Vol.158-2
本連載では、ジャーナリスト・西田宗千佳氏がデジタル業界の最新動向をレポートする。今回は2026年のCESで発表されたソニー・ホンダモビリティが手掛けるEV(電気自動車)「AFEELA(アフィーラ)」の話題。これまでのEVと異なる点と課題は何か。
今月の注目アイテム
ソニー・ホンダモビリティ
AFEELA 1(アフィーラ ワン)
8万9900ドル~(約1400万円※)
※1ドル=約154.7円で換算(2026年1月30日現在)

これからの自動車では「ソフトウェアが重要になる」と言われて久しい。
EV(電気自動車)になると、動力はモーター。消費電力の最適化でも、快適な乗り心地のうえでも、制御は重要な要素だ。また、自動運転とまでは言わなくとも、ブレーキの補助など、安心・安全に関わる領域でも、ソフトによる制御は必須だ。
ただし、ここで誤解が多いのだが、ソフトの制御が重要という意味では、既存のガソリンエンジン車も変わらない。いわゆるハイブリッド車はもちろんだが、そうでない自動車であっても、大量のコンピューターが車内でさまざまな部分を制御しており、自動車メーカーにおける半導体とそこで動作するソフトの価値は非常に高い。
コロナ禍で自動車の供給が滞ったことがあるが、あれは“自動車で使う半導体が不足した”ことが原因だ。九州・熊本に、TSMCと日本企業が合弁で「JASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)」という半導体製造工場が2024年に稼働した。ここでは現状、スマホやPCで使うような最先端半導体は作っておらず、自動車やイメージセンサーに使う「少し古い技術の半導体」を主に製造している。それらの半導体が不足すると、日本の基幹産業である自動車やカメラに大きな影響が出るからだ。
自動車とソフトは、もう30年も前から切っても切り離せない存在になっていた。だが、利用者がソフトのことを意識する場面は少なかった。あくまで“自動車のなかに組み込まれていて、書き換えられることは少ない存在”であり、意識することは稀だった。
だがEVが増えてきて、自動車に搭載される安心・安全系機能も重要になってくると、自動車のソフトが定期的に書き換えられていく必要が出てくる。
その流れをうまく生かしたのがテスラだ。スマホがOSアップデートで機能アップしていくように、自動車でもアップデートで機能アップさせることで、「これまでの自動車」とは異なることをアピールした。現在は、アップデートや機能追加自体をビジネスモデルに取り込んだ。FSD(Full Self-Driving)と呼ばれる自動運転機能をサブスクで料金を徴収するモデルで提供しているのだ。こうすることで、自動車からの収益源を多角化し、ソフト開発にかかるコストを吸収することを目指している。
日本メーカーも、開発スピードの面でも米国・中国などとの競争が激化しており、自動車の中でのソフト開発負荷が高まっている。開発環境は既存の仕組みから離れ、よりスマホやPC、クラウドで使われている技術に近い方法論へと移りつつある。テスラや新興の中国系自動車メーカーはすでにそうした手法を採用しているが、日本の自動車メーカーは2027年から2030年頃に、そうした“新しいソフト基盤の自動車”が増えてくる段階にいる。
ソニー・ホンダモビリティの「AFEELA」は、旧来の自動車を引きずっていないので、他の日本メーカーよりは先に新しいソフト基盤の自動車として世に出ることになる。
では、そこでどういう部分が変わるのか? それは次回解説したい。
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