点から見直されました。ちょうどこのころ、「ゆとり」教育と「詰め込み」教育について議論がありました。
そして学力の3要素である
1.基礎的な知識及び技能
2.これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表現力その他の能力
3.主体的に学習に取り組む態度
から構成される「確かな学力」の育成が重視されることとなり、学習指導要領は「脱ゆとり」に大きくかじを切りました。今回の改訂もこの「確かな学力」の育成をはかる内容となっています。
2030年を見すえた学習指導要領の改訂
今回の改訂にあたり2030年という節目の年が教育の目標とされました。2030年は、東京オリンピック・パラリンピックが終了して10年後の社会であり、現在の小学1年生が20歳になる年です。少子高齢化がいっそう進行し、日本の国際的な位置づけはどのようになっているのでしょう?
不透明な2030年を見すえて、学習指導要領は改訂されました。未来の日本を背負う子どもにとって求められる力が、新しい学習指導要領に盛り込まれています。
改訂の3つの柱
今回の改訂の背景は、2030年に向けて、言語能力、情報活用能力、課題解決力などを育成し、現在のさまざまな課題に対応できる力を身につけることを主眼にしています。
ポイントは以下の通りです。
①言語活動の重視
現在小学校5・6年生で行なわれている「外国語活動」が教科になります。また、小学校3年生から「外国語活動」の授業が始まります。児童生徒の「聞く」「読む」「話す」「書く」の総合的なコミュニケーション能力を向上させることが目標にかかげられています。
②情報活用能力(情報技術を手段として活用する力を含む)の育成
「社会生活の中で情報や情報技術が果たしている役割や及ぼしている影響を理解し、情報モラルの必要性について考え、情報社会に参画する態度を養う」とうたわれています。また、論理的に考える力をはぐくむために小学校でプログラミング教育が始まります。
③授業の進め方の改善
一方的に知識を得るだけでなく、「主体的・対話的で深い学び」いわゆるアクティブ・ラーニングの視点で授業を改善することがうたわれています。すべての教科に、アクティブ・ラーニングが盛り込まれており、課題解決力を養います。
※1中央教育審議会は、「知識基盤社会」を「新しい知識・情報・技術が政治・経済・文化をはじめ社会のあらゆる領域での活動の基盤として飛躍的に重要性を増す社会」と示しています。
※2知識を伝達する学習スタイルではなく、「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び」。課題解決のためにグループで調べ、話し合い、発表し合いながら学ぶ学習スタイル。
【著者プロフィール】
藤田由美子(ふじたゆみこ)
株式会社ユーミックス代表取締役社長。1993年の創業以来、コンピューターリテラシー教育を数多く手がける。
「生きる力」「社会力」の育成をめざして、子ども向けICT教育のカリキュラム作りにも力をいれており、大手携帯電話会社のケータイ安全教室の企画立ち上げ、ネット安全利用推進プログラムの開発など、実績多数。