ライフスタイル
2018/6/11 16:30

落水洋介さん、テクノロジーは人を「幸せ」にしてくれますか?

――ブログやSNS以外にも、電子書籍を2冊出していたり、ポッドキャストを配信していたり、さらにはクラウドファンディングにも挑戦されていますよね?

 

「電子書籍もまさにまわりが助けてくれた産物です(笑)。とある縁で知り合った人が『全部プロデュースしてあげる』と言ってくれて、完全ボランティア。ポッドキャストも、電子書籍をプロデュースしてくれた方がお膳立てしてくれて、実は僕はほとんど何もやってないんです。でも、電子書籍はAmazonで1位を取れたり、ポッドキャストは世界で2位になれたりと、こんなポンコツな僕でも仲間がいればこんなことができるんだってことを多くの人に伝えることができたのではないかなと思います」

↑落水さんの処女作「難病がくれた宝物」。発症からの生活について書かれた一冊だ。続編となる「難病という翼を得て」とともに電子書籍として配信中(リンクは記事下部にあります)。電子書籍売上収益の一部は熊本震災復興支援の寄付金にあてている

 

 

――クラウドファンディングはいかがですか?

 

「クラウドファンディングのきっかけは熊本の復興支援のボランティア。Facebookで出会った理美容師団体「ヘアイズエナジー」の方々と一緒に行ったのですが、被災地は水が止まっているので水が使えない。仕方なく、水を使わないドライシャンプーで洗髪したんですが、気持ちいいわけないでしょうと思っていたら、熊本のみなさんは『気持ちよかばい、気持ちよかばい』って喜んでくれたんです。この体験が非常に大きくて、自分で何かできることはないかとたどり着いたのが自然に優しいシャンプーを製作して送り出すことでした。僕は化粧品会社に勤めてはいたけど、シャンプー作りは素人。ヘアイズエナジーの方々と、これもまた多くの人たちのサポートで、二度ほどクラウドファンディングで資金調達をし、現在は製品として販売しています。復興支援が大きな目的ですが、販売が安定してきたら、僕も給料をもらえそうなところまできています」

↑ヘアイズエナジーのサイト(http://www.hair-is-energy.com/)。九州産の原材料を使用し、自然にやさしいのが特徴。シャンプーは3980円、リンスは3980円、両者のセット販売は7560円

 

――ものすごい行動力ですね。その原動力はどこから生まれてくるのでしょう?

 

「第一に、僕には嫁と子どもがいるので、お金の面で将来不安にさせたくないというところがあります。そのために新しい事業やビジネスで少しでも足しにしていきたい。クラウドファンディング以外にも、WHILLのホイール部分を広告として販売してスポンサーを得たり、僕はPLSという病気なのでPLSを文字って「Peace Love Smile」というステッカーやグッズを作って販売したり、バッグの販売なんかも考えています。ビジネスにこだわるのは別の側面もあって、いまも障がい者の就労支援というのがあるんですが、頑張っても月に1万円程度しか稼げません。これではとても生きていけない。障がいを持った人が自立して生きられる仕組みを僕なりに発信できたらと考えています。

↑WHILLの側面部分にスポンサーを画策中の落水さん。「『WHILL』はスタイリッシュなので、かっこいいロゴが入るとうれしいですけど、そんなことを言える立場ではないので必死です」とのこと

 

第二に、こんな僕ですが、まわりでサポートしてくれる人はトップランナーばかりです。そういう人たちは、やりたいことがもう本当にたくさんあって、でも時間が足りないからできないという人が多いんです。僕は幸い無職でやることがないし、逆にそういう人たちの夢をサポートできる存在になれたらなと思っています。いまは地元で学生の交流を盛り上げる場所を作ろうとしていたり、おしゃれなスロープの開発を考えていたり、自立してお金を稼げて、街づくりまで関わっていければと思っていて、だからこんなにやりたいことのリストが多いのかもしれません」

 

――なるほど。「車いす」「SNS」「仲間」について語っていただきましたが、落水さんにとってテクノロジーとは改めてどんな存在でしょうか?

 

「僕の未来の不安はたくさんあります。喋れなくなったらどうコミュニケーションするのか? 介護はどうするのか? など尽きません。でも例えばいまでは、声のデータを残しておけばパソコンの打ち込んだときに自分の声で喋ってくれたりする技術があったり、手が動かなくなっても、視線の入力でメッセージを送れるテクノロジーが出てきたりしています。

 

寝たきりになっても命さえあれば、僕にできないことはありません。テクノロジーの力は僕の気持ちの根底の部分を支えてくれる。IPS細胞技術が進化すれば僕の病気だって、治るかもしれない。テクノロジーが進化すればするほど、僕の未来は明るくなるし、実際それを実感しながら日々を生きています」

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