「足立 紳 後ろ向きで進む」第44回
結婚21年。妻には殴られ罵られ、2人の子どもたちに翻弄され、他人の成功に嫉妬する日々——それでも、夫として父として男として生きていかねばならない!
『百円の恋』で日本アカデミー賞最優秀脚本賞、『喜劇 愛妻物語』で東京国際映画祭最優秀脚本賞を受賞。2023年のNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』の脚本も担当。いま、監督・脚本家として大注目の足立 紳の哀しくもおかしい日常。
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11月2日(木)
息子の移動教室の振替休日。せっかく休みだから映画に行こうと誘うも、脳調悪く「行きたくない」とのこと。「せっかくの休みなのに!」と自分の思いが優先してしまい、私は軽く不機嫌になってしまう。説得しても今日は動かなそうだったので、いつもの喫茶店に向かう。妻はこういう時はさっさと2階に上がり仕事。
15時帰宅。息子がいないので2階の妻に「息子がいない」と報告に行く。「ほうっておけ」とだけ言われる。直後に息子が帰宅。ブックオフで立ち読みしていたとのことで、脳調も復活しており、一緒に『アンストッパブル』を観ていると、妻が2階から降りてくる。
「え! 帰ってたの? なんでいるの!」と我々を見ていきなりブチ切れる。意味が分からず息子と2人でキョトンとしていると「今日、キックボクシングの日でしょ! なんで送りださないの!」と怒っている。「学校が休みの息子はまだしも、あんたまで忘れるって、いつになったら子どもの習い事の曜日覚えるんだよ! いくよ!!」と大声でさけんで、息子を連れて行った。
仕方がないだろう。息子の学校も振替休日なのだから今日はてっきり日曜かと思っていたのだ。
それに私は昔から曜日の感覚がなく、もう10年もここに住んでいるのに未だにゴミの曜日が覚えられない。人間には得手不得手があるし、こんなことであんなにもキレなくていいだろう。ハラスメント野郎が!
※妻より
いつまでたっても、ゴミも子どもの習い事も自分事にしない夫に相変わらず腹が立ちます。基本、仕事のこと以外は他人任せなんだと思うのですが、夫に言うと「それは違う。任せてはいない」と言います。確かに任せてはいないのかもしれません。一人暮らしのころからゴミの日を覚えておらず、部屋にはゴミ袋に入れたまま捨てていないゴミの山でしたから。夫はきっとそれでいいのでしょうが、私は嫌。その違いなのでしょう。
11月3日(金・祝)
娘の高校入学時の春休みに連れて行く約束をしていたのに、約束を果たせていなかったUSJに向かう。早朝5時出発。6時台の新幹線に乗り、朝一番から入園する予定だ。
しかし予想はしていたが、連休中であり、ほとんどのアトラクションが2時間以上待ち。入園した瞬間に私と妻は疲れる。娘と息子は互いに並びたいアトラクションが違うから険悪な雰囲気に。
乗りたいものを順番に並ぶことにするが、並んでいる最中に娘と妻がケンカを始めたり、疲れて愚図る息子に私がイライラしたり、姉弟の公開マジゲンカが始まったりして、何回かグループに別れる。だいたい妻と息子、私と娘に分かれるのだが、まあそれでも2時間待ちながら娘といろんな話もできたし、説教してキレさせで1時間半無言で2人で並ぶなど普段ではなかなかできない体験もする。
18時半から「ゾンビ・デ・ダンス」を観られると言うことで、これは娘も息子も楽しみにしてたいのだが、私と妻は疲れがマックスまできていたので、娘と息子に2人で行ってこいと言うと、トム・サビーニばりのゾンビがわんさかといて息子はビビッて帰ってきてしまい、娘は1人ではイヤだと言うので、妻に行ってほしかったが、当然のように私が付き添うこととなり、まさかの閉園まで娘と「ゾンビ・デ・ダンス」を追いかけることとなってしまった……。
とてつもなく疲れたが、それでもゾンビのダンスはキレキレだし、チェーンソーやら、日野日出志もどきやらプレデターみたいのやら、チャッキーみたいなゾンビがウヨウヨしていて最高のエンターテインメントであった。
