中川政七商店(奈良県)が主催する工芸メーカーの合同展示会「大日本市」が、先週、東京・青山で開催されました。中川政七商店は、日本の伝統技術をリブランディングした生活雑貨の企画・製造・販売を行うかたわら、他社の経営コンサルティングやブランドプロデュース、流通サポートを行っていますが、それらパートナー企業とともに合同展示会を年4回開催し、百貨店のバイヤーなどに新商品を紹介しています。今回は、今年12月から来年2月に展開する新商品を中心としたお披露目会に潜入してきました。
究極の定番家電の登場もありえる?
青山の展示会に集まったのは14社20ブランド。これまで大企業の下請け工場として製品を作り続けてきたものの、このままでは日本の技術が消えてしまうことに危機感を覚え、中川政七商店とともに自社ブランドを立ち上げたメーカー各社です。
会場入口にはTHE株式会社がブースを出していました。同社は、何気ない日用品の中にも「THE」と呼ぶべき定番品を生み出し、新たな価値基準を持たせるべく協業社と商品を共同開発し、それらの商品を直営店および800社からなる取引先で販売。これまで、キッチンスポンジや弁当箱、石鹸、グラス、タオル、ごはん茶碗など多くの生活雑貨を生み出してきました。
「ただ、モノによっては極限までスペック高めることが求められる商品があり、それはTHEブランドでは包含できなくなってきた。そこで、スピンアウトブランドを作ったのです」と同社の阿部洋ゼネラルマネージャーは語ります。それが「THE MONSTER SPEC」で、現在、自転車とダウンジャケットの2製品をラインナップしています。
自転車は大阪の東洋フレームとの共同開発で、フレームにはチタニウム、フロントフォークにはカーボンを採用したほか、シマノの内装変速システムと電動シフターを組み合わせることで停止中も変速操作が可能など、高級素材と超精密技術を詰め込んだ仕様です。価格は内装8段変速機搭載モデルが70万円(税別)、変速機なしが40万円(税別)。
一方、ダウンジャケットは日本のダウンウェア専門メーカーであるザンターとの協業により、南極観測隊用のダウンウェアをベースにタウンユースのジャケットを開発したもの。通常のダウンが生後45日前後の中ヒナの羽毛が使用されているが、THEでは生後90日以上の水鳥から羽毛を採取、羽毛一つ一つが大きく羽枝が密集しているのでより保温性が高いことが特徴です。価格は13万円(税別)。
「THEはカテゴリを限定しておらず、様々な分野でユーザーの生活を豊かにし続けることができる定番品を開発しています。自分自身、商品開発にも関わってみたかった。今後、私が開発に関わった商品も出てきます。家電もあるのかって? THEは1カテゴリ1定番なので、あり得るかもしれない」と家電メーカー出身の阿部GMは不敵な笑みを見せます。
男心をくすぐる日本技術の応用品の数々
以降は、会場で気になった商品をいくつか紹介していきます。
兵庫県豊岡市の業務用鞄メーカーバッグであるバッグワークスはこれまで、特殊用途向けのバッグを製造し、主にBtoB市場で展開してきました。この技術をBtoCビジネスに生かせないかと考え、コンシューマー向け製品を開発しています。電線工事技師用の電線運搬バッグをタウンユース用にリデザインした「WIREMAN」、自動車販売員が陸運局でナンバープレートを運ぶために使うバッグをリデザインした「CARDEALER」ほか、医師往診用バッグをモチーフにした「DOCTORMAN」、バス車掌用バッグをモチーフにした「TRAINMAN」など、ユニークかつ男心をくすぐるバッグを多数展示していました。「POSTMAN」や「BOYSCOUTSMAN」などは女性が持ってもカワイイのではないでしょうか。
石川県かほく市の繊維メーカーであるカジグループは、世界的に超有名なアウトドアブランドや日本のファストファッションの下請けとして衣服の生地を製造してきましたが、2014年にオリジナルブランド「TO&FRO」を立ち上げ、トラベルギアやレインウエアなどを一般販売しています。ベビーロンパース用のニット生地を使った柔らかい肌心地のネックピロー、アウトドアブランドで採用されている超軽量・超薄型生地を使った小分け袋、超軽量で頑丈かつ撥水性に優れた折りたたみ傘などを展示。個人的に魅力的に感じたのが、アウトドアブランドで採用されている生地を使ったレインコートです。1万7500円と高価ですが、登山用の防水スペックながら超軽量・薄型なので持ち運びやすく、サムホールやテールを閉じてロンパース風になるなど、自転車ユースにも最適。タウンユースからアウトドアまで幅広い用途で使えそうです。
主催者である中川政七商店は、パインアメや牛乳石鹸(ともに大阪のメーカー)といった誰もが知っているブランドとコラボした商品のほか、吸水性に優れる奈良産の蚊帳生地を使った布巾、同じく奈良の靴下縫製工場とコラボしたアームカバーやストールなど、日本各地の特産品技術を応用した雑貨を展示。なかでも男心をくすぐられたのが、新潟県三条市の包丁工房タダフサによるステーキナイフです。タダフサといえば、驚異の切れ味で売り切れ続出となったパン切り包丁で有名なメーカー。それに続く第2のヒットを狙って出したのがこのステーキナイフです。実際に切れ味を試してみましたが、スーッと線を引くように切れる感触はとても心地良いもの。お皿の上でギコギコする必要がなく、家庭でもスマートにステーキを食べられるようになるでしょう。
この合同展示会に出品した商品は、中川政七商店のオンラインショップや全国50店の直営店で購入できるようになります。気になる商品があればちょっと覗いてみてはいかがでしょう。