冷凍冷蔵庫についていると便利な自動製氷機。ところが、便利な反面、従来のトレータイプに比べて手入れを面倒に感じてしまい、きちんと掃除をせずに使い続けている……という人も多いのではないでしょうか? 放置した自動製氷機はカビが発生しやすく、悪い場合食中毒を引き起こす危険性も。そうならないためには、こまめな手入れが大切です。
いざ掃除をするなら、氷は口に入れるものだからこそ安心安全な素材で行いたいもの。クエン酸や酸素系漂白剤など “ナチュラル洗剤” で行う自動製氷機のお手入れ方法について、ナチュラルクリーニング講師の本橋ひろえさんに詳しく解説していただきました。
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冷蔵庫・キッチン回りの掃除にピッタリ! “ナチュラルクリーニング” とは?
「ナチュラルクリーニング」とは、重曹やクエン酸など、自然界にある素材を使った掃除方法のこと。まずは、自動製氷機の掃除にもぴったりだという、その魅力をあらためて教えていただきました。
「ナチュラルクリーニングのなによりの魅力は、人と地球環境にやさしい素材で洗浄するという点です。アトピーなど肌が弱い人や、小さいお子さんがいる、ペットがいるお宅でも安心して使用することができますし、排水口から流れていった先の環境負荷が低いというのも大きな利点だと思います。今回のように冷蔵庫やキッチンで使うアイテムの掃除にもぴったりです。例えば、製氷ルートの掃除で使うクエン酸は万が一口に入ってしまっても問題ありませんし、においも残りません。残留する洗剤の心配もいらないので、安心して使えると思います」(ナチュラルクリーニング講師・本橋ひろえさん、以下同)
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普段の手入れで重要なのは、しっかり乾燥させること
実は、メーカーは週に1回の掃除を推奨している自動製氷機。本橋さんも「使ったら、その都度手入れしてほしい」と語ります。
「自動製氷機のタンクには水しか入れないので、基本的には長い時間放置しなければ汚れません。ですので、普段は一晩たって氷ができたら、その都度タンクの水を一度捨て、乾かしておくだけでもOKです。湿った状態が長いと雑菌が繫殖してしまいますので、水を継ぎ足して何度も使うのではなく『一度使ったら必ず乾燥』することを心がけてほしいです。
手の届かない内部の製氷ルートの掃除は、目安として年に4回くらい。冬はあまり使わないと思いますので、なるべくよく使う暑い時期に頻繁にやってもらえたらいいと思います。毎日自動製氷機を使うような方は、月1回のペースでやってもいいかもしれません」
「しかし、長時間放置してしまうと水が腐敗し、カビや水垢、ぬめりが発生してしまいます。そうなってしまうと除菌しなくてはいけませんので、そこではじめて洗剤が必要となります。タンクがぬるぬるしていたり、黒ずみがあったり、白っぽいものが浮いていたりしたら要注意。こうした自動製氷機からできた氷を毎日のように口にしているとおなかを壊す危険性がありますので、できるだけ普段からこまめな手入れをしておくことが大切です。
よく、『自動製氷機には水道水を入れると良い』と言われますが、その理由は、水道水自体が塩素を含んでおり、ミネラルウォーターや浄水器を通した水よりも傷みにくいからなんです。それでも水道水を飲むのに抵抗がある方もいらっしゃいますので、その場合はお掃除の頻度を上げて、タンクに長い間水をいれっぱなしにしないよう気を付けてもらえたらと思います」
汚れのたまった自動製氷機掃除で活躍する、3種のナチュラル洗剤とおすすめグッズ
それでは、長時間放置してぬめりやカビが気になる自動製氷機はどのように掃除すればいいのでしょうか? まずは、掃除で使う洗剤と道具を教えていただきました。
ナチュラル洗剤
今回使用するナチュラル洗剤は、タンクやフタなどの部品を洗う際に使う「粉石けん」と漂白・除菌で使用する「酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)」、そして製氷ルートの掃除に活躍する「クエン酸」の3種類です。
「自動製氷機のタンク回りを洗うとき、私は『無添加の粉せっけん』を愛用しています。香料や添加物が一切入っていないため、においも残らないですし、科学成分で手が荒れるなどの心配もありませんのでおすすめです。
タンクやパーツをつけ置きするときに使う『酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)』は、漂白と除菌の両方の効果があります。アルカリ性なので油汚れや酸性の汚れを落とす効果もあり、キッチン回りで活躍します。例えばティーポットやカップを漬け置きすると、茶渋の漂白と同時に除菌までできるのがいいですね。ステンレス製の水筒など、手を入れて洗うことのできないものの洗浄にもぴったりです。
そして『クエン酸』は、製氷機内部の製氷ルートにたまった水垢を落とすだけでなく、酸が強く雑菌が繫殖しにくいので若干の除菌効果もあります。お酢を使うという方法もありますが、お酢はにおいが残りやすいので、クエン酸を使うのがいいと思います」
掃除グッズ
「自動製氷機のタンクやパーツを洗う際、私は食器洗い用の薄手のクロスを使っています。厚手のスポンジは、中心まで乾かないと雑菌が繁殖しやすいんです。最初から雑菌だらけのスポンジで洗ってしまうと水が傷みやすくなってしまうので、洗う道具も乾きが早いものを選ぶということも大事だと思っています。また、製氷機のタンクやフタは、細かい溝に黒ずみやぬめりが残りやすいので、ブラシで洗っていきます。その際、歯ブラシのような形状のものだと、ヘッドが当たってしまって端まで掃除ができないので、上に毛があるタイプがおすすめです」
自動製氷機のタンク・製氷ルートの掃除手順
それでは実際に、自動製氷機の掃除手順を具体的に見ていきましょう。掃除を開始する前には、製氷機能を停止するのをお忘れなく!
