クレジットカードやキャッシュレス決済に関する疑問や悩みを、“クレカの鉄人”岩田昭男師範が一刀両断に解決する連載企画。今回は、この春に登場し、マイラーの間で話題を集める「最上位JALカード」について、岩田師範がじっくり解説します。
目次
【第30回】いま話題の“最上位JALカード”について教えて!
【解説する人】岩田 昭男
クレジットカード分野の取材・研究に30年以上携わるご意見番。『0円から始められる! 最強ポイ活大全』(1870円/イカロス出版)が発売中。
【今月の悩める子羊】舞礼寺 為大(まいれいじ ためひろ)
妻と共働きの37歳。イベント系コンサルティング会社で働いてきたが、昨年独立して個人事務所を立ち上げた。仕事柄、国内出張で飛行機に乗ることが多くそれなりにマイルが貯まっている。よりマイルが貯まりやすいカードはないかと考えていたところ、友人は新規発行の「JAL・JCBカード プラチナ Pro」を推奨。どんなカードか情報を聞くべく道場を訪ねた。
(相談者の要望)
・「JAL・JCBカード プラチナ Pro」について詳しく教えて!
・ほかにマイルが貯まりやすいカードがあれば教えてほしい
・最新のマイル事情が知りたい
年間500万円のカード利用と対象のJAL便に年1回搭乗で8万マイルが貯まるJALカードの最上位が登場!

師範 「JAL・JCBカード プラチナ Pro」について話を聞きたいというのはおぬしか。
舞礼寺 はい。仕事で飛行機を利用することが月に1度はあって、毎年1万マイル程度貯まってるんですが、どうせなら海外旅行の航空チケットをマイルで取れるくらい貯められたらいいなと思いまして。「JAL・JCBカード プラチナ Pro」は年会費は高いけどすごくマイルが貯まるらしいと聞き、師範の解説を伺いにきた次第です。
師範 なるほど。「JAL・JCBカード プラチナ Pro」は年会費7万7000円とかなり高額じゃが、JAL便に年1回乗って年間500万円カード利用すれば毎年8万マイルがもらえる、JALカードのなかでも最上位のカードじゃ。
舞礼寺 なんと! 8万マイル付与は豪華ですが、年会費7万7000円はかなりハードルが高いです!!
師範 そこは「8万マイル付与」をどう見るかで評価が変わるな。例えば、おぬしがマイルと交換したいと言う特典航空券じゃが、JAL国際線の特典航空券獲得に必要な基本マイル数を見ると、日本からホノルルまでの片道ぶんがエコノミークラスで2万マイル、プレミアムエコノミークラスで3万マイル、ビジネスクラスだと4万3000マイルとなる。
舞礼寺 エコノミーとはいえ8万マイルあれば、夫婦の往復チケットが獲得できますね。
師範 これがアメリカのニューヨークやロサンゼルスだとエコノミーで2万7000マイル、プレミアムエコノミーで4万マイル、ビジネスで5万5000マイルが必要。フランス・パリまでの片道ぶんに必要なマイル数は、エコノミーで2万7000マイル、プレミアムエコノミーで4万マイル、ビジネスで5万7000マイルじゃ。ちなみに、最近の東京・大阪・名古屋~ホノルルのエコノミーの往復航空券運賃はJAL便で最安10万円前後、プレミアムエコノミーで最安19万円前後、ビジネスで最安30万円前後。ニューヨークまでの往復チケットは現在エコノミーで25万円前後じゃ。
舞礼寺 特典航空券は座席のクラスが上なほど、また航行距離が長いほどトクになるんですね。
師範 割安なエコノミーのチケットを自腹で購入して、座席をマイルでアップグレードするのも上手なマイル活用法じゃぞ。
舞礼寺 そう考えると、年会費7万7000円を払っても8万マイルの価値は大きいと。ただ、カード払いで年間500万円はちょっと……。
師範 まあ落ち着いて話を聞け。

まず、8万マイル付与の内訳をもう少し詳しく見ると、同カードへの入会・継続ボーナスで毎年8000マイル、毎年初回搭乗ボーナスが2000マイル付与される。また、このカードのマイル還元率は一般JALカードの2倍で、利用額100円ごとに1マイルを還元。500万円のカード払いで5万マイルが貯まる。これに加えて、年間カード利用額500万円以上でもらえるボーナスマイルが2万マイル。
これで合計8万マイル貯まるんじゃが、もうひとつ注目すべきは、年間利用額が300万円以上500万円未満でもボーナスマイルが1万マイル付与されること。年間500万円はいかなくても、300万円使えば、入会・継続ボーナス8000マイル+毎年初回搭乗ボーナス2000マイル+ショッピングマイル3万マイル+年間利用ボーナス1万マイルの合計5万マイルが貯まるわけじゃ。
舞礼寺 おお! 年間300万円なら、妻の家族カードを発行して夫婦で協力すればなんとか実現できそうです。これで5万マイルもらえれば、2年で10万マイル貯まる。夫婦で海外旅行も夢でははりません!
