ライフスタイル
2023/5/13 11:15

必然性あんまりなかったよ……冬じゃなくて「夏に大掃除」すべき理由を家電・掃除のプロに訊いた

大掃除と言えば、年末。日本の伝統的な年中行事のひとつとも言えますが、はたと考えました。なぜよりにもよって、「寒い」「忙しい」と大変な年末に大掃除をしなければならないのか? むしろ初夏~夏に大掃除をしたほうが、さまざまな面で合理的なのではないかと。

 

そこで今回、最新掃除家電に詳しい家電ライターの田中真紀子さんと、家事代行サービスを運営するベアーズの副社長であり家事研究家でもある高橋ゆきさんに意見を伺いながら、「夏の大掃除」のメリットを探っていきます。

田中真紀子

白物家電、美容家電を得意とするフリーライター。雑誌、ウェブなどで執筆活動をしており、検証およびレビュー記事では、ユーザー目線を大切にした主婦ならではの感性に定評がある。ベビー用品、生活雑貨、医療など、暮らしにまつわる記事も多数。

高橋 ゆき

家事代行サービス 株式会社ベアーズ取締役副社長。経営者として、各種ビジネスコンテストの審査員や、ビジネススクールのコメンテーターを務めるほか、家事研究家、日本の暮らし方研究家としても、テレビ・雑誌などで幅広く活躍している。

 

冬の大掃除は古くからの慣習。必然性はあまりない

そもそも、日本人はなぜ年末に大掃除をするのでしょうか。「慣習だから」「毎年そうしているから」。そういってこれまで深く理由を考えたことはありませんでしたが、よくよく考えてみると、寒いうえに忙しい年末に大掃除をするのは不思議な話です。

 

「諸説ありますが、“煤払い”と言って、1年の汚れや邪気をしっかり落としてから新年を迎えようという慣習が、実は平安時代からあったと言われています」

 

そう説明してくれたのは、田中さん。古くから伝わる日本人の慣習が、今でも残っているんですね。

↑年末の大掃除をたどると平安時代までさかのぼるという話は驚きです

 

大掃除で邪気を払い、家を清め、新たな1年を気持ちよく迎える。なるほど確かに、それこそが年末の大掃除をする際の大きなモチベーションになるわけですが、季節は冬。寒くて換気もままならないうえ、水回りを掃除しようものなら、手がかじかんでしまいます。デメリットこそあれ、メリットはなかなか見当たりません。

 

これに対して家事研究家の高橋さんは、「さまざまなライフスタイルがある今の時代は、春夏秋冬、いつでも大掃除をしていいと思います。冬に大掃除をするのは確かに一般的ですが、窓や外壁、ベランダ、玄関、お風呂やキッチンなど、水を使う掃除の場合には暖かい季節のほうが向いていますよね。寒いからといって、室内で換気をせずに漂白剤を使うのは危険ですし、冬でなければならない必然性はあまりないように思います」と語ります。

↑冬だと水が冷たいですが、夏に水を使って掃除をすると体感的にも気持ちがいいもの

 

加えて、いざ掃除しようとすると、乾燥しているためにホコリが立ちやすいうえ、カーテンやふとんなどを洗って干そうにも、気温が低く乾きにくいなど、やはり冬は大掃除に適してなさそうです。

 

乾きやすい、換気しやすいなど、夏の大掃除のメリットはさまざま

では、夏はどうでしょうか? 冬に比べて汚れが落ちやすいなどのメリットはあるのでしょうか。

 

「油汚れは、暖かい夏のほうが比較的落としやすいと思います。温度が高い分、こびり付いた油汚れがはがれ落ちやすくなるんですよね。それと、やはり一番は乾きやすいこと。せっかく掃除をしても、湿気を残すとカビが発生してしまいますから。

 

たとえば水を使った掃除、外から水をかける窓掃除の場合なら、中性洗剤で薄めた水をスポンジにたっぷり含ませて汚れを洗い流し、きれいな水をかけてから、拭き取りワイパーで水気をしっかり取り除くといいですよ」(田中さん)

↑窓の掃除は水をたっぷりかけるのがポイントだそうです

 

