6月17日に発表された新型「日産リーフ」。新型ではハッチバック的なスタイルからクロスオーバー風スタイルに変身し、話題を呼んでいます。まだ日本仕様に関しては販売時期や価格帯などは不明ですが、現状わかっていることをモータージャーナリストの岡本幸一郎氏に解説いただきました。
目次
グローバルで累計70万台以上生産
そもそも2010年12月に誕生した初代「日産リーフ」は、5人乗りの登録車(※普通自動車の意味で、先発の三菱i-MiEVは軽自動車=届出車となる)として世界初の量販BEV(=電気自動車)となった。2017年にモデルチェンジした2代目は、基本骨格を初代からキャリーオーバーしながら、デザインや装備をアップデート。2019年にはバッテリー容量を大幅に増大するなどした「リーフe+」も加わった。

本稿執筆時点で、これまで累計で70万台以上が生産され日本をはじめ北米や欧州で販売されてきた。過去に1件も発火事故を起こしていないというのも、大いに誇れることだ。
そして2025年6月12日に、全面的に刷新された新世代=3代目リーフが世界初公開された。その全面的な刷新内容とは。
「アリア」のコンパクト版のようなデザイン
まずは、「これがリーフ!?」と思わずにいられない容姿が目を引く。過去2世代は内燃エンジン車に慣れ親しんだユーザーが同じように付き合えるようにと、あえてそれっぽいデザインとされていたところ、3代目は一転して「アリア」のコンパクト版のような先進的なクロスオーバースタイルとなった。空力性能にもかなり力を入れていて、Cd値は0.26を達成したという。

基本骨格も刷新され、これまでのクラスの近い内燃エンジン車にも用いられていたBプラットフォームから、アリアと共通のCMF-EVプラットフォームへ。日本仕様のボディサイズは4360×1810×1550mmと、2代目よりも120mmも短くなり、20mm幅広く10mmだけ高くなるが、機械式立体駐車場に対応する車高を維持する。ホイールベースは2690mmと、2代目に比べて10mmだけ短くなる。
前出のアリアは生産の都合による受注の中断や納期の遅れ、急激な値上げなどの事情で販売は伸び悩んでいるが、デザインはかなり好評だ。そのアリアもそれほど大きかったわけではないが、もう少し小さかったらいいのにと思っていた人も少なくなかったようで、3代目リーフはアリアっぽいデザインになる。ご参考まで、ボディサイズはアリアに対して235mm短く、40mm狭く、105mm低い。

車内の居住性も大幅に向上
続いて車内での居心地はどうなのか? CMF-EVプラットフォームの強みで車内の居住性も大幅に向上している。後席の足元はセンタートンネルがなくフラットになるほか、これまでは車内にあった空調ユニットをボンネット下のモータールームに配置。フロントトランクこそないが、前席の足元が広々と開放的になり、プッシュボタン式シフターの採用ともあいまって容易にウォークスルーできるようになる。
頭上には、赤外線(IR)反射コーティングの採用による高い遮熱効果と、電子制御によりガラスの透明度を変えられるようにした調光パノラミックガラスルーフが新たに設定される。

横方向に広げたフローティングデザインとなるインパネには、12.3インチと14.3インチのデュアルスクリーンを統合したモノリススタイルのデザインを採用。メーターの背景デザインには、日本の建築思想である「縁側」を含めた最大5種類が用意され、64色が選べるアンビエント照明も設定される。

最新のインフォテイメントシステムは、Googleビルトイン機能を搭載するほか、ワイヤレスApple CarPlayおよびAndroid Auto、Nissan Connectサービス、車内Wi-Fiが利用可能となっている。10スピーカーや前席ヘッドレスト内蔵スピーカーを搭載し、没入感のあるサウンド体験を実現したというBose Personal Plusプレミアムオーディオも用意。

荷室容量は後席を立てた状態で最大420リットルで、パワーテールゲートも設定されるほか、ルーフレールも選べ、アクセサリーのクロスバーを取り付けることもできる。日産のBEVとして初めて最大1500Wのコンセントが設定されたのもうれしい限りだ。
CMF-EVプラットフォームの採用により、サスペンション形式がフロントがストラット式、リアがビーム式からマルチリンク式となり、ドライバビリティの向上も期待できる。最小回転半径は19インチタイヤの装着車でも5.3mとなかなか小回りが利くのポイント。
3in1のEVパワートレインを採用

次は動力性能について。3代目には、モーター、インバーター、減速機を一体化した3in1のEVパワートレインを採用する。これによりさらなる高出力化と小型化、静粛性を両立する。バッテリーは52.9kWhと75.1kWhという2種類の容量のものが用意され、75kWh仕様は同160kW(214hp)、最大トルク355Nm。52kWh仕様は最高出力130kW(174hp)、最大トルク345Nmを発生。
モーターはこれまでと同じく永久磁石型同期モーターで、コイルには丸線よりも密接して巻くことができる平角線を採用する。気になる航続距離は、空力性能の高い18インチのスチールホイール装着車の場合、実測値に近いといわれる米国EPA基準で、303マイル=約488km、日本や欧州のWLTCモードで600km以上を実現するという。
充電性能については、75kWh仕様で最大150kW級、52kWh仕様でも最大105kWの急速充電に対応する。過去2世代はヒートマネージメントが施されておらず、夏場や高負荷走行時には熱ダレしたり、冬場には充電速度が上がらなかったりして不満を感じていたユーザーが少なくなかったことから、対策が施されているようだ。
アリアのようにバッテリーパックに冷却液を循環させる間接液冷方式を採用するほか、車載充電器から発生する熱を利用してバッテリーを温めたり、バッテリーの熱をエアコンの暖房に活用。それらにより、熱を可能な限り有効活用することで高効率化を図り、クルマ全体の冷熱システムを一括制御するエネルギーマネジメントシステムを新たに採用している。
運転支援機能はプロパイロット1.0および2.0を搭載

カーナビには目的地までのルートから推測される走行負荷を最適化しながらエネルギー効率を高める「ナビリンクバッテリーコンディショニング」という機能が新たに採用された。さらに、「インテリジェントルートプランナー」を使うと、リアルタイムの交通状況やバッテリー残量に応じた最適な充電スポットが案内される。
運転支援機能について、日本向けにはプロパイロット1.0および2.0を用意。さらに、前走車との適切な車間距離を保つべくブレーキを制御する「インテリジェントディスタンスコントロール」や、最新のカメラ技術を用いて目視できない前方の隠れた路面の映像を表示する「インビジブルフードビュー」などの新機能が設定される。
V2L機能については、充電ポートにアダプターを接続することで、日本仕様では最大1500Wの電力供給が可能。もちろんV2H機能についても機器と接続することで家庭へ電力を供給したり、太陽光で発電した電力を車両に蓄電できる。
2025年秋、米国から順次販売
3代目リーフは日本の栃木工場とイギリスのサンダーランド工場で生産され、2025年秋の米国を皮切りに順次、各市場で販売が開始される予定で、価格などの詳細な情報はこれから明らかにされていく。日本での発売を楽しみにして待ちたい。
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