依然として新型コロナウイルスの感染者数が減る気配はありません。外出するのもままならない状況はさらに続くと考えられますが、特に心配なのが飲食する際の感染防止策です。
そんな中、印刷会社大手の凸版印刷では、サントリー酒類と共同開発で「飲食」に特化させた画期的なフェイスシールドをリリースしました。その名もズバリの「飲食用フェイスシールド」です。現在サントリーマーケティング&コマースが運営する「飲食店用品.jp」にて1セット(10個入り)5830円(税込)で販売中です。
この飲食用フェイスシールドは、スーパーコンピュータ「富岳」を用いた理化学研究所の研究成果を参考にしたもので、凸版印刷・サントリー酒類・理化学研究所の三者が力を合わせて実現させたものです。しかも、生産・販売を行うだけでなく、その設計情報をオープンデータとして公開。つまり、その気になれば、第三者であってもロイヤリティフリーで生産・販売することが可能とのこと。
実に有意義な開発ですが、この飲食用フェイスシールドの開発経緯と中身について、凸版印刷マーケティング事業部の武井 誠さんに話を聞いてきました。
苦境に立たされた飲食業界を救うべく「飲食用フェイスシールド」を開発
ーー凸版印刷という名前を聞くと、印刷会社というイメージが先行しますが、飲食用フェイスシールドのような立体物の開発、生産も行っているのですね。
武井 誠さん(以下、武井) はい。もちろん、名前の通り印刷物を扱う会社ですが、クライアントのニーズに応じて今回のような立体物の開発・製造もおこなっています。私のいる事業部では各企業のマーケティング活動を幅広くサポートしており、販売促進のためのPOPや、キャンペーンなどの企画立案・実行、最近ではデジタルトランスフォーメーション推進のサポートまで、その事業領域は多岐にわたります。
私の担当させていただいているクライアントがサントリー酒類なのですが、同社にとっての大切なお客様である飲食店の多くが、コロナ禍で厳しい状況に立たされていました。
サントリー酒類は、飲食店・外食産業は日本の冠たる文化であると考えています。そこで飲食店の方々へ「何か一助になるようなものがつくれないか」という話をいただいたので、今回の飲食用フェイスシールドの開発が始まったという流れです。
ーーその開発にはスーパーコンピュータ富岳の研究成果を参考にしたそうですね。
武井 プロジェクトを進めるにあたり、お客様が使いやすい「利便性」と、当然フェイスシールドに求められる「安全性」の担保が必要と考えました。しかし我々だけでは「利便性」を追求することはできても、科学的な知見に基づく「安全性」の検証が難しく、解決方法を模索していました。その頃、昨年6月に理化学研究所様が文部科学省との連携プロジェクトでスーパーコンピュータ富岳を使った研究成果を発表しており、その研究成果は実に画期的で有意義なものでした。そこで改めて理化学研究所にアプローチし、同所のご賛同・ご協力を得て、その研究成果を参考に開発したのが、今回の飲食用フェイスシールドだったんです。
口を覆う部分の形状は何度もトライ・アンド・エラーを繰り返した
ーー具体的には、スーパーコンピュータ「富岳」を使ってどのようなことを検証されたのでしょうか。
武井 「口を覆う部分の形状によって、飛沫防止効果に差が出るのではないか」という検証です。鼻まで覆ったタイプ、顎までカバーするタイプなど、いくつかの一般的な形状案をスーパーコンピュータ富岳でシミュレーションしてみると、用意した形状案の中で、お椀型が最も飛沫防止効果が高いことがわかり、採用しました。
また苦労した点は、口元シールドの可動構造です。飲食のしやすさを追求するための試作を何度も重ね、最終的には左右に可動する形状がベストと考え、現在の構造にいたりました。
武井 また、初めて利用する際、だれでも直感的に装着の仕方がわかり、顔の大小に左右されにくい汎用的な構造である、メガネタイプ形状を採用しました。飲食時、他人からの飛沫を防御する理由で、より安全性を高めるためにアイシールドパーツもつけております。