22時の閉園後、園から徒歩3分くらいの値段の高そうなホテルに悠々と帰って行く外国人の方々を尻目に(もちろん日本人もいる)、我々は身体の芯まで疲れた体を引きずりながら電車で15分の駅にあるカビ臭く埃っぽい古い激安民泊に宿泊。なんか風呂に虫の集団もいた。もちろんそこに泊まることを決めたのは妻。明日も入園から行くから寝るだけとはいえ、もう少しホテル感、もしくは旅館感のある、「あー、旅行来てる!」と思えるところに泊まりたかった。
※妻より
4人分の新幹線代、宿泊代、予定する飲食費で目が飛び出そうになったのだから仕方ないです。そして宿は足立がいうほどひどくありません。3階建ての一軒家だし、完全リノベーションされていて、ベッドも広かったです。風呂に虫など1匹もいませんでした……。足立はいったい何を見ているのか……。まったく大げさな。
11月4日(土)
開園前には並んでいたい、という子どもの要望により、7時半には出発し8時にUSJ到着。すでに激込み、長蛇の列。萎える。
その後の流れはほぼ昨日と同じ。2時間並び、姉弟ゲンカ、娘妻ゲンカ、夫婦ゲンカなどの合間に少しだけ仲良しの時間がある。せっかく仲の良い時間もあるのになぜこれを続けられないのだろうか……。
しかし、マリオカートにいたっては2時間待ちに並び、途中トラブルもあり、さらに待ち時間が増える。妻と息子は1時間並んで離脱、私と娘はその後さらに1時間ほど並んでいたが、ノロノロとしか動かない行列に痺れを切らして離脱。何をしているのか……。
その後は閉園まで昨日と同じようにゾンビたちを見て、骨の髄までクタクタになり宿に戻る。這うようにして風呂に入り、瞬時爆睡。
11月5日(日)
15時の新幹線で東京に戻る前に天王寺動物園へ。その後、新世界で無理矢理ランチ。大阪にまで来て、息子はナポリタン、娘はオムライスだったが、大阪の味がする! と言っていた。
急いで新大阪駅に向かい新幹線に飛び乗る。爆睡しようと思っていたがあまりの疲れかなぜか眠れず。
11月6日(月)
朝から仕事。昼、妻が韓国でつなげてきてくれた方々とランチミーティング。初めての方との昼食はいつも緊張してしまい味がよく分からない。なのでミーティング後に妻と汁なし担々麺屋に入り、2回目の昼食。
11月7日(火)
夕方から新宿で、武正晴監督、俳優の坂田聡さん、清水伸さん、宇野祥平さん、眼鏡太郎さんと食事。同世代の気の置けない仲間との飲み会はとても楽しい。特に武正晴監督とは本当に久しぶりだ。2月に西村賢太さん追悼飲み会を信濃路でして以来だ。武さんはAmazonの連ドラ、私は朝ドラでバタバタしていてなかなか会えなかった。互いに仕事がなくて週に1度は会っていた2010年~11年あたりを思うと今の状況は信じられないが、仕事があることはありがたいし良いことだ。映画、本、現場、ハゲ、中性脂肪、下ネタ、昔話、愚痴、文句などでみんなで大いに盛り上がる。
11月10日(金)
新宿シアタートップスで『タットビ』(作・演出:黒川麻衣)を鑑賞。脚本家たちのお芝居。他人事でなく身につまされる。
その後、本日よりTAⅯA映画賞受賞を記念して『雑魚どもよ、大志を抱け!』の凱旋上映が始まる新宿武蔵野館へ行く。今日は臼田あさ美さんとのトークイベント。臼田さんは今回の母親役にぴったりだと思ってオファーさせていただいたのだが、もともとがファンなのでお会いしてもまともにお顔を見ることができない。しかも、自分の母親をモデルとした人物を演じていただくからなおさら恥ずかしい。きっと挙動不審な人間だと思われているだろう。
トークでは臼田さんが抱いていた母親像をお聞きしたり、原作も読んでくださっていたことなどを聞いてきっとお客さんよりも私のほうが楽しい時間を過ごしてしまったような気がする。
11月11日(土)
夕方から家族で練馬の一の酉へ行く。毎年同じ熊手屋さんで、1000円ずつアップした熊手を買うのだが、去年がいくらの熊手を買ったのか忘れてしまい、今年は××円の熊手にした。
柏手を打ってもらい、息子と私は気合いを入れて金魚すくいへ。去年10匹近く釣った金魚たちは立派に成長し、もう2倍の大きさになっている。なので今年はデメキンに狙いを定め3匹ゲット。友達と合流した娘にお金をたかられる。
※妻より
狭い居間に1メートルくらいの水槽を置いているのですが、公園の沼のように深緑色に濁っています(水替えは夫と息子の担当だと飼う前に約束しました)。金魚って透明な水で鑑賞するものだと思っていたのですが、金魚の色も見えないくらいの緑色の水はとてつもなく臭いです。そしてデメキンはバカでかくなった金魚にいつも攻撃されてて可哀そうなので別水槽に移動させました。そしてやはりそれも臭いです。
