ギョーカイ“猛者”大田原 透が、走って、試して、書き尽くす! ランニグシューズ戦線異状なし
2023「プーマ」冬の陣②ディヴィエイト ニトロ 2の巻
ランニングシューズブランド自慢の逸品を、走って、試して、書き尽くす本企画。今回は、北米のランニングカルチャーの拠点ボストンで開発された、プーマのランニングにおける世界戦略シューズ「DEVIATE NITRO 2(ディヴィエイト ニトロ 2)」である。
「プーマがお薦めするシューズは『ディヴィエイト ニトロ 2』。“誰でも履けるみんなの厚底”というコンセプトのシューズです」
と語るのは、プーマのランニングの商品企画担当・安藤悠哉さん。見るからに“速そう”な雰囲気の安藤さん。それもそのはず、青山学院大学駅伝部の元主将という“ホンモノ”のランナーだ。前回の萩尾社長も含め、ランニングに対するプーマの意気込みが伝わってくる布陣なのである。
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ビギナーでも履ける、カーボン入りシューズを開発
ディヴィエイト ニトロ 2は、見た目は流行の厚底シューズ。しかも、トップランナーが使うようなカーボンのプレートが入っている。この連載企画は、あくまで、普通の人が快適に走れるシューズが対象。ちょっと不安である……。
「カーボンプレート入りのシューズは、トップランナー向けと思われがちです。しかし、ディヴィエイト ニトロ 2は、トップランナーのトレーニング用として、ビギナーの方にも、普段から履いてもらえるシューズとして開発されました」(安藤さん)
カーボンプレートの特徴は、カーボンの硬さによる反発性だ。そのため、ひとつ間違うと怪我のリスクを高める可能性が付きまとう。それが、走る筋肉を鍛え上げたランナーのシューズを対象に、カーボンが採用されている理由でもある。ディヴィエイト ニトロ 2が、カーボンプレートを搭載しつつ、ランニングのビギナーにも履けるシューズになっている秘密は、ミッドソールにあると安藤さんは語る。
ミッドソールは、驚くほど軟らかい!
「ディヴィエイト ニトロ 2のミッドソールには、高い反発性とクッション性を持つ、2種類のフォーム材を採用しています。ひとつは、かかとから前足部にかけての『ニトロ フォーム』。もうひとつは、前足部を中心に入れている、さらに軽量で高反発な『ニトロ エリート フォーム』です。ニトロ エリート フォームには、『陸上競技のスパイクにも使用されている高反発な特殊素材』も注入されています」(安藤さん)
実際に触れてみると、前足部の「ニトロ エリート フォーム」は驚くほど軟らかい。プーマは、独自のフォーム材の素材は企業秘密ということだが、一般的なクッション材であるEVA素材にはない驚異的な軽さと軟らかさがある。
“誰でも履けるみんなの厚底”
「2層構造により、かかとから前足部にかけてのニトロフォームで着地の安定性を保ち、前足部のニトロ エリート フォームによって軟らかさと高反発性を実現しています。この構造によって、ディヴィエイト ニトロ 2は、カーボンプレートを搭載しながら、ビギナーでも走れるシューズになりました」(安藤さん)
ディヴィエイト ニトロ 2は、前足部からかかとにかけて曲率(いわゆるロッカー構造)が比較的にフラットだ。ロッカーが大きい、ゆりかごの形状だと、転がるように進む。確かにスピードが出るのだが、これまた怪我のリスクを高める可能性がある。
「いわゆる“シューズに走らされる”ことがない設計です。前足部にあるロッカーも、フォーム自体が軟らかく沈み込むため、見た目ほど大きくありません。自分の感覚でしっかりと地面を踏んで、でもプレートの推進力を感じてもらえるので、 “誰でも履けるみんなの厚底”なのです」(安藤さん)
「カーボン入りシューズの敷居を下げる」
そもそも、ディヴィエイト ニトロ 2にカーボンプレートを入れた意図は、何なのだろう? 軟らかなミッドソールのフォーム材とカーボンプレートは相反する組み合わせなので、大いに気になる。
「シンプルに“速さを味わっていただきたい”という理由です。初代の「ディヴィエイト ニトロ」は、2021年SS(春夏)に登場しました。まさに、各社のプレートシューズが一斉にローンチされたタイミングです。プーマは、カーボンプレート入りのシューズの敷居を下げる、というコンセプトを2代目のディヴィエイト ニトロ 2にも継承しています。このシューズで使用されているカーボンプレートは、フルサイズながら、ハードになり過ぎないナチュラルな成型を施しています」(安藤さん)
前回ご登場いただいた萩尾社長の話でも、「ディヴィエイト ニトロ 2は、着地のファーストインパクトは軟らかだけれど、カーボンが弾いてくれるので良く進む」と評価していた。これは、試さずにはおれないぞ!