「日照時間の長さも夏に大掃除をするメリットです。明るい日差しのもと、さまざまな方向から見ることで、鏡や窓、テーブル、床などの拭きムラを視認しやすくなります。もちろん、日が長いので夕方からでも余裕を持って作業できますし、何より、寒くないので部屋に風を通しながら気持ちよく作業できるのがいいですよね。換気をする際のワンポイントは、窓に向かって扇風機を回すこと。これはぜひ実践してみてください。空気がしっかり入れ替わるので、爽やかな気持ちで大掃除を仕上げられますよ。

 

ほかにも、浴室のイスや桶、ガスキッチンの五徳などを浸け置き洗いする際に、温度が下がりにくいのも利点ですね」(高橋さん)

↑掃除の際に換気は必須。効率よく換気するなら扇風機を窓に向けましょう

 

雑菌が繁殖しやすい台ふきんなど、細かい場所をきれいにするのがよい

もちろん、真夏に掃除する際には、熱中症に気をつけながら作業する必要があります。となると、エアコンをつけながら掃除することになるわけですが、高橋さんいわく「エアコンやレンジフードなどは、弊社のようなプロにおまかせするのがよいですよ」とのこと。

 

「エアコンやレンジフード掃除はプロにまかせて、普段気にかけながらも、後回しにしがちなまな板や台ふきんなど、細かい部分をキレイにするのもいいかもしれません。台ふきんは雑菌の温床ですが、酢水に半日浸けて、きれいな水で洗い流し、天日干ししておくと、しっかり殺菌できます。

 

ブラインドや窓のサッシ、パソコン掃除には、軍手雑巾(高橋さんが考案)がおすすめ。ブラシだとうまく掻き取れない汚れも、指先でスイッとつまんで取れちゃいます。あとは、定番ですが重曹も何かと便利で、物足りない方は、中性洗剤と混ぜて重曹ペーストを作ってみてください。おもしろいように汚れが取れますよ」(高橋さん)

 

家電を使うなら高圧洗浄機とスチームクリーナー。身の回りのアイテムでも掃除が効率的に

夏の大掃除のメリットがわかってきたところで、2人のプロに、大掃除の際に活躍する便利アイテムを尋ねてみました。

 

「ぜひ使ってみてほしいのが、高圧洗浄機とスチームクリーナー。高圧洗浄機は外壁や窓の掃除、スチームクリーナーは油汚れの掃除で威力を発揮してくれます。また、布張りのソファやラグ、ぬいぐるみなどのファブリック製品にはリンサークリーナーがおすすめ。ちなみに、高圧洗浄機とスチームクリーナーはケルヒャー、リンサークリーナーはアイリスオーヤマの製品が人気です」(田中さん)

↑高圧洗浄機といえばおなじみのケルヒャー

 

↑カーペットやソファなど普段では掃除機のしにくい布製品の汚れやシミを水洗いできる、アイリスオーヤマのリンサークリーナー。直販サイトで1万2200円(税込)から

 

「静電気を利用した三つ編みストッキングやストッキングハンガー(いずれも高橋さん考案)も試してみてほしいです。手前味噌ですが、掃除がグッと効率的になりますし、楽しみながら作業できますよ。あとは、私は掃除を楽しむことがとても大切だと考えています。ですので、アイデアグッズを活用するだけでなく、アロマを焚きながら掃除したり、音楽をかけたり、そういうちょっとしたひと工夫で、掃除の心持ちが変わってきて、モチベーションも高まると思うんです」(高橋さん)

 

これまで何ら疑問を抱くことなく、当たり前のように行なっていた年末の大掃除。しかし、どうでしょう? 夏に大掃除する利点は、田中さんと高橋さんのお話からも数多くあることがわかりました。善は急げ! いつかではなく、まもなく訪れる今年の夏に、大掃除をしてみてはいかがでしょう。きっと多くの人が、「なるほど」と納得し、ピカピカの自宅で清々しい夏を過ごせるはずですよ。

↑GetNavi webでは「夏の大掃除」特集を実施中。本格的な夏がやってくる前に掃除したいところの解説や、お掃除アイテムを紹介していきます。詳しくはこちらの画像をタップしてみてください。

 

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