11月12日(日)
朝から仕事。昼から見たい演劇に行くも、余りの睡魔で寝てしまう。妻から「そんなに寝るんだったら、もう二度と一緒に観劇したくない! いくら払ってると思ってんだ!」と怒られる。そう。確かに演劇は高い。寝てはいけないと思うと余計に寝てしまう。
夕方、3週間前の持ち越し息子の誕生日夕食会で焼き肉を食べに行く。とてもとても美味しかった。
11月13日(月)
息子を習い事に送迎。帰り道突然、息子が学校であった嫌なことを話し始めた。聞いているとかなり切ない。息子の話している内容の細部がよく分からなかったので妻が担任に確認すると、もう2週間以上も前のことだったらしい。息子はあったことを言語化するまでにとても時間がかかる。しかもいつも突発的にくるからこちらは心の準備ができておらず、こちらがくらうこともある。でも、話してくれてよかった。
11月15日(水)
午前中、久しぶりにいつもの喫茶店で仕事。午後、シナリオ作家協会の方々と会合。その後、飲みに行く。
娘から妻の変顔の写真が送られてくる。それを帰りの電車の中で見たのだが私は幸せな気持ちになった。この顔芸を有しているという一点でも私は妻と一緒になって良かったと思った。妻の顔芸写真集を出すのは私の夢の一つだ。
※妻より
娘があまりにうざいので、変顔で対応していたら盗撮されました。変顔を喜ぶ高校生娘と初老夫。ついでに息子も大喜びする。なにがそんなに面白いのか、3人とも精神年齢が3歳としか思えない。何度も嫌だと言ったのに、夫は日記にさらすと言ってききません……。せめて、シミが目立たないようにモノクロに加工させていただきました。でも目立つか……。
※夫より
こういう顔を日記に使わせてくれて、私がウケをとるためならその身をさらけ出してくれるところに妻のクリエイティビティを感じるし、尊敬しています。
11月16日(木)
夜、武蔵野館にて、『雑魚どもよ、大志を抱け!』の凱旋上映最終日。
佐藤現プロデューサーと晃子プロデューサーと舞台挨拶。最終日、多くのお客さんが来てくださった。スタッフも来てくれて、その後飲みに行く。妻は息子の寝かしつけがあるとのことで、泣く泣く帰宅。
11月17日(金)
2年ぶりにワークショップを行う。私は演技を教えることはできないが、シナリオのことなら少しばかりは話せるので、何気ないセリフのようでも、この登場人物たちは、こういう関係性で生きてきたから、こういうセリフのやり取りになるんじゃないのか、とかそんなことを話す。それを肉体で表現しなければならない俳優という仕事はつくづくものすごい仕事だなあと思ってしまう。
夜、戻ってきたら娘がまだ起きており、今日から始まった初バイトの話など聞く。近所のファミレスで始めたのだが、厨房にすさまじいイケメンがいるということと、お盆をひっくり返して派手にグラスを割ったとのこと。
私の初バイトは上京してすぐ歌舞伎町の居酒屋で、ジョッキの持ち方を習って片手に5個ずつ両手で持って運びながら、あまりの重さに「ああ、もうダメだ」と思い、もういいやと諦めてあえて落としたことなど思い出した。ちなみにその店は辛くて無断でやめた。無断でやめることができてしまう特性の人間だったから、人が無断で仕事をやめるということにさほど怒りを感じない。俺と一緒だなと思うだけだ。でも、「それ、人としてどうなの?」とよく言われた。まだ恋人の状態だった妻に妹の振りをしてもらい「母が危篤で……急いで帰ってきて欲しいんですけど」的な電話をしてもらったこともある。
妻は「え、なんで……?」と言いながらもやってくれたから、妻もおかしな人だったのかもしれない。(電話してやらないと、足立はバイトぶっちして逃げるから、ブッチよりはマシだと思って協力しました。とりあえず逃足だけは早かった。ただ、私から見てもひどくブラックな職場だったのではやくやめたほうが良いとは思っていました。※by.妻)
娘には「辞めるときは必ずちゃんと店の人に言え」と言うと(そういう常識を身に着けておいたほうが、生きやすいからだ)「は? 当たり前じゃん」と普通に返された。
11月18日(土)
息子、学芸会。稽古の時に先生から「声が小さい」と注意されていて、それからずっと嫌だ嫌だと言い続けていたのだがなんとか行った。
