<9月1日は、防災の日!>
時代は進化している。それはテクノロジーだけでなく、防災に関しても同様だ。かつて家庭や学校で習った防災に関する情報は、すでに時代遅れかもしれない。年々、地震の恐れが高まり、水害が激甚化している日本――。さらに新型コロナウイルス対策も必須のいま、最新の防災メソッドに迫る!
※こちらの記事は「GetNavi」 2020年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
私が解説します!
事前の備えがあれば、災害の脅威は激減する
近く、日本を必ず大地震が襲う。政府の地震調査委員会の予測では、30年以内に80%以上の確率で南海トラフ地震が発生。想定死者数は最大約32万人以上にのぼる。同じく70%以上の確率で首都直下地震や、東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震のように予測不可能な地震も起こりうる。
今後、日本では地震で相当数の死者が出るかもしれない。しかし、地震学者の大木聖子さんは、絶望的な未来を変えられると語る。
「”死者32万人”は最悪の想定の目安。大事なのは、被害が発生しないための対策です。一人ひとりが防災に力を入れれば、死者は限りなくゼロに近づくはずです」
しかし、防災に対する意識は低く、半数以上が未対策だ(下図)。対策をしていても、非常用持ち出し品や食料の備蓄が中心で、家具の転倒防止や住宅の耐震補強などの根本的な対策をしている人は少ない。いま、私たちは、災害に対してどんな心構えをすべきなのか。最新かつ細心のメソッドを大木さんに教えてもらった。
防災の古い「常識」を捨て去れ!
災害に強い家に住む
地震における死者の約9割は圧死・窒息死!
一般的な地震の死因で最も多いのは圧死・窒息死。それを免れることが、地震への対策でもっとも重要だ。建物や家具の転倒が発生しない家づくりのためのメソッドとは!?
建物を耐震化すれば地震の死者は激減する
大地震が起これば、必ず多数の死者が発生する……。私たちは過去の経験から、そう諦めてきた。しかし大木さんは、そんな「常識」はもう古いという。
「阪神・淡路大震災で命を落とした方の死因の約88%が、建物の倒壊や家具の転倒による圧死・窒息死でした(下図)。次に多かったのが焼死。全体の10%を占めます。つまり、建物や家具を耐震化して、火災の初期消火をしっかりすることで、死者は激減します」
具体的に、どのような対策が必要になるのだろうか。
「1981年5月31日以前に着工の木造住宅なら、無料または少額で簡易診断を受けられます。もし、問題が見つかったら、補修を行うか、引っ越しを検討してください。家具の転倒防止も必須です。初期消火用に消化器も用意しましょう」(大木さん)
まずは、自宅を耐震化する。見逃しがちな・当たり前・が、令和時代の防災メソッドだ。
■阪神・淡路大震災の死亡者の原因
震度5より大きな揺れで倒壊の恐れあり!
「1981年5月以前」に着工の家なら対策は必須
自宅の倒壊が心配な場合には、着工年を調べてみよう。1981年5月31日以前に建築確認を受けた物件なら耐震性能が今の基準に及ばない恐れあり。耐震診断を検討すると良いだろう。
旧耐震基準の家は被災の可能性が大!
1981年(昭和56年)6月1日、建築基準法の耐震基準が改正され、これ以前に建築確認を受けた建物は「旧耐震基準」として分類されるようになった。新耐震基準では、震度5強程度の地震では軽微な損傷、震度6強~7の地震でも「倒壊は免れる」設計が必要だ。逆に言うと、旧耐震基準では、震度5強の地震で倒壊の恐れがある。
実際、最大震度7の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の建築物のうち約3割が大破・倒壊。反対に被害が軽微・無被害だったのはほんの3割ほど。旧耐震基準の家はそれほどまでに強い揺れに弱い。
そんな旧耐震基準の家を、国や地方自治体は問題視。耐震検査を無料または少額で実施し、補修費用の補助も行っているのだ。
耐震診断・補修の補助を受けるにはどうすればいいの?
まずは役所の窓口に相談しよう
旧耐震基準の建物の居住者が、無料耐震診断を受けるには、自治体の窓口に相談すれば良い。簡易診断の結果、耐震性に問題があると診断されると、精密診断や補修工事の補助費用を支給する自治体が多い。「自治体は耐震検査のための予算を国に申請済みなので、診断を受けると喜ばれます(笑)。気軽に依頼しましょう!」(大木さん)
耐震診断の流れ (東京都品川区の場合)
無料耐震診断の内容は、間取り図ベースでの診断から建築士の現地派遣まで自治体によって異なる。補助費用の額も自治体しだいだ。
※1:依頼者の自費(助成金あり)
揺れに強く、被害を拡大させない家をつくる
安全対策グッズで被害を最小限に!
建物の耐震化に加え、家具を固定して、転倒による被害の防止も必須だ。火災発生時に初期消火を行う消化器や、スムーズに避難するための履き物も用意しておきたい。
[その1]天井と家具との間に固定して家具の転倒を予防する
アイリスオーヤマ
家具転倒防止伸縮棒
実売価格1000円~
天井と家具の間に設置し、地震の揺れによる家具の転倒を防止する。接地面はポリエチレン素材を使用しているため、家具が傷つきにくい。サイズはSSS~Lまで6種類を用意。
[その2]家具の足下に設置するから、部屋の見た目を損なわない
アイリスオーヤマ
家具転倒防止プレート
実売価格450円~
タンスや食器棚などの家具の前部に敷いて、壁側に傾斜を付けることで転倒しにくくするプレート。ハサミでカットして家具の幅と合わせられるうえ、色は半透明で目立ちにくい。
[その3]割れたガラスの上も安心して歩けるスリッパ
コジット
足まもりっぱ
1980円
1100ニュートンの耐踏み抜き試験をクリアしたシートを底面に採用し、釘も通さない。地震でガラスや食器が割れて散乱しても、通常どおり行動し、避難をすることができる。
[その4]身体に安全な消火剤を使用、使った後も処理が簡単!
モリタ宮田工業
キッチンアイ
実売価格7800円
酢の成分と食品原料が由来の消化剤を充填。成分は中性で、使用後の清掃も簡単だ。側面にはかわいらしいイラストが描かれ、キッチンなどに置いても違和感がないのも良い。
水害発生に備えて、ハザードマップで被害想定と避難所を確認!
突然発生する地震とは異なり、水害は事前に備えやすい。自治体などが公表している「ハザードマップ」(被害想定区域などを記した地図)の予想範囲を超えて被害が及ぶことは稀だからだ。自宅をはじめ、会社などよく行く場所の想定被害を把握し、万が一のときの避難所の場所を確認しておくようにしよう。
国土交通省
ハザードマップポータルサイト
洪水や土砂災害、津波、道路防災情報を地図に重ねて表示可能。指定緊急避難所や浸水の想定継続時間(※2)、標高など、防災や避難に役立つ情報を多数提供している。自治体が配布するハザードマップへのアクセスも可能。
※2:情報を提供している自治体のみ
被災範囲を確認して行動計画を立てる
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