師範 それにおぬし、個人事務所を持っとるなら、仕事の経費をカード払いできるではないか。特に航空チケットをJAL Webサイトで買えば特約店の還元率になるから、100円につき2マイルを還元。さらにアドオンマイルが100円ごとに2マイル付与され、合計100円=4マイルの高還元率になる。往復5万円の航空チケット代で2000マイル貯まるから、このカードを持つだけでおぬしの年間搭乗マイル以上が自動的に増えることになるぞ。
舞礼寺 そう言えば、出張には飛行機代だけでなくホテル代や食事代などの支払いもあり、年間100万円以上かかってます。それをカード払いにして、ほかの経費の支払いもこのカードにまとめれば、なんとか500万円が見えてきそうです。
「JAL・JCBカード プラチナ Pro」にはほかにも「サクララウンジeクーポン」などの特典が多数
師範 そもそもこの「JAL・JCBカード プラチナ Pro」、最上位カードだけあって、ほかにも数々の特典が付いとる。まずはJALが誇る「サクララウンジ」が利用できるeクーポンを進呈。もらえるクーポンは年に1枚で、同伴者が入れないのが残念じゃが、通常は有料での利用(JAL Webサイトからの事前予約が必要)、または国内線ファーストクラスの搭乗者やJGC(JALグローバルクラブ)会員など選ばれた人しか入れないサクララウンジが利用できるのは魅力じゃ。ちなみに国際線のサクララウンジのダイニングでは名物の特製ビーフカレーのほか様々な料理、スイーツがお酒とともに楽しめるぞ。

また、同カードは最上位カードならではのコンシェルジュ・サービスを付帯。国内・海外のレストラン予約や海外でのチケット手配、トラブル対応などを“おまかせ”できる。国際線利用時は空港でJALビジネスクラス・チェックインカウンターを利用でき、待たずにチェックイン可能。海外・国内の旅行傷害保険が最高1億円を補償するなど、万が一の際の補償が手厚いのもうれしい。券面は金属の質感が再現された「METAL SURFACE CARD(メタルサーフェスカード)(※)」を採用。使う喜びをいっそう高めてくれる。
舞礼寺 でも、それって結局金属っぽいプラスチックカードでしょ? どうせならラグジュアリーなメタルカードがよかったな……。
師範 いやいや、メタルカードは確かに高級感満点じゃが、決済端末によっては使えないことがあり、サブでプラスチックカードを持ち歩く必要があるのが面倒。そういうストレスなしに金属の質感を楽しめる「METAL SURFACE CARD」は十分持つ価値があると思うぞ。
※「METAL SURFACE CARD™️」はTOPPANホールディングス株式会社の商標です。
スペックやステイタス性で「JAL・JCBカード プラチナ Pro」と拮抗する「ANA JCBカード プレミアム」
舞礼寺 カード利用額が多いJALマイル派ユーザーに「JAL・JCBカード プラチナ Pro」が有効なのはよくわかりました。一方、ANAマイルに関してはどんなカードがオススメでしょうか?
