ライフスタイル
2021/4/3 18:30

「YouTube NextUp 2020」企画担当マーク・レフコウィッツ氏が語る、YouTubeで表現して欲しいこと

次世代のYouTubeクリエイターを発掘、支援を目的にしたプログラム「YouTube NextUp 2020」のファイナリストが、昨年末決定した。GetNavi webでは彼らにインタビューを実施。新しい世代のYouTubeクリエイターは、YouTubeを、そして動画コンテンツをどう変えていくのか? 連載形式でお伝えしていく。今回は「YouTube NextUp 2020」の企画を担当したマーク・レフコウィッツ氏に、今後、YouTubeクリエイターに期待することを語ってもらった。

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:金田一ワザ彦)

 

↑マーク・レフコウィッツ氏。Googleに勤めて10年、東京に住み始めておよそ8年。YouTubeの技術面やパートナーシップの担当で、日本を含むアジアパシフィック地域でパートナーの開発やマネージメントをしているチームのディレクター。

 

収益化している10組のうち7組が日本のクリエイター

YouTubeにログインするユーザーは世界規模で月間20億人、1分間に付き500時間分の動画が投稿されています。今や想像もできないような量のコンテンツがアップロードされているのです。

 

2020年9月の時点で、日本での月間視聴者数は6500万人。登録者数が100万人を超えるチャンネルは240以上あります。また、視聴時間は2019年6月と比べて2020年6月は80%増加しています。このように、日本は投稿してくれるクリエイター、視聴しているユーザーともに、非常に大きく成長しています。

 

また、広告以外でのメンバーシップやスーパーチャットを利用して収益化しているクリエイターが世界に10組いたら、そのうち7組は日本のクリエイターです。収益化を達成しているクリエイターは日本に多いのです。

 

「YouTube NextUp」は、次世代のYouTubeのクリエイター、スターの発掘・育成を目的にしたプログラムです。これまでに6回行い、のべ70人以上のクリエイターの方々が参加しています。私のチームで行っているプログラムの中でもたいへん思い入れがあるものです。

 

応募要件は3つ。1万人以上10万人以下の登録者がいるチャンネルであること、YouTubeのガイドラインに違反していないこと、過去90日間に動画を3本以上投稿していることです。

 

「YouTube NextUp 2020」では、多様性のあるクリエイターたちによるバランスの良いプログラムにしたい思い、性別、ジャンルなどの背景や、チャンネルの特徴などを鑑みて11組のクリエイターグループを選びました(※編集部註:当初は12組の選出だったが、1組辞退したので11組となった)。

 

このプログラムを通してどのように動画の制作をするのか、彼らのチャンネル戦略をどうするのか、収益をどのように最大化するのかを、2020年12月から2021年1月に9日間、バーチャルでクリエイターキャンプを行いました。

 

「YouTube NextUp」からステップアップしたYouTuberたち

「YouTube NextUp」への参加後に人気YouTuberになった例を紹介しましょう。まずは、「YouTube NextUp 2017」に参加した「あさぎーにょ」さん。今ではチャンネル登録者数78万人で、クリエイティビティの高い作品を投稿しています。非常に人気が高く、私たちが年間で行っているファンとYouTuberのイベント、「YouTube FanFest」にも参加いただいています。また166万人ものチャンネル登録者がいる「瀬戸弘司」さんも、「YouTube NextUp 2012」に参加した方で、その経験を生かしてコンテンツやファンを拡大しています。

 

■あさぎーにょ

 

■瀬戸弘司

 

「YouTube NextUp」を始めてから、ここ10年の日本でどういった変化があったかというと、まず、参加希望者がとても増えました。人数の詳細はお伝えできませんが、応募者数の増加は、YouTubeを視聴するだけではなくて、クリエイターになりたいという昨今の大きな変化を示していると思います。

 

技術革新の影響も大きく、スマホが高性能の撮影機器として使えることから、誰でも手軽に高いクオリティの動画を作れるようになってきました。また、ジャンルの多様化も進んでいます。例えばクッキングのジャンルでは、昔はシンプルに料理の手法を教えるものだけでしたが、今では動画ブログ「Vlog」のようなフォーマットのもの、ヴィーガン料理のレシピや、魚のさばき方、3分間で作れる料理など、様々なタイプの動画が存在しています。クリエイターが自分の特性に合ったコンテンツを生み出すようになってきているのです。

 

自分の特徴を出しながら質の高いコンテンツを発表できる、誰しもがYouTubeクリエイターになれる時代になってきたと思います。

 

「YouTube NextUp 2020」に参加しているクリエイターの作品、そのクオリティの高さに私自身も非常に感銘を受けています。たとえば「Daisuke Miyazaki」さんは、野菜の育て方を紹介する方で、イチゴやパイナップルを栽培する方法など、スペシャルな動画を次々とアップしています。

 

■Daisuke Miyazaki

 

参加者のみなさんが、スキルがあって経験豊富、また多様性もあり、それぞれが優秀なクリエイターであるということは驚きですし、このことを私たちも持ち帰ってYouTube全体に反映させたいと思っております。

 

