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2020/3/31 18:30

自分だけのハイライト番組が当たり前に! ドイツから見える近未来の「サッカー観戦スタイル」

日本でも「5G(第5世代移動通信システム)」サービスがスタートしましたが、通信テクノロジーを用いたスポーツ体験の発展はドイツでも進行中。ドイツのトップリーグであるブンデスリーガでは、最先端技術を使ってファン一人ひとりにカスタマイズした情報を提供する取り組みが始まっています。将来のサッカー観戦スタイルはどうなるのでしょうか? ドイツの取り組みを見てみましょう。

↑スマホがサッカー観戦をもっと面白くする

 

ドイツ在住の筆者の周りで5Gスマートフォンを使う人はまだ全然見られませんが、スポーツスタジアムに関するビジネス情報を伝えるThe Stadium Business は、ドイツのサッカー界は2020年中に、国内のサッカースタジアムで5Gを利用できるような設備投資を行なうと報じています。4Gサービスと比べて、5Gの通信速度はおよそ20倍速くなるとされていますが、スタジアムで5Gが使えると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

 

Sports Pro紙によれば、目の前で走り回っている選手にスマートフォンの画面を向け軽く指でタップするだけで、その選手の情報を即時に収集できるとのこと。走っている速度や走行距離などの情報が、試合を見ながらスマートフォン画面でほぼリアルタイムで確認できるようになるのです。また、ハーフタイムにトイレや売店の前で並んでいるときに見逃した場面も、動画ですぐ観ることができるようになるでしょう。

 

その一方で、スタジアムのセキュリティーシステムを改善する取り組みもあります。通常は来場客に対し、バッグやポケットにナイフや銃などの危険物を保持していないかどうか持ち物検査を実施します。しかし、これはなかなか煩わしいもの。そこでクラブは、このような手間を省いて来場者がより早く席に着けるように、「HEXWAVE(ヘックスウエーブ)」の導入を検討中だそうです。

 

ヘックスウエーブとは、レーダーを使用して、来場客が危険物を持っていないかどうかをバーチャル上で随時確認するAI機器のこと。ドイツメディアの Deutsche Welleによると、強豪バイエルン・ミュンヘンは、欧州で初めてヘックスウエーブを試験利用することになったそう。ただし、このAI機器が従来のセキュリティーチェックと比べて、どれくらい速く的確に危険物を発見してくれるのかどうかは、まだ公表されていません。

 

若者がインターネット上で取る行動に合わせる動きもあります。インターネットで試合を観戦するとき、若年層のネットユーザーは自分が見たい場面や情報だけをピンポイントで確認する傾向にあり、試合全部を見るわけではありません。そこで、ブンデスリーガは各ユーザーの好みや情報入手行動に合わせてコンテンツを編集できるように、Amazon Web Service(AWS)と提携したと今年1月に発表しました。このなかでAWSはAIを使って試合中の観客体験を向上させる模様ですが、AWSの導入はファンが近い将来、自分だけのハイライト番組を見ることができるということも意味するでしょう。

↑すごいプレーはやっぱりスタジアムで見たいわ……

 

最先端テクノロジーを積極的に導入しているドイツサッカー。これらの取り組みがうまく行けば、観客体験は向上し、スタジアムであれ、スマホであれ、試合観戦はもっと面白くなりそうですね。しかし、もう少し広い視点から見れば、ドイツ経済の停滞により、サッカーファンのなかには経済事情が苦しくなる人も出てくるかもしれません。そうなった場合、彼らはテクノロジーを活用した最先端スタジアムにお金を払ってでも行きたいと思うのでしょうか? ファン――特に若い世代――のクラブに対する忠誠心を高めるという視点からテクノロジーの使い方を考えることも、クラブの経営者にとっては大切かもしれません。