パナソニックが開発した街演出クラウド「YOI-en」。先日の記事でもお知らせしましたが、YOI-enは、ライトアップや照明演出に用いられる多数のLED投光器をクラウド上で一括管理し、1台のPCからまとめて制御できるシステムです。
これを使えば、道路や川で隔てられた広大なエリアのライトアップを一括制御したり、東京から大阪や福岡の照明を操作したり、複数の都市でリアルタイムに連動する照明演出を行うといったことが可能になります。
パナソニックでは、このYOI-enの実力を社内外の人が体験できるよう、自社が所有する広大な敷地内に、285台の投光器を設置。YOI-en Fieldと名付け、2023年7月1日にオープンします。この記事では、YOI-en Field体験会のレポートをお届けします。
管理者の手間を削減、来訪者には新たな体験を提供
YOI-enが登場する前のライトアップは、ゾーンごとに照明を制御する人員が必要でした。たとえばライトアップをするゾーンが道路をまたいで2箇所に分かれていたら、両方のゾーンの照明をまとめて制御することはできず、それぞれに管理者を配置しなければなりませんでした。
そういった問題を解決するだけでなく、大きく離れた別都市のライトアップでも、クラウドを通して一括制御できるという点で、YOI-enは画期性のあるシステムです。さらに、照明を利用して人を誘導するアフォーダンスライティングや、季節やイベントによって色を変えるシーズンカラー・アウェアネスカラーなどの演出もPC1台で実現できます。
また、ライトアップ会場に設置されたQRコードを読み取ることで、来訪者自身のスマホから照明をコントロールできる機能「YOI-iro」も搭載しています。YOI-enは、ライトアップの管理者だけでなく、来訪者にも新たな体験を提供するのです。
“YOI-enのショールーム” YOI-en Fieldが誕生
実際にYOI-enが使われた事例も、すこしずつではありますが出てきています。2023年2月で行われた「SAPPORO ART CAMP2023」では、来訪したカップルがQRコードを読み取って2人の誕生月を入力すると、それぞれの誕生花のツートンカラーの光で周囲が彩られるという仕掛けを導入しました。ただしこれは期間限定のイベントであり、常設の事例は限られていたのが現実。そこでパナソニックは、門真の自社敷地内に285台のLED投光器を設置し、1.7ヘクタールにも及ぶ「YOI-en Field」を2023年7月1日にオープンすることにしたのです。
YOI-en Fieldの設計を担当した城寶 俊亮さんによると、この場所はオフィス構内をひとつの街に見立てた空間だそうです。あかりの体験によって、人々のつながりやアクティビティを生み出し、街の賑わいを演出するため、各所に工夫を凝らしています。
エントランス、並木道、芝生広場の3エリアで構成されるYOI-en Fieldでは、場所ごとに異なったコンセプトが設定されています。来訪者が初めに目にする玄関口としての機能を果たすエントランスでは、視界全体にあかりが感じられるよう、床から植栽、建物のそれぞれの高さに投光器を設置。手前から奥に行くにつれて、低いところから高いところへライトアップの位置が高くなっていくので、立体性が感じられます。
人々が行き交う並木道では、道に並ぶ桜の木を引き立てるライトアップを行いました。その特徴は、建物の輪郭にも照明を設置していること。木と建物の照明を連動させることで、オリジナリティのある桜並木を演出しています。また、照明の色は四季などによって変えられるため、桜の花が咲いているときはピンク、新緑の時期はグリーンと、季節感を味わえるのもポイントです。
並木道を進んでいくと姿を現すのが、広大な芝生広場。床面、樹木、建物全体に光が照射されているため、空間の広大さがより引き立っています。
芝生広場では、YOI-iroによる照明コントロールの体験も可能です。設置されたQRコードをスマホで読み込み、誕生日を入力すると、その日にちなんだ花が画面に表示され、周囲の照明がその花の色に切り替わります。
YOI-en Fieldの主な目的は、YOI-enの導入を考えている顧客に向けた“ショールーム”。それに加えて、新しいサービスの実証や、自社で働く社員のエンゲージメント向上の場としても活用するといいます。
YOI-en Fieldは、平日は毎日点灯。顧客による観覧は予約制ですが、一般の人でも通れる門の前の通路部分にも導入工事を進めており、あかりの様子を楽しめるようになる予定です。