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2021/4/22 17:30

多くの人にパンの魅力を!「YouTube NextUp 2020」ファイナリスト『Baker’s Channel』さんのこだわりとは?

次世代のYouTubeクリエイターを発掘、支援を目的にしたプログラム「YouTube NextUp 2020」のファイナリスト12 組が、昨年末決定した。GetNavi webではこの12組にインタビューを実施。新しい世代のYouTubeクリエイターは、YouTubeを、そして動画コンテンツをどう変えていくのか? 連載形式でお伝えしていく。今回は、ファイナリストのなかから、パンのレシピ開発や啓蒙活動を精力的に行っている「Baker’s Channel」を制作するパン職人兼パン研究家の内橋さんに、YouTubeを始めたきっかけや動画のこだわり、活動の目的などを語ってもらった。

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:金田一ワザ彦)

 

 

パン研究家 内橋 / Baker’s Channel

「捏ねないパン」や、「折り込まないデニッシュ」「ワンボウルパン」など家庭で気軽に簡単にできるレシピや、美味しいパン屋の情報、旬の食材を使ったパン作りを行う週末の生放送など、週に2~3本のペースで動画をアップしている。

 

「YouTube NextUp」で得たこと

「YouTube NextUp」のクリエイターキャンプについては、これまで実際に集まって対面で行っている様子を、動画や資料を通して知っていました。今回の2020は残念ながら対面ではなくバーチャルだったので距離感はあったのですが、逆にしっかりと向き合って教えていただけたと感じました。編集ソフトの使用方法について画面共有をしながら教わったのですが、大変有意義でした。

 

参加のきっかけは、YouTubeで活動しているなかで、映像を作って出すことはできるんですが、なかなか多くの人に見てもらったり、うまく伝えることが難しいので、いろいろな手法を学びたいと思ったからです。

 

たくさんの応募者の中から選ばれた理由は、まず単純に自分の専門知識を持っていること。そして、ジャンルに特化したニッチな情報を狭い範囲にダイレクトに伝えているところでしょうか。幅広い視聴者に見せるという形が多いなかで、ユーザーを絞る、という点は注力してきました。

 

今回学べた部分は、伝え方や見せ方です。編集、照明などについてプロの方から教えていただきました。パン職人として働く前は映像の制作会社で20~24歳ぐらいまで勤めていて、パン職人になって10年です。今振り返ると、映像の仕事とパンの仕事が融合して、YouTubeで発信している形になっています。映像の仕事をやっていたことで、YouTubeに入りやすかったのは確かです。ただ、映像の現場といっても編集をやっていたわけではないので、今回は大いに勉強になりました。学んだことを随時取り入れて動画を作っています。

 

自分の知識を共有し、パンの魅力を発信したい

Baker’s Channelは2015年にスタートしました。私は基本的にパン職人なのですが、職人の世界はなかなか閉鎖的で、パンの魅力を直接お客様に伝えられないところがあります。ふだんパンと接する上で魅力を感じる部分を、多くの方に知って欲しいと、チャンネル開設前から、パン教室や企業といっしょにイベントをやったり、パンが好きな人のコミュニティでお話をしたり、パン研究家として啓蒙活動をしていました。

 

それ以外にも、自宅でパンを作る方もたくさんおられますので、そういった方々に向けて、自分の知識を共有したい、動画でレシピの紹介やパンの雑学や魅力を発信したいと思ったのが、はじめたきっかけです。

 

このチャンネルのほかとは違う特徴は、専門職として一般の人には知りえない情報や技術を持っているところだと思います。パン職人としての考え方や在り方、これまでおよそ10年間現場で培ってきた知識は、なかなか他の方が発信できることではないので、そこが強みかなとは思っています。

 

私のチャンネルの内容は、中級者~上級者レベル向けになりがちで、見ている方もそれなりの知識をお持ちの方が多いです。一般のパン教室では物足りないという方から「貴重な場である」というコメントをいただきますし、詳しい方たちなので、専門的な言葉を使っても伝わります。

 

現在の更新頻度は週2~3回です。平日に1~2本、週末の土日どちらかに生放送というペースです。平日には仕事の空き時間などに収録して、職人としての仕事が終わってから編集するという形です。

 

季節感は検索されることも考えて意識しています。クリスマスだったらシュトーレン、バレンタインだったらチョコレートなど、リクエストもあるので求められているところに寄り添いながら、季節感を感じられるようなスケジュールを組んでいます。春は桜を使ったものだったり、夏場はフレッシュなフルーツを入れたものなど、おおまかな枠組みを決めてあります。これまで5年間続けてきましたが、その間コメントをいただくことによって、季節によって何が求められているのかがわかるようになってきましたね。

 

目標はとにかく「継続すること」。何事も一日二日で伝わることはないですし、継続して伝えることは大切だと思っています。また、こういう状況なので、対面でのイベントやパン教室ができないので、復活したいという思いはあります。今はパン職人として働いているんですが、可能であれば独立してパンの啓蒙活動をいろいろな媒体で行うようになりたいです。

