4月を前に、引っ越しを考えている人も多いでしょう。賃貸物件を探すとき、みなさんはどのように条件を設定し探しているでしょうか。3月になると東京都内の物件が勢いよく動き出すので、物件探しのチャンス。でも、ライバルも多いので、なかなか気に入った物件が見つからないこともあるかもしれません。今回は、都内で賃貸マンションを探す有効な方法を、不動産コンサルタントの長谷川 高さんに聞きました。
後悔しない物件探しは条件設定から
賃貸情報会社のウェブサイトで物件を探すとき、あらためて自分に適した条件に向き合ってみると、どのような条件の物件を見つければよいのか、悩んでしまうこともあるでしょう。まずは好みの物件に出会えるよう、間口を広くして検索してみましょう。
「はじめから“この平米数以上でないと”とか、“賃料はこれ以上出せない”というような狭い条件を設定してしまうと、わずかでもその条件に合わない物件は、検索に引っかかりません。たとえば50平米以上が理想だなと思っても、40平米以上で検索をかけることで、49平米の物件が引っかかってきます。このため、少しゆとりを持って条件設定してみましょう」(不動産コンサルタント・長谷川高さん、以下同)
ウェブ検索と地元不動産業者へのアプローチを使い分ける
インターネット上で物件探しをはじめると、「もしかして不動産業者に出向けば、もっといい情報があるのでは?」と思うことがありますよね。効率よく物件を探すには、“足で探す”のがいいのでしょうか?
「インターネットでの検索は、多くの物件が検索できるようになっていますし、好みの条件設定をしておくと新着情報がメールで届くなどのサービスもあるので、大変便利です。しかし、すべての物件が反映されているわけではなく、店頭に来た方にだけ紹介しているお宝物件があるかもしれません。インターネットだけで探しているのであれば、その街の雰囲気や駅前の様子、物件の立地状況などを見ることも大切なので、やはり不動産業者に出向いて探すこともおすすめしたいですね。隣近所にどのような人が住んでいるか、またオーナーはどんな方なのかなど、不動産業者と話す中でリアルな情報を知ることもできるでしょう」
子育て世代が気をつけたい物件探しポイント3
まず、子どもを育てている家庭が、実際に物件を探すときに気にしたい点をまとめました。
1. 周囲の環境と自治体の支援を確認する
公園が近くて緑が多いことや、マンション前の交通量が少ないことなど、見て分かる環境の確認も大切なことです。しかし東京都内でも、区や市によって子育てに関する支援の度合いはさまざま。
「東京の中でも、子育て人気エリアは保育園に入るのが激戦であるなどの事態もありますから、お住まいになる地域が子育て環境としてどうか、しっかり確認しておくことが大切でしょう。また、環境の問題としては、お子さんが大きくなるまで住み続ける予定であれば、お子さんがひとりで帰ってくる場合も想定し、駅からの道が暗くないか、エレベーターにひとりで乗っても怖くないか、近隣の学校までの通学路に不安がないか、なども確認しておきます」
2. 同じような環境の人がいるマンションを探す
マンションには、ファミリータイプの部屋だけのマンションや、ワンルームから3LDKといったさまざまな間取りのあるタイプ、単身者向けの広さの部屋だけのマンションなどがあります。
「お子さんがいるご家庭の場合は特に、同じような家族構成の方が住むマンションがおすすめです。単身者も居住しているマンションでは、子どもの足音や夜泣きの声などが気になったり、反対に単身者の方が夜聴く音楽がうるさかったり、生活パターンが違うことでトラブルが起こりやすいと言えます。同じような生活をしている方が多ければ、お互いさまという気持ちが生まれ、近隣の方々と助け合える場合もあるでしょう」
3. 騒音が気にならない造りの部屋を探す
マンション内でのトラブルで最も多い原因は騒音だと言います。
「絨毯敷きと違ってフローリングは下に音が響きやすく、子育て世代は神経質になるところでしょう。コルクマットを敷くなどの対策はできますが、できれば子どもはのびのびと自由に育てたいところですよね。そこで、騒音が気にならない造りの物件を探すことをおすすめします。壁や床が厚く、床材が二重になっているなど、分譲仕様で造られたマンションや新しい賃貸物件は遮音に優れています。分譲でも築年数が数十年経過しているものは防音効果が甘いところが多いので、内見の際に確認しましょう」
単身者が気をつけたい物件探しポイント3
続いて、単身者の場合は、どのようなことに気をつけて物件を探せばいいのでしょうか。
1. プライバシーが守れる環境か見ておく
内見した際に、プライバシーがどの程度守られているのかはしっかりと確認しておきましよう。「都内の物件は、ほとんどが隣の建物と距離がなく、窓を開けたら隣のマンションの室内が見える、ということも想定されます。窓を開けたときに何が見えるのか、カーテンを開けられる環境なのか、洗濯物を出しても大丈夫か、生活がはじまったときにプライバシーが侵害されないか考えてみましょう。また、玄関のドアを開けるときに誰かに見られる心配がないか、さまざまな角度から確かめてみてください。部屋が気に入って入居しても、生活しはじめてみたら周囲の視線に気づいてプライバシーが守られないことに気づく方が多いのです」
2. 同じマンションにどのような人が住んでいるか知る
ファミリーの場合は、同じような家族構成の方が住むマンションがよいのですが、実は単身者から見ると、同じ境遇の人が多いマンションがいいというわけではありません。「特に女性がひとりで住む場合は、単身者ばかりのマンションよりも、実はファミリー層がたくさん住んでいるマンションの方が安心かもしれません。子どもの泣き声や足音など気になることもあるかもしれませんが、ファミリーの方が共有部分の使用マナーがよかったり、夜は早く寝てしまうので静かに過ごせたりと、メリットも多いのです」
3. セキュリティーが万全か調べておく
単身者の場合、最も気にしたいのがセキュリティーの問題です。「防犯カメラが稼働しているのか、エレベーターや駐車場などにもついているか、確認してから入居を考えるようにしましょう。玄関はオートロックでも裏から入れてしまったり、宅配業者などがオートロックを勝手に解除できたり、オートロックの本来の機能がなされていないときは要注意です」
エリア別 賃貸物件の価格はこんなに違う!
