来年の“軽BEV元年”に向けて先手を打ったホンダ「N-ONE e:」の実力をチェック!

ink_pen 2025/12/20
  • X
  • Facebook
  • LINE
来年の“軽BEV元年”に向けて先手を打ったホンダ「N-ONE e:」の実力をチェック!
会田 肇
あいだはじめ
会田 肇

カーライフアドバイザー。カーナビやドライブレコーダーなど身近な車載ITグッズのレポートを行う他、最近はその発展系であるインフォテイメント系の執筆も増えている。海外で開かれるモーターショーや家電ショーにも足を運び、グローバルな視点でのレポートに役立てている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。

軽自動車のフル電動化が急速に進みそうな状況になってきました。中国・BYDが日本専用車として軽電気自動車(BEV)「RACCO(ラッコ)」を2026年中に発売することを正式発表し、これを迎え撃つ日本メーカーも軽自動車のフル電動化を着々と進めているからです。

まさに2026年は“軽BEV戦争”勃発の年になり得るのかもしれません。

そんななか、この分野でいち早く活発な動きを見せているのがホンダです。商用車として「N-VAN e:」を早々に登場させ、さらにガソリン車「N-ONE」をベースとしたBEV「N-ONE e:」を発売。早くもこの分野での先手を打つ動きを見せているのです。

↑「N-ONE e:」上位グレード「L」。市街地での発進加速は驚くほどスムーズで力強かった。

なかでも注目すべきは軽乗用車であるN-ONE e:でしょう。BEVならではのクリーンなイメージを強調する内外装のほか、一充電での航続距離を最高295kmとするなどちょっとしたロングドライブにも対応できる高い実用性を備えているからです。今回は市街地を中心に試乗したN-ONE e:のレポートをお届けします。

N-ONEに対してデザインから違いを出す

N-ONE e:はガソリン車のN-ONEをベースにしているとはいえ、似て非なるまったくの別ものと言うことができます。聞けば、N-ONE e:でメインターゲットとしたのは40代~50代女性(+20代女性)。何気ない毎日に「軽快さ」と「小さな楽しみ」を体験できるクルマ作りを目指したそうです。

そこでN-ONE e:は外観からイメージから手を入れています。まず前後パンパーからしてデザインが違いますし、フロントグリルもBEVらしいフラットな形状でありつつ、その素材にはバンパーリサイクル材を使用。また、充電ポートの位置を適切にするため、ボンネットをかさ上げして水平基調としているのも外観上の大きな違いとなっています。なので、全体としてN-ONEよりもカクカクとした印象を受けます。

↑N-ONE e:の外観。充電がしやすいようポート位置を上げたため、N-ONEよりもノーズは高くなっている。
↑N-ONEとはナンバープレートの位置が変更され、それにともなってリアビューのデザインも変更に。
↑フロントグリルにはバンパーのリサイクル素材を使用。「L」グレードには急速充電ポートがプラスされる。

水平基調となってモダンさを伝えるBEVならではのインテリア

インテリアもN-ONE e:ならではの、プレーンで無駄のないエコイメージを感じさせるものに変更されました。N-ONEではどちらかと言えばレトロっぽさを感じさせるものでしたが、N-ONE e:ではダッシュボードそのものが水平基調となってモダンさを感じられるデザインとなったのです。

メーターをN-ONEのアナログ2眼式から7インチTFT液晶ディスプレイとしたことや、ステアリングを3本スポーク型からヨコイチの2本スポークとしたことも、そういう印象を抱く一因なのかもしれません。

↑上位グレード「L」のインテリア。水平基調のプレーンなデザインで、ステアリングも2本スポークとなっている。
↑「L」に標準装備されるインフォテイメントシステムにはナビ機能も含まれる。

シートも大きく変わりました。フロントシートはヘッドレストが固定式の一体型となり、座面もやや幅広でクッションもコシのある硬めな造り込みとなっています。これなら長時間の運転でも疲れが出にくいかもしれません。

また、乗車位置はそのままにステアリングを37mmドライバーに近づけたということで、チルト機能で高さを合わせるだけで自然なドラポジを取ることができるようになりました。小柄な女性でもラクな姿勢で運転できるのではないでしょうか。

↑シートはヘッドレストと一体型となり、デザインもプレーンな印象。

一方で、リアシートはN-ONEの使い勝手の良さがそのまま継承されました。バックシートを前倒しすると座面がそのまま沈み込むので、ほぼフラットに近いカーゴ空間が生まれます。広さもN-ONEと同レベルが確保されているということです。また、座面を跳ね上げて使うチップアップ機構も踏襲され、背が高い荷物を積むときには重宝すること間違いなし。

↑後席の座面のクッションを柔らかくしてヘッドクリアランスを確保した。
↑リアシートは座面も沈み込むため、背もたれを倒すとフラットなカーゴルームができあがる。
↑座面を上方に折りたためば、高さのある荷物を積み込むことも。

一方でバッテリーをフロア下に収めたことで、その分だけフロア面は高くなってしまいましたが、車高は1545mmのまま。ヘッドクリアランスを確保するためにシートの沈み込みを大きくしています。

アクセルを軽く踏むだけでスムーズに加速。きつめのコーナリングでも不安なし!