師範 年会費や特典の豪華さで「JAL・JCBカード プラチナ Pro」と拮抗するのは「ANA JCBカード プレミアム」(年会費7万7000円)じゃろうな。

そもそも、「JALカードにANAのプレミアムカードに相当する上級カードがない」という声を受けて企画されたのが「JAL・JCBカード プラチナ Pro」とも言われていて、年会費は「ANA JCBカード プレミアム」を参考にしたと聞いたことがある。ちなみに、家族カードの年会費もまったく同じ4400円じゃ。
舞礼寺 国際ブランドも同じJCBですもんね。
師範 両カードで違うのはショッピングマイルと搭乗マイルの付与率。「ANA JCBカード プレミアム」は1000円につき通常ポイント(Oki Dokiポイント)が1ポイントとボーナスポイントが1ポイント付く。貯まったOki DokiポイントはANAマイルに交換でき、交換レートは通常ポイントが1ポイントにつき10マイル、ボーナスポイントが1ポイントにつき3マイル(500ポイント以上1ポイント単位)。つまりマイル付与率は通常決済で1.3%相当となる。ちなみに同カードはマイル移行手数料無料で、毎月自動でポイントをマイルに交換する設定も可能じゃ。
舞礼寺 一方「JAL・JCBカード プラチナPro」のマイル付与率はどう考えればいいでしょう?
師範 こちらのカードは、カード利用300万円の場合、ショッピングマイル3万マイルと1万マイルのボーナスを合わせて4万マイルになり、マイル付与率は1.33%になる。また、500万円使えばショッピングマイルが5万マイルとボーナスマイルが2万マイルで合計7万マイルに。マイル付与率は1.4%じゃ。ただ、カード利用額が300万円/500万円を上回るほどマイル付与率は下がっていくのにも要注意。「JAL・JCBカード プラチナPro」に関してマイルで一番トクできるのは、300万円きっかり、あるいは500万円きっかりカード払いした場合じゃ。
一方、搭乗マイルに関しては「ANA JCBカード プレミアム」のほうが有利。同カードに入会すると、ANA系列の便に搭乗する際のマイルに50%ぶんのボーナスマイルが加わる。これに対し、「JAL・JCBカード プラチナ Pro」の搭乗ボーナスマイルは25%ぶんとやや見劣りする印象じゃ。
舞礼寺 私も毎年出張で1万マイル前後貯まっていますが、ここに加わるボーナスマイルが5000マイルと2500マイルでは大違いです。さらに海外旅行の場合は、搭乗マイルが一桁違うぶんボーナスマイルの差も大きいですね。
師範 ここで「ANA JCBカード プレミアム」の特典を確認しておくと、入会・継続特典のボーナスマイルは1万マイル。さらに、ANAカードマイルプラス提携店でANA航空券を本カードで買うと、加盟店特典として100円につき2マイルが貯まる。
舞礼寺 「JAL・JCBカード プラチナ Pro」の入会・継続ボーナスマイルは8000マイル。また、JAL Webサイトで航空券を買う場合は100円につきアドオンマイル2マイルが付与され、合計で4マイルがもらえました。両カードの実力は本当に拮抗してるんですね。
師範 ただし、空港ラウンジに関しては、「ANA JCBカード プレミアム」ユーザーはANAラウンジ、JCB提携ラウンジ、プライオリティパス提携ラウンジを回数制限なしに利用でき、サクララウンジを年1回しか利用できない「JAL・JCBカード プラチナ Pro」よりも利便性が高いと言えそうじゃ。
舞礼寺 出張で飛行機に乗る機会がそれなりに多い私は「ANA JCBカード プレミアム」を選ぶべきか「JAL・JCBカード プラチナ Pro」を選ぶべきか。家に戻ったら去年1年間の飛行機の利用履歴を洗い出して、JALとANAで獲得できたボーナスマイルの比較をしたいと思います。
今後会員ステイタスは飛行機搭乗だけでなく日常のカード利用でも向上させられる時代に!