賃貸物件は、同じような広さや築年数のマンションであっても、地域によって価格が違うものです。東京都内の人気エリアでは、相場にどの程度の違いがあるのでしょうか?
1. 一番高いのは高級感のある東急線沿線
田園調布や自由が丘などの高級住宅街が立ち並ぶエリアです。「東急東横線、東急田園都市線など、横浜に続く東急線は人気のエリアです。20〜30年前までは、麻布、青山、赤坂が最も高く3Aなどと呼ばれていたのですが、最近ではこのエリアに合わせて代官山、恵比寿、広尾の人気が高く、自由が丘なども価格の下がらない街です」
2. 住みやすいベッドタウンの京王・小田急・JR中央線沿線
駅前開発が進み、大型ショッピングモールが充実しています。「新宿や渋谷までのアクセスがよく、子育てがしやすい環境が整っていたり、駅前の商店街やスーパーマーケットがあって買い物がしやすかったり、ファミリーには特に人気がある沿線です」
3. 城東エリアなどはコストパフォーマンスよし
都心へのアクセスがよいわりに安価の物件が多いエリアと言われています。「清澄白河や向島、綾瀬、曳舟などの場所は、以前はあまり開発されていませんでしたし、場所によっては、もともと花街であるなど、極めて庶民的で下町の雰囲気が漂う街なのですが、都心へのアクセスもよく、安くいい家に住めると人気があり、最近では堅実な若者が移り住んでいます」
個性的な物件探しはとにかく早めに動くべし!
都内では、レトロな物件やデザイナーズ物件などを探している方は多く、また、こだわりの物件は入居中の物件にも積極的に問い合わせている方も多いので、入居者が決まりやすく、なかなか賃貸情報にデータが上がってきません。どのように探したらよいのでしょうか。
「引っ越しが先でも、個性的な物件だけを取り扱うwebサイトに登録して、情報集めをしておくとよいと思います。引っ越し時期を決めずに“気に入った物件が出たら引っ越す”くらいの気持ちで探しはじめるのがおすすめです。また、現在は入居している物件も、出たら入りたいとリクエストしておくことができる場合もありますから、気に入った物件が見つかったら、入居中でも退去の可能性があるかなどをこまめに問い合わせてみましょう」
ペット可物件は割高になる場合も
ペットを飼える物件は、オーナーがペット好きであるという理由だけではなく、実はペット可にすることで、他のデメリットを感じさせないこともあるのだとか。
「たとえばマンションが老朽化している場合もあり、駅から遠かったりする物件では、ペット可にすることで入居者をより多く募れるようにしています。ですからペット可物件は、同じような物件でペット不可のものと比較すると、割高な場合もあります」
有利にじっくり選べる引っ越しシーズンは4月から
賃貸物件が最も動くのは3月。4月からの入学や転勤などに合わせて引っ越す方が多いので、気に入った物件があったら、すぐにおさえないと決まってしまう可能性があります。
「4月になるとパタリと物件の動きが鈍くなるので、オーナーさんは3月末までに入居させたいという思いが強いのです。ですから引っ越し時期にこだわらないなら、4月に入った方がじっくり探すことができますし、家賃交渉を受けてもらえる可能性も、3月よりは高くなります。家賃交渉をしたからといって印象が悪くなることはありませんから、ダメ元の気持ちで伝えてみるといいでしょう。家賃だけでなく、敷金や礼金の交渉なども同様です」
同じ駅利用でも安い賃料で借りるコツは?
都内では、“駅チカ”であるほど高い価格がついていますが、実は地名や駅の開発具合によって、価格に差が出る場合もあるといいます。
「駅から徒歩15分よりも徒歩8分の方が家賃は高い、というのが圧倒的に多いのですが、そこに当てはまらないものもあります。たとえば同じ駅を使うのでも、東口は閑散としていて暗いが、西口には商店街やスーパーなどがあって活気がある場合、東口方向は多少安い値がついていることもあるのです。駅からの距離だけではない視点を持つことが、お得に借りる秘訣でしょう」
都内の物件はとにかく数が多いので、たくさん見ることが大切です。まずは住みたい地域を限定するより、アクセスのよい沿線内でいくつかの駅を起点に探すなど、幅を広げて情報を得るのがいいでしょう。そこから内見したい物件を絞っていくと、好みが徐々にはっきりしてきます。時期が決まった引っ越しでない場合は、更新が近づく前に探しはじめるなど、余裕を持って動いてみましょう。
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