ここからはN-ONE e:の走りを試してみます。ガソリン車と違い、スタート時からトルクがフルに出せるのがBEVならではのポイント。それはN-ONE e:でも同じで、たとえドライブモードをパワーが控えめな「ECON」を選んだとしても、アクセルを軽く踏むだけでスムーズに加速してくれるのです。

BEVらしい力強さはないのかと言えばそうでもなく、少し強めにアクセルを踏めばタイヤがきしむほどの強い加速を発揮します。これはガソリン車では味わえない体験でしょう。

↑軽自動車とは思えないスムーズな加速と力強さを発揮するN-ONE e:。

首都高速に入ってからも、力強くスムーズな加速力は何ら変わることはありません。低重心から生まれる安定感も抜群で、首都高のきつめのコーナリングでも不安を感じることなく通過できました。

サスペンションもしっとりとした乗り心地を提供し、特に路面の継ぎ目を巧みにいなすあたりは上質ささえ感じさせるほど。高速域でのロードノイズもしっかりと抑えられ、その静粛性は軽自動車のレベルを超えるものだったと言えます。

↑フロントに搭載される駆動用モーターは最高出力64PS、最大トルク162N・mを発生。駆動用バッテリーの容量は29.6kWh。

そして、何よりも感心したのが車体の取り回しの良さ。試乗コースとしてフェリス女学院から港の見える丘公園付近を走行したのですが、このあたりの道路は道幅が狭く坂道も多いエリア。つまり、この場所でのメリットが体感できるよう試乗コースとして設定されていたのは明白です。

その思惑通り、N-ONE e:は視界の良さと小回りが利くハンドリングにより、想像以上にスムーズに走り抜けることできたのです。

下り坂でも楽々運転できる「シングルペダルコントロール」

特に重宝したのが「シングルペダルコントロール」です。スイッチはソフトチェンジボタンの横にあり、このボタンを押すだけで回生ブレーキが強めに働くようになり、一般的な下り坂ならほとんどブレーキペダルを踏むことなく減速してくれるのです。

しかも、この機能は最近では珍しく停止に至るまで作動するタイプとなっています。これには異論もあると思いますが、予想よりも手前に停止した際は少し踏み増せばいいだけなので、個人的には特に違和感を覚えることはありませんでした。

↑シフトはほかのハイブリッド車と同様のボタン式へと変更されている。その右にシングルペダルコントロールがある。

そして、もうひとつN-ONE e:には、車内のセンターディスプレイを非搭載として徹底的にシンプル仕様化したグレード「G」が用意されています。カーナビにはスマートフォンを使い、音楽やラジオもBluetooth接続により楽しむことを前提としているのが最大のポイントです。

ホンダによれば、スマートフォンの使用を前提としてドライブする人が着実に増えており、そういったユーザー層向けにこのグレードを用意したとのことでした。

↑N-ONE e:下位グレード「G」。パワートレーンやバッテリー容量は「L」と同じ。
↑N-ONE e:下位グレード「G」のインテリア。センターディスプレイがない。

ただし、この「G」には注意すべき点があります。試乗した「L」には急速充電ポートが用意されていましたが、下位グレードの「G」は普通充電のみの対応となるのです。正直この割り切りにはビックリ! 装備がシンプルな下位グレードでも、BEVである以上、急速充電ポートは必須であると考えていたからです。

日常使いが主であったとしても、いざというときにスピーディーな充電ができないことにもなります。実際の販売比率でも上位グレードの「L」を選ぶ人が多いとのこと。ここをきちんと把握したうえで最適なグレードを選んでほしいと思います。

↑N-ONE e:上位グレード「L」の充電ポート。右がCHAdeMO対応急速充電ポート、左が普通充電ポート。
↑オプションの「AC外部給電器(Honda Power Supply Connector)」。AC100V/最大1500W対応。29,700円(税込)。
↑充電ケーブル搭載タイプの「普通充電器(6kW)」。単相200Vを利用して、EVに充電する。222,000円(税込)。
↑「充電インジケーター 」。4段階のLEDランプ表示で車外からでもバッテリーの残量が確認できる。31,900円(税込)。
↑「無限」のオプション装着車。

【フォトギャラリー】(画像をタップすると閲覧できます)

撮影/宮越孝政

Related Articles

関連記事

もっと知りたい!に応える記事
Special Tie-up

注目記事

作り手のモノ語りをGetNavi流で