 

3本柱のコンテンツ

Baker’s Channelのコンテンツはパンを作るレシピ、パン屋さんを巡って紹介するvlog、そして生放送という3本立てです。

 

パンを作る上で一番負担になり手間がかかるところは、捏ねるところなんですが、面倒なのでやらないという方が多いんです。そこを覆したかったので「捏ねずに楽に美味しく作るパンレシピ」というシリーズをはじめました。なるべく味を落とさずに美味しいパンができる方法を提案しています。

 

 

最初は捏ねるパンだけを作っていたんです。ところがパンを作る方は、年配の女性が多く、力がなかったり手首に違和感がある方もいるので、20分以上にもなるパンを捏ねる作業は大変だというコメントをたくさんいただいたんです。捏ねるパンも美味しいし捏ねたい人もいるけども、それと同じぐらい美味しいパンを捏ねずに楽に作りたいというご意見が多いと2018年ぐらいに感じてきました。

 

YouTubeで検索しても「捏ねないパンのレシピ」はあまりなかったので、ならば私のチャンネルで提案しよう思ってやりはじめたところ、好意的なコメントが非常に多かったです。捏ねるパンと捏ねないパンは全然違うテイストになるので、捏ねるのが好きな人はやっぱり捏ねるし、楽をしたい人は「捏ねずに……」シリーズを見るのかなと。それぞれを求める人たちが完全に分かれていると最近は感じています。

 

魅力的なパン屋さんを紹介するのが「パン旅vlog」です。全国にはあまり知られていないパン屋さんがたくさんあって、パン屋さんを紹介する雑誌媒体などもあるんですが、そんな中でも埋もれていたり、トレンドではないということで媒体には扱われないパン屋さんがたくさんあります。そんなお店を私の培ってきた知識を交えて紹介することによって、みなさんに伝えことができて、少しでもパン業界が活性化したらいい、という思いでやっています。

 

全国どこにでも行く方針ではありますが、なかなか遠いところは難しいですし、コロナの影響もありますので、住まいのある大阪や出身地の京都界隈がベースです。過去には旅行のついでに寄ったり、パン屋が目的に東京に行くこともありました。ありがたいことに、美味しいパン屋さんの情報も、コメント欄やDMなどでたくさんいただいています。

 

 

週末の生放送では、パン教室やパンに対する質疑応答、どちらかをやることを決めています。

 

多くの人にパンの魅力を

セルフプロデュースに関しては難しいと思っていて、日々勉強しています。YouTubeはコメントをいただけるので、どういったものを求められているのか、欲しがられているのかがわかりますので、目指す方向性が決められます。それにプラスして、自分そのものを出していくほうが受け入れてもらいやすいと思います。私のチャンネルのコメントを読んでもそのような反応だし、名のあるYouTuberの方も着飾らずにやっていらっしゃる方が多いので、自分そのものを出す、自分にウソをつかないことをベースにしています。

 

登録者数や視聴数が増えるのは、やはり日本人に昔から馴染みのあるメロンパンやアンパンなどを作ったときですね。私はニッチな分野、学び部分にフォーカスしているので、かなり狭い視聴者向けだったんですが、ハード系のパンの作り方などは伝わりにくい部分があると最近は思っていて、もう少し伝わりやすい馴染みのあるパンの作り方など、そういうコンテンツも交えながらやっていこうと思っています。再生回数が平均よりも上がる動画は、そのぶん登録者数もいっしょに増えるので、YouTubeのダイレクトな反応を感じます。

 

使っている機材については、PCはiMac、編集ソフトはFinal Cut Proです。カメラは2台体制で、手元と俯瞰をLUMIX DC-G100とLUMIX DMC-G8で、マイクはRODE、これでレシピ動画などの撮影をしています。ロケの場合、パン屋さんには大きな機材を持って行けないのでOsmo Pocketを使ってぶれないように撮影しています。生放送ではカメラからHDMI出力したものをATEM Miniに入れてスイッチングしています。

 

機材は徐々に増やしていきました。はじめはカメラ1台でやっていたんですが、伝わりにくかったり、外での撮影ではカメラが大き過ぎたりしたんです。やはり、ストレスフリーで撮りたいなと思ったので、必要に応じて購入してきました。

 

生放送も、はじめはビデオキャプチャー1つでやっていて、スイッチングもしなかったし、ガタガタしてしまって見にくい放送になってしまっていました。自分が視聴者だったら気持ち悪いと思いましたし、どうすればいいか考えて、ガジェット記事やブログだったり、インフルエンサーの人たちの動画を参考にして機材も揃えました。

 

私のチャンネルのコンセプトはパンの魅力を伝えたいということですので、それを継続していきたいです。私のプロの技術や知識が、みなさんのパンを作る際のサポートになると思いますので、そういうところをしっかりとこれからも発信して、なるべく多く人にパンの魅力が伝わればうれしいなと思っています。