【給水タンクの掃除】
1. 冷蔵庫からタンクを取り外し、パーツを洗う ※フィルターは洗剤NG
「まずは、給水タンクとフタなどのパーツを洗っていきます。クロスやスポンジに直接粉石けんをふって、食器を洗う際と同じようにこすり洗いします。溝に黒ずみやぬめりがある場合は、ブラシでこすって汚れを落としていきます」
「ただし、自動製氷機に付いているフィルターは洗剤で洗ってはいけないので要注意。取り外して、やさしく水洗いしましょう。フィルターは消耗品ですので、黒ずみやカビが発生してしまった場合は交換が必要です。使用頻度やメーカーにもよりますが、1~2年に1回くらいは交換した方がいいでしょう。交換用のフィルターはメーカーが販売していますので確認してみてくださいね」
2. 給水タンク、パーツを「酸素系漂白剤(過炭酸ナトリウム)」でつけ置き
「きちんと除菌したいときは、酸素系漂白剤を溶かしたお湯にパーツをつけ置きします(フィルターはつけ置きNG)。本来、酸素系漂白剤は50~60℃のお湯に溶かすと一番洗浄効果があるのですが、給水タンクのプラスチックを傷めないためにも、給湯器から出る40~50℃くらいのお湯に溶かしてください。タンク本体は、お湯を入れて粉を溶かしておいておけばOK。一般的な給水タンクは1リットルいかないくらいの大きさなので、小さじ一杯程の酸素系漂白剤を入れ、かき混ぜて溶かします」
「蓋などの部品は、ボウルなどの容器にお湯と漂白剤を入れてつけておきましょう。2リットルに大さじ一杯が目安です。大体30分ほどつけ置きして、その後水でよくすすげばタンク回りの手入れは完了です。洗ったあとは濡れたままにせず、よく乾燥させておくのがとっても大切。特に夏場は雑菌が繁殖しやすいのでしっかり乾かしてくださいね」
【製氷ルートの掃除】
1. 洗った給水タンクに水を入れ、クエン酸を溶かす
「製氷機の内部、製氷ルートは手が届かない場所ですので、クエン酸を溶かした水を使って手入れをします。水は無色透明ではありますが、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が含まれており、水分が乾いた後にミネラル分が白く残ってしまうことがあります。それを流してくれるのがクエン酸です。1リットル程度のタンクであれば、だいたい小さじ2杯のクエン酸を水に溶かします」
2.そのまま給水タンクを冷蔵庫に戻し、氷を作る
「クエン酸水を入れた給水タンクを冷蔵庫に戻し、そのまま通常通り製氷します。クエン酸水で作った氷は透明感のない白い氷なので、製氷するとわかると思います。間違って食べたら酸っぱいので要注意です」
3.氷の色が透明になるまで、普通の水で2回ほど製氷を繰り返す
「タンクの水が空になったら、クエン酸水でできた氷をすべて捨てます。その後、タンクの中のクエン酸が残らないように、普通の水で2回製氷を繰り返してください。透明で綺麗な氷ができたら掃除完了です」
自動製氷機は、黒ずみやぬめりが発生する前のこまめな手入れがなにより重要です。特に夏場は製氷する回数も多くなる時期。一度使ったら水を捨て、しっかり「乾燥」することを心がけ、きれいな氷で暑い夏を乗り切りましょう。
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プロフィール
ナチュラルクリーニング講師 / 本橋ひろえ
北里大学衛生学部化学科(現・理学部化学科)卒業。化学系の企業に就職し、化学事業部で水処理、化学薬品、合成洗剤などの業務を担当。結婚退職後、専業主婦として家事を経験し、子どもがアトピー体質であったこともあり、ナチュラル洗剤を活用するように。その後、ナチュラルクリーニング講師としての活動を始動。全国各地での講座開催や、著書などで、ナチュラルクリーニングの方法を広める活動に力を注いでいる。
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