ライフスタイル
2020/12/9 19:45

トヨタとLIXILが共同開発した「モバイルトイレ」。全ての人の「行動力」を変えるその凄すぎる内部。

かねてから車いす用のキッチンを販売するなど、バリアフリーに力を入れているLIXILと、車いすごと乗れるジャパンタクシーを販売しているトヨタは移動型バリアフリートイレの「モバイルトイレ」を共同開発した。

 

2019年に『首都圏バリアフリーなグルメガイド』という出版物を制作した際、ヒアリングした車いすユーザーは「飲食店は、自分が使えるトイレがあるかどうかで決める」と言っていた。どのトイレでも使える健常者だと普段意識はしないが、数の少ない多目的トイレしか使えない方たちは、自宅を出る前にトイレの場所を確認するそうだ。しかしそのトイレも着替えや雑談、一時話題になったような不貞行為に使われてなかなか空かなかったり、あまりに汚くて使えなかったりする。

 

トイレがあることは外出する際の必須条件だろう。最近は野外イベントなどの仮設トイレにもバリアフリー型のトイレが設置されるようになってきた。広く、手すりやオストメイト(人工肛門・人工膀胱)対応の洗浄器がついているトイレは、車いすだけではなく、歩けるけれども足腰の弱い方、内部障害がある方、子ども連れ、男女に別れたトイレに入りづらいトランスジェンダーの方など、ニーズはたくさんある。

 

モバイルトイレは、様々な人の外出の可能性を広げるプロダクトだ。本記事ではその内部を紹介していこう。

↑移動型バリアフリートイレ「モバイルトイレ」外観

 

けん引して目的の場所まで移動し、設置する

見た目も華やかだが、すごいのは設備だ。オストメイト対応流しはもちろん、大人が寝ることのできるユニバーサルベッドまで設置してある。ベビーベッドはあってもユニバーサルベッドを設置しているトイレは大型のビルでもほとんどない。

↑前室の広さはL1650×W1980mm、ユニバーサルシート(大型ベッド) を開いた時のサイズW1500×D696×H480mm

 

例えば六本木ヒルズでも、車いすで入れるトイレは12箇所、オストメイト対応は3箇所、ユニバーサルベッドは1箇所だ。備えている設備を見ると、開発にあたり、丁寧に当事者にヒアリングしたことが伺える。

↑トイレの広さはL2000×W1980mm。搭載衛生機器は大便器1、手洗い2、オススメイト対応流し1

 

個室の扉は左右どちらからでも開けることができ、約2m×2mと個室内で車いすの方向転換ができる広さ。便器の左右に手すり、片方は上に上げることができる。便器、洗面台などは車いすを進入させることができるよう下部に空間を作ってある。体温調整が難しい人のために冷暖房完備だ。非常用ボタンも低い位置に設置してある。

↑いろいろな装備が低い位置に設置されている

 

バリアフリー、多目的トイレと謳われているトイレでも、設置されている機器や広さはまちまちだ。『首都圏バリアフリーなグルメガイド』のヒアリングで「自分が入れるトイレかどうかは実際に見ないとわからない」という意見があった。ひとくちに「障害」と言っても身体の機能は人それぞれ。マヒなどがあり両側に手すりがあると便器に座れない人、オストメイトの人は対応洗浄器が必要だし、ユニバーサルベッドが必要な人もいる。無条件ですべてのトイレに入れるわけではないのだ。

 

しかしこのモバイルトイレの認知度が高まれば、「このトイレなら大丈夫」という安心感が生まれるはずだ。誰もが、好きなときに、好きな場所に行ける社会になって欲しいと思う。

 

現在は貸し出し、販売などの方法は未定。

 

■車両

全長×全幅×最高地上高:約L5300×W2500×H2900mm/トイレの広さ:L2000×W1980mm/前室の広さ:L1650×W1980mm/総重量:2.3t/乗り口地上高:250mm/スロープ長さ(角度): 4700mm(3°)/電力:バッテリー、ソーラーパネル(非常用)

■トイレ機能

給排水容量:各200L/連続使用回数:約30回/使用中表示:室内の人感センサーと連動し、 使用中(赤)、空室(青)と表示

 

 

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