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2017/5/29 16:00

女性が惹かれる「アンニュイ男子」とは? 女の“萌え”にはバックボーンが必要!

覗けば深い女のトンネルとは? 第25回「男の妄想ロマンと女のそれとはアンドロメダくらい遠い」

 

和久井は少女漫画マイスターとか研究家とか名乗って仕事をしています。なのでもちろん少女漫画はよく読むのですが、少女に限らず大人の女性向けのマンガも、そしてとってもエッチなティーンズラブコミック(TL)も読みます。

 

そのTLで好きな作家さんが冬森雪湖さんです。彼女の出世作は『愛と欲望の螺旋』。母親の再婚のためイケメン双子のお兄さんがいる家に住むことになった主人公まあやが、双子の片方からあれやこれやされる話です。はあはあ。

 

最近の人気作は『甘やかな花の血族』でしょうか。平凡よりちょっとできない目のOLが、大企業の社長(イケメン)にさらわれてあれやこれやされて嫁にさせられそうになる話です。はあはあ。

 

冬森さんの描く物語は「ホントにエロが目的なんだろうか」と思うくらい重厚で壮大です。『甘やかな花の血族』なんて、代々続く名家と巫女の一族の話です。もー女が大好きそう。

 

そして同時に、登場する男性たちはみんな大変な過去を背負っています。就寝中にうなされて叫び出しちゃうくらい心に傷を負っているんです。みんな一見、クールだったり俺様だったりして偉そうなんだけど、心の奥底では泣いている、みたいな。これ、しみじみ女萌えだなと思います。

 

仮に、なーんのトラウマもなく、明るく元気に育った男性がいたとしましょう。彼の定番の挨拶は「ヤッホー!」です。彼には大した悩みもなく、人生は順風満帆で友達も大勢います。その彼が、主人公を熱く求めてきたら……なんか、単にサカッてる人みたいな感じですね。もしくは「みんなに同じこと言ってるんじゃないの? だって昨日も合コン行ってたじゃん!」みたいな。まったく信用なりません。深い関係があるんだかないんだかよくわからない女友達もいたりして、ヤキモキしそう。そのくせ「自分がよければそれでいい」ムードが満々しててエッチもへたくそそう。

 

繊細な心は、傷ついたり深く考えるからこそ生まれるんです。弱者になった経験があるから、女にも優しくできる……と、女は考えるわけです。よってティーンズラブコミックの主流は、脳天気なリア充男子ではなく、アンニュイで、悩みを抱えていて、その傷を埋めるために主人公を求める……みたいな設定が多いです。光源氏ですな。どん暗い。TLでその王道を行くのが冬森さんです。

 

そうしてアンニュイな男子の傷を癒してあげたら(エロ漫画なんでエロを通してってことになるんですが)、きっと離れられなくなってくれそうじゃないですか。女が求めているのは、一瞬の快楽ではなくて、永遠に続く心の安定にくっついている快楽なんです。

 

エロ度合いは薄いですが、女性向けの恋愛小説「ハーレクイン・ロマンス」も、登場する男性はみんな大変そうな過去を抱えてます。古今東西、男のトラウマは女の大好物なんですね。傷があるなら、多少の無理(ハードなプレイとか)を聞いてあげてもいい、みたいな母性本能もニョロッと顔を出しそうです。

 

和久井の知りあいに、めっちゃくちゃアンニュイムードを醸し出すのが上手な男性がいます。多くは語らないけれど、家庭環境も複雑で、なんかいつも大変そうで「香菜子さんといると安心する」「俺、ほかの人にこんな風に素直に話せないから」みたいな甘ったれたことを平気で言うんです。ぐぬぬ、やるなって感じ。カワユくて「会いたい」と言われるとホイホイ行っちゃいます。

 

ところがですよ。先日、官能小説家の睦月影郎さんの講座を聴きに行ったんです。そしたら「エロに男の生い立ちとか女の過去とか、余計なことは一切いらない!」と言うではないですか。欲情する以外の部分を一切排除して、そこに集中してる感じですね。睦月さんのエロ三原則は「避妊しない、生理がない、処女でもイく」だそう。ともかく、男の妄想ロマンと女のそれとはアンドロメダくらい遠いですね。

 

2人の関係のバックボーンがなければ、女は萌えません。深い話なしにいきなり行為に及ぼうとされたら「なにこの人サカっちゃってキモい!」です。

 

やる気満々で女子の家に行ったら断られ、「1回でいいから!」と叫んだ男子の話を聞いたことがあります。1回だけやらしてやって女になんのメリットがあるんですか。「おまえ、間違えまくってるぞ」とささやいてやりたいです。