セリフを言いながら、隠れるようにどんどん舞台の奥に下がって行く息子の動きは面白かったし、私は涙が出そうになってしまった。学芸会は最高に面白いと言っていたのは柄本明さんだったか記憶が定かではないが、まさに笑いと涙に包まれる。
その後、息子と『ゴジラ-1.0』(監督:山崎貴)を見に行く。こういったジャンルの映画がハリウッドのクオリティに追いつくことはないんじゃないかと思っていたが、とうとう追いついてしまったという感じだ。
私はゴジラには思い入れはないのだが、それでも今回のゴジラは今までに見たどのゴジラよりも人間に容赦がないように見えて怖かった。息子は5千点満点とのこと。小中学生の私がこの映画を観ていたら、俺も映画を作りたいと思ったかもしれない。そういう映画になっていた。
帰り、靴屋に寄って息子の靴を買いラーメンを食って帰宅。息子、2学期の心配イベント(運動会、修学旅行、学芸会)が全て終わって、「ああ、これで嫌なことが全部終わったよ!」と解放感に溢れた顔をしていた。
※妻より
息子、どうにか、どうにか、よく頑張ったと思います。
11月19日(日)
朝から埼玉県岡部市に向かう。7月に深谷シネマで『雑魚どもよ、大志を抱け!』の舞台挨拶をしたときに、声をかけていただいて、岡部市の読書会に参加。課題図書は『雑魚~』の原作、『弱虫日記』だ。最初はこんな少年の話を年配の方々が読んでも面白くないかも……と不安だったが、いざ蓋を開けると82歳から14歳までの方々に囲まれ、丁寧な感想や、なるほどという指摘をもらったり、質問もたくさん出てとても盛り上がった。
その後に連れて行っていただいた居酒屋でも話が盛り上がり、とても楽しかった。しかし、ずっと読書嫌いできた私がこういう会に呼ばれるといくのは、ちょっと信じられない思いもある。
11月20日(月)
学芸会の振替休日のため、息子と妻と共に葛西臨海水族館へ。水族館に入る前に昼食。が、昼飯を食べている最中に妻とくだらないことからケンカになる。息子は「もうやめてくれよ……」という顔をしていてかわいそうだった。子どもの前でケンカはぜったいにやめようと妻とは何度も話し合っているのに、なかなかそうできない。
気まずいまま水族館に入り、見て回る。息子は手でタコに触れたり、ペンギンの泳ぐ姿を見て喜んでいた。私と妻は、息子を介して会話をしながら、出るころには何とか仲直りした。
11月21日(火)
午前中いつもの喫茶店で仕事。午後、打合せ。夕方からシネマ・チュプキ・タバタでトークイベントに参加するので、打合わせ後に田端に移動してコメダ珈琲でサンドイッチを食べながら仕事した。
『ボクらのホームパーティー』『虹色の朝が来るまで』の2本立て。それぞれの監督である川野辺修一監督、今井ミカ監督とお話しした。お2人ともこの日が初対面であったので緊張した。
『ボクらの~』はゲイの恋愛模様が最後にはグチャグチャのカオスなホームパーティーとなる模様を描き、これは人間のありのままの姿を描いた、私には喜劇に見えてとても面白かった。『虹色の~』はろう者の女性の同性愛を描いた映画で、こちらも俳優さんが生き生きとしていて素晴らしかった。主演2人の俳優さんはろう者で、ろう者でもある今井監督と手話のお芝居についてのお話もして、例えば声に出して言うセリフがクサくなるときがあるように、手話もクサいと感じることがあるなど、大変興味深く面白いお話をうかがい、あっという間のトークイベントだった。
11月22日(水)
いい夫婦の日なので、『喜劇 愛妻物語』を見てくださいと毎年恒例のつぶやきをする。
11月23日(木・祝日)
朝から、元アルコールと薬物依存症の渡邊洋次郎さんのお話を妻と聞きに行く。幼いころから生きづらさを抱えていたとおっしゃっていた渡邊さんの人生は壮絶だった。
渡邊さんは今現在、支援を求めているわけではないが、同じような状況にいる人はたくさんいるのだと思う。私にできることは今のところ、こういう会があれば参加して、そして「何か思う」ということしかできないが、以前に、捨てられた赤ちゃんを引き取っている施設の方のお話を聞いたとき、「思うだけでいいんです」と穏やかで小さな小さな声でおっしゃられていて、地獄絵図を目にされている方のとことんの優しさみたいなものを垣間見た気がして、その言葉を真に受け「思う」ことだけはしようと努めている。
