平常時はみっしりと重厚感のある砂場が、突然ボコボコと泡立ち始め、ゆるゆると柔らかくなっていく。まるで「砂の海」ともいうべきそれは、「流動床インターフェース」という技術を活用したもので、砂の下から空気を送ると、砂が液体のような状態になるそうだ。言葉ではイメージしにくいかもしれないが、次の動画をご覧いただくとこの衝撃が伝わるだろう。
工業分野の技術をエンタメに応用
平常時の砂は、手ですくって触るとサラサラしているが、全体としてはみっしりと重厚感がある。下から空気が送られた瞬間、その砂の重厚感はあっさり失われ、フワフワと柔らかくなった。水よりももっと軽くて、つかみ所のない不思議な感覚だ。空気の供給が終わった途端に、砂に重力が戻り、みっしりと大人しくなった。
砂に空気を送り込むと、液体のような挙動をはじめる。この技術はすでにさまざまな工業分野で活用されてきたという。例えば焼却炉だ。流動状態になったところへゴミを投入、加熱して焼却させる。燃焼効率がよく、より短時間で焼却できることからエネルギーの使用量を抑えることができるのだとか。
これをエンタメに転用したのが、砂の海「流動床インターフェース」。この技術の開発は、ものつくり大学製造学科非常勤講師・的場やすし氏と、ものつくり大学教授の菅谷諭氏によるものだ。
流動床インターフェースの活用事例――パピコ「なめらカヌ~」
8月19日~20日にかけて開催された「SUMMER SONIC 2017」東京公演(会場 : ZOZOマリンフィールド、幕張メッセ)会場に、流動床インターフェースを活用してパピコのなめらかさを体験できるブースがあった。砂場の上にカヌーが乗っている。その名も「なめらカヌ~」。おっさんギャグか。
「なめらカヌ~」は、砂地に置かれたカヌーに乗ったあと、スタートの合図とともに砂地が“流動化”する。グラグラと揺れる不安定なカヌーの上から、バスケットゴールにボールを入れていくゲームだ。実際に筆者が体験している様子は次の動画をご覧いただきたい。
なめらカヌ~体験中に砂をかき混ぜる道具をうっかり砂の中に落としてしまったのだが、流動中だったため、そのまま砂の中に紛れてしまった。平常時に戻ってから砂を掘り返したが、どこにあるかもわからないし、砂を掘るのは重いし、けっこうな苦労だった。いかに流動時の砂が軽快な動きをするのかがわかる。
このように、流動床インターフェースにはアイデア次第で、いろんな活用法がありそうだ。
水に浮くような空気を含んだ物体も、砂には埋めることができる。ゴムボールのようなものをいくつも砂に埋めておき、流動化した瞬間にポコポコと埋めたアイテムが浮かび上がらせる宝探しとか、流動化しているときだけ歩ける「だるまさんが転んだ」とか。
固体と液体を自由自在に行き来するこのシステム、いっそアイデアコンテストを開いたらどうだろう。面白い案がいくつも出てきそうだ。今回のパピコブースがイベントとしての初披露だったとのことだが、数年後にはこの流動床インターフェース、エンタメ界の定番技術になっているかもしれない。