舞礼寺 それにしても、JALがここにきて年会費7万7000円の高級カードを出そうと思った理由は何なんでしょう。
師範 ワシが関係者への取材中に聞いた話じゃが、コロナ禍が収束しマイル人気が復活しつつあるなか、買い物でもJALのマイレージ会員としてのステイタスが上げられる仕組みを作りたい、という意図があったようじゃ。
舞礼寺 それはいったいどういうことでしょう?
師範 おぬしも知っとるかもしれんが、JALにはJGC(JALグローバルクラブ)という上級会員組織があり、入会すると「JAL・JCBカード プラチナ Pro」の付帯特典以上の様々な優待特典がもらえる。例えば、JGCの最上級の会員はサクララウンジよりも上級の「ファーストクラスラウンジ」(国際線)や「ダイヤモンド・プレミアラウンジ」(国内線)を回数無制限で利用できるんじゃ。ファーストクラスラウンジで寿司職人が目の前で握ってくれる寿司を無料で堪能できるのは有名な話じゃな。ほかにも会員専用の予約デスクが使えたり、満席時にキャンセル待ちの優先予約ができたり、マイル有効期限がなくなったりと、その待遇はまさに“プレミアム”じゃ。
舞礼寺 それに提携ホテルで割引優待が受けられるという話も聞いたことがあります。
師範 こうした上級会員になるためには、当該航空会社系列の便に乗ること、特に搭乗回数を増やすことと長距離のフライトで搭乗マイルを稼ぐのが重要で、熱心なユーザーは福岡-宮崎間など近距離の往復を繰り返したり、東京-石垣島間をトンボ返りなどしている。こうしたいわゆる“マイル修行”はSNSの普及により増加。時期によっては一般の乗客が予約を取りにくくなる事態に繋がった。
舞礼寺 沖縄旅行がしたくてもチケットが取れないなんてことになったら残念です。
師範 そうしたケースに対応するために生まれたのが「JAL Life Status プログラム」。搭乗マイルだけでなくショッピングマイルを貯めることでも上級会員の資格が取れる新システムじゃ。
舞礼寺 具体的にはどのようにマイルが貯まっていくんでしょう?
師範 正確にはマイルではなく「Life Status ポイント(LSP)」が貯まるんじゃが、JAL系の国内線1回搭乗でLSPが5ポイント、国際線では1000区間マイルごとに5ポイント積算される。一方ショッピングでは、JALカード決済で貯まる2000マイルごとにLSPを5ポイント積算。それらを積み重ねて1500ポイント貯めると晴れてJGC(JALグローバルクラブ)への入会が可能に。さらにLSPを貯め続けるとJGC会員のランクがアップし、合計1万2000ポイント獲得で最上級の「JGC Six Star」に到達できる。

舞礼寺 「JAL・JCBカード プラチナ Pro」で年間500万円支払うとショッピングマイルが5万マイル貯まるから、これで貯まるLSPは毎年125ポイント。1500ポイントに到達するのは12年後ですか。1万2000ポイント獲得なんて気の遠くなる話です。
師範 JALカードの特約店を頻繁に使ったり、JAL住宅ローン、JALの資産運用などを利用すれば、より効率よくマイル~LSPを貯められるぞ。ところでLSPが面白いのは、JALマイルと違い、ポイント自体はどんなモノやサービスとも交換できないこと。純粋にJGC会員資格を得るためのツールで有効期限もないため、ポイントは生涯貯まり続ける。上級会員になるための従来型プログラムでも搭乗マイルに応じてポイントが付与されてきたが、その有効期限は1年で、翌年に持ち越しができなかった。その制約ゆえに「マイル修行」が生まれたわけじゃ。日々買い物を続けるだけで着実にポイントが貯まり、いつかはJGC会員になったり会員ランクを上げたりできる「JAL Life Statusプログラム」は、まさに画期的なシステムと言えるな。
- 価格は、特に言及のないものはすべて税込価格。情報はすべて本稿執筆時のものです。
構成/佐伯尚子 文/平島憲一郎