プレーする様子をビデオで撮影しフォームを確認することは、あらゆるスポーツ競技で行われています。より緻密なデータの解析となると専用の特殊カメラやそれを解析する特別な装置などが必要ですが、それは少し大変です。でも、それが変わるかもしれません。ウェアを着てボールを投げるだけで、投球フォームを解析するという特別なシャツをアシックスが開発したことが11月に発表されました。
これまで野球の投球フォームの解析を行うには、特殊なカメラなどの設備が必要で、しかもどれも高価で計測環境にも制限がありました。それを「ウェアを着て投げるだけ」と簡素化してしまったのが、アシックスとXenomaが共同開発した「投球動作解析e-skinシャツ」です。
このシャツには、身体の動きを計測するモーションセンサーと、肘などの関節部位の動きを計測するストレッチセンサーが搭載され、各関節角度や角速度のデータを計測します。またアシックスには、シューズやウェア、スポーツ用具などから人の運動時の動きまで、さまざまな研究を行っている「アシックススポーツ工学研究所」があり、そこで蓄積してきた動作時の皮膚のひずみなどに関するデータをこのシャツにも活用して、フォームの細かい動作まで評価するウェアを実現しました。フォームを見ただけでは判別しにくい、細かな投球動作の特徴を即時に抽出して、評価することができるのです。
また着心地の良さや、洗濯耐久性があるという点も、現場で長く広く使われるためには魅力的に感じられる特徴になるでしょう。
スマートな野球ボールも
アシックスでは、投手の投球パフォーマンスを把握できる、センサー内蔵型の投球測定用ボール「PITCH ID」を2018年5月に発表しています。これは、加速度センサー、ジャイロセンサー、地磁気センサーの3つのセンサーが内蔵され、球速や回転数、回転軸の情報を約10秒で把握できるというボール。球速については初速や終速、平均速度がわかり、投手がボールをリリースする位置や、ボールがホームベース上で到達する位置なども表示されます。ボールの大きさと重量は硬式ボールとまったく同じで、しかも同じ製法で作られているため、従来のボールとほとんど違和感を感じることなく投球することができるのです。
今回発表された投球動作を解析するシャツと、投球パフォーマンスがわかる野球ボールを組み合わせて使えば、投手のフォームとパフォーマンスの改善に大いに役立てられると期待されます。アシックススポーツ工学研究所のほか、小学生からプロ野球選手まで5000名以上に利用されているプログラム「アシックスベースボールラボ」でも野球ボールは昨年から導入されており、シャツのほうは2020年から導入される予定です。