多様性や教育は、YouTubeのビジネスとしても非常に大切にしていますし、日本でも注力しています。個人的にも好きなジャンルであるラーニング(学び)コンテンツは、日本だけではなく、世界的に役立つものになっており、われわれがEduTuberと呼んでいる教育関連のクリエイターも増えています。代表例としては東大クイズ王・伊沢拓司さんの「QuizKnock」や、131万人の登録者がいる「haichi」さんの授業動画「とある男が授業をしてみた」でしょうか。このようにクイズ形式から勉強まで、YouTubeを通していろいろな形で教育について発信されています。

 

■とある男が授業をしてみた

 

「YouTube NextUp 2020」に参加した「JINちゃんねる」では、ソーシャルワーカーになるための学習方法を発信していますし、クリエイターの方々が「学び」をフォーカスしてくださるのはうれしいことです。

 

■JINちゃんねる

 

一方で、コロナ禍を機に、教育機関や政府機関がYouTubeを教育のプラットフォームとして使うことが非常に多くなりました。地方の教育委員会もそうですし、文部科学省でも昨年のおすすめ教育用の再生リストなどを公開しています。そのような使い方が全世界で広まっていますし、日本でもさらに広まってほしいです。

 

コロナ禍で広がる視聴者層と視聴環境

コロナ前後で変わった点は、ふたつあります。ひとつは先ほども申し上げたようにコンテンツの多様化というものが非常に強く見えてきたこと。コロナ禍によってライブや演劇などが中止にならざるを得ず、その代わりにYouTubeライブストリームを使う動きがありました。例えば「M.S.S Project」さんは全国ツアーがコロナ禍で中止となり、その代わりにYouTubeライブストリームのスーパーチャットで収益をあげました。

 

もうひとつは、キャリアとしてのYouTuberに変化があったことです。以前は、ただやりたくてやっている方が多かったのですが、今ではYouTubeを専業としている、もしくは副業としてやるクリエイターが増えています。キャリアとしてYouTubeを利用するというのも、トレンドだと思います。

 

運営側もユーザー、クリエイター、そしてコミュニティ全体をつなげる様々な役割をここ10年で行ってきました。わかりやすい例でいうと、広告以外での収益化の部分、メンバーシップとスーパーチャットの機能です。これは視聴者、つまりチャンネルのファンがクリエイターに感謝の思いやサポートの意味を伝えるという形でよく使われていますし、コミュニティをより強く繋げるという目的でも使われていると思います。

 

コロナ禍では、自宅でのエクササイズ関連動画、学習動画などがよく見られていました。ホームエクササイズのジャンルは2020年3月中旬から5月末までの2か月半の平均視聴回数が、直前の期間に比べて5.5倍以上も伸びています。

 

クッキング関連の動画は、2020年1月から10月の視聴再生が50億回以上伸びました。ガーデニング動画も同じように伸びています。学校や職場が閉鎖しているなかで、YouTubeを通して何かを学んだり繋がったりしているということです。

 

さらに、いろいろな世代の方が視聴するようになり、クリエイターの年齢層も幅広くなっています。「YouTube NextUp 2020」参加者の中では、シンプルなお菓子などのレシピを紹介する「Marin’s Single Kitchen」さん、ソロキャンプのノウハウを紹介する「Harry I.」さんは、今までのYouTuberのイメージよりも上の年代です。

 

■Marin’s Single Kitchen

 

■Harry I.

 

また、見ているデバイスの変化もあります。コロナ禍で、リビングにあるテレビの大きな画面でYouTubeを見ることが多くなりました。2020年6月の数字では、1500万人がテレビなどを通してYouTubeを見ています。これは昨年同月比で2倍以上の数字です。視聴者層、クリエイター層、そして視聴デバイスの変化がコロナ禍で明確になりました。

 

みんながクリエイターになってほしい

YouTubeから得られる楽しみや学びは、自分で選んで見つけるものです。ただそれだけでなく、皆さんにはYouTubeに投稿するクリエイターになってほしいと強く思っています。自分が出したいもの、表現したいこと、やりたいことが、今やスマホだけで撮って投稿できます。あなたが思っているよりも簡単です。YouTubeのクリエイターになりたい、投稿してみたいという方には、いろいろなサポート体制が整っていることも知ってほしいです。

 

私たちはクリエイター向けの学習コース「クリエイターアカデミー」も行っています。YouTubeに動画を投稿するにはどう設定したらいいか、どうやったらもっと見られるようになるのかなど、一番最初にみなさんが抱えそうな問題の解決法を、動画などいろいろな形で提供しています。是非参考にして、見るだけではなくてクリエイターとして参加してほしいです。

 

YouTubeが大切にしていることは、「be authentic」「Don’t be afraid」、日本語にすると「自分らしく」「挑戦を恐れないで」。みなさまのそのままの姿、やってみたいことを、YouTubeを通じて表現していただけたらと思っております。

 

 

【プロフィール】

マーク・レフコウィッツ

Googleに勤めて10年、東京に住み始めておよそ8年。YouTubeの技術面やパートナーシップの担当で、日本を含むアジアパシフィック地域でパートナーの開発やマネージメントをしているチームのディレクター。チームのおもな仕事は、YouTubeに投稿するクリエイターやアーティスト、メディアなどの、チャンネルの成長、収益化、認知度アップなどのサポート。