渡邊さんはあまり眠れないのだとおっしゃっていて、妻がそんな渡邊さんに「ヤクルトが効くようですよ。この人も飲んでるんです」と言ったが、私のような甘々な眠れなさとは次元が違うだろう。渡邊さんは苦笑されていたが、そんなときに呑気にヤクルトをすすめてしまうのも妻の素晴らしいところだと私は思っている。質問を一番手にしたのも妻だったし。
※妻より
ヤクルトをすすめるのは素晴らしくないけど……。でも、なんか思わず言ってしまいました。眠れないのって辛いだろうから……。小さいころからずっと生きづらくて、寂しくて、いつも死にたいと思っていたと渡邊さんは仰っていました。小さい時って上手に自分の気持ちを説明できないし、誤解される言動もしてしまうからなかなか助けられることも気づかれることも難しいと思います。親自身も余裕がないと子どものそんな様子に気づけないこともあると思うし、親自身も溢れていることもあると思うし……。依存症はいつでも自分事になりうるなと思い、色々考えながら帰宅しました。
11月25日(土)
朝から仕事。昼打合せをして、15時頃、TAMA映画祭会場へ。『雑魚どもよ、大志を抱け!』が最優秀作品賞に選ばれたのだ。
私は、心の片隅で、実はこのTAMA映画賞が7人の少年たちに新人賞をくれないだろうかと密かに期待していた。というのは、TAMA映画賞は、1人の俳優に新人賞を与える場合もあれば、集団で表彰してくれたりすることもある。私が言うのは偉そうで申し訳ないのだが、そんな「粋な」選考をしてくれる映画祭なので、『雑魚ども~』の7人が新人賞をもらえたら最高の恩返しになるし、また彼らは選ばれてもおかしくないという自負もあった。
だが、私の想像を超えて最優秀作品賞に選んでもらえた。決して多くの人に観てもらえた映画ではないから、この作品を見つけてもらったような気持ちにすらなった。本当に心から感謝しかない。
会場には出演した少年たちをはじめ、何名かのスタッフも駆けつけてくれ、大変懐かしく、うれしく、思い出話に花が咲いた。みんなで舞台袖で緊張しながら順番を待っていたのは最高の思い出だ。
ただ、妻から授賞式のスピーチがくそつまらなさすぎたというダメ出しを受けて落ち込んだ。用意していたギャグが飛んでしまい、頭が真っ白になってしまっていたのだ。
※妻より
だって、こんな素晴らしい賞をいただけたんだもの。もう少し情熱的に、もう少しインパクト残すような、熱いスピーチをして欲しかったのです……緊張するのは分かるのですが……。
11月28日(火)
朝から仕事。夕方、紀伊国屋ホールで『扉座版 二代目はクリスチャン』(脚本・演出:横内謙介)観劇。その後、お世話になっている、同郷の中江先輩と会食。いろいろと話を聞いていただき楽しいひと時をすごした。
11月30日(木)
明日、鳥取の母校でトークイベントがあるので、鳥取に向かう。鳥取に友達ができた息子も学校を早退して一緒に鳥取へ。
夜、学校の大先輩たちと数人の同級生を交えて会食。先輩たちは、母校が我々のころよりはるかに優秀だったころの卒業生で、皆さんちゃんとしておられる。が、我々同級生はみんなかなりちゃんとしていない。しかし、まあでも、ちゃんとしていないなりの面白さはある。先輩たちと別れたあと、同級生5人で夜中なのに遊びに行った。
【妻の1枚】
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【プロフィール】
足立 紳(あだち・しん)
1972年鳥取県生まれ。日本映画学校卒業後、相米慎二監督に師事。助監督、演劇活動を経てシナリオを書き始め、第1回「松田優作賞」受賞作「百円の恋」が2014年映画化される。同作にて、第17回シナリオ作家協会「菊島隆三賞」、第39回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。ほか脚本担当作品として第38回創作テレビドラマ大賞受賞作品「佐知とマユ」(第4回「市川森一脚本賞」受賞)「嘘八百」「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」「こどもしょくどう」など多数。『14の夜』で映画監督デビューも果たす。監督、原作、脚本を手がける『喜劇 愛妻物語』が東京国際映画祭最優秀脚本賞。現在、最新作『雑魚どもよ、大志を抱け!』は2023年3月24日に公開。著書に『喜劇 愛妻物語』『14の夜』『弱虫日記』などがある。最新刊は『春よ来い、マジで来い』(双葉社・刊)。