プーマのグローバル75周年を祝ったデザインのディヴィエイト ニトロ 2ブラックカラーモデルには、アニバーサリーのインソールが入り、2023年4月より展開予定。75周年モデルは、ディヴィエイト ニトロ 2の他にも、レーシングモデル、サッカー、ランニングアパレルでも予定している。
いよいよ、ディヴィエイト ニトロ 2を試走!
開発の話をたっぷり聞いたところで、ディヴィエイト ニトロ 2の試走スタート! まずは、シューズに足を入れた感覚およびウォーキングのインプレを行った。そして、初心者も含め、多くの方々がランニングシューズを履く、3つの理由に合ったペースで実際にフィールドを走ってみた。
最初は、「運動不足解消」が目的、1㎞を約7分で走る(=キロ7分)の~んびりペース。続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分で走る(=キロ6分)ゆっくりペース。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)「スカッとラン」。ディヴィエイト ニトロ 2、どこまで走れるのか、とくとご覧あれ!
【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感&ウォーキング)】
足入れは、軟っ♡ 今までに履いたどのシューズでも得たことのない感覚。私の足は、昔気質の登山靴などの硬~い靴に慣れてきたので、最新技術を投入したミッドソールによる足入れの軟らかさには、正直、舌を巻かざるを得ない。軟いけれど跳ねる、という矛盾する機能を持つ野心的なシューズだけに、なるほど驚くほど軟らかだ。
ウォーキングでも、シューズの感覚を確かめる。トゥ(つま先)の反り返りはキツくなく、安定している。厚底シューズの多くが、かかととつま先とが弧を描くロッカー構造を採用している。理由は、ミッドソールのクッション性が高すぎると、推進力が得られないため、ロッカー構造で転がるように進むからだ。しかし、ディヴィエイト ニトロ 2には、カーボンソールが採用されている。推進力をロッカー構造に頼る必要がない、ということだろう。
【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】
運動不足の解消のペースは、ゆ~っくりが基本。景色を楽しんだり、気になるガーデニングショップに寄り道したりなど、運動習慣を楽しく身に付けたい。ディヴィエイト ニトロ 2は、着地の軟らかさに反して、バネがある。実際に走っても、着地時のフォームの沈み込みと連動して、カーボンプレートの反発性が発揮されているように感じる。転がらない安心感、しっかり地面をつかむ安定感があるのだ。シューズの重量は片足262g(27㎝)と若干重めだが、気になるほどではない。
【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】
走る運動習慣が付けば、カラダをシュッと絞るべく、週2回以上のランニングを心掛けたい。ディヴィエイト ニトロ 2のミッドソールには、クッション性の高さと反発性を併せ持つ軽量のニトロ エリート フォームが搭載されている。ニトロ エリート フォームは、低速では軟らかく、高速では反発性を発揮する。少しスピードを上げると、ミッドソールのパフォーマンスを体感できる。軟らかさはあるが、沈む感じはなくなる。カーボンプレートと共に、カラダが前に進むのだ。
距離を踏むと、普段のランニングではない筋肉の使い方を感じる。理由は、やはりカーボンプレートの存在だろう。データを取った訳ではないが、蹴り出しの位置が、他のシューズよりも手前(中足部)にある印象だ。土踏まずのアーチや母指球から強いバネで押し出される感じ。なお、私はファンラン志向の昭和のヒールストライカー(かかと着地)なので、カーボンのバネをより強く感じたのかもしれない(前足部=フォアフットで着地する方は、異なる感覚を得るはず)。
今回のインプレでは違和感はなかったが、毎日10㎞以上走る頻度の高いトレーニングを積むのであれば、今どきのカーボンソールを履きこなすべく、フォアフットでの着地にフォーム矯正をするか、時間をかけてシューズを慣らした方が賢明だろう。マイルドな乗り味ではあるが、カーボンはカーボン。速さと硬さという諸刃を持つという特性を、忘れてはならない。
【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】
荒川(東京)の河川敷で行われた記録会でも、ディヴィエイト ニトロ 2を履いてみた。10㎞を4分40秒のペースで走る。ひゅ~、脚が残っている感覚♡。もっとペースを上げたくなるほどだ。なるほどカーボンソールは、しっかり走りをアシストしてくれている。一歩のストライドが大きく感じるし、10㎞走り終えても、まだ脚が残っている感覚だ。まだまだ速く走れそう。
しかしながら、このスピード感に、私の心肺機能や筋や腱が追いつくかは、全く別の問題。カーボンのバネに私の足が慣れていないため、アーチと足首回りに今までにない刺激を感じた。ハーフマラソン(21㎞強)で試すのは、もう少し普段のトレーニングでディヴィエイト ニトロ 2を履きこんでからだ。それにしても、ディヴィエイト ニトロ 2のカーボンプレートの速さの魅力は捨てがたい。
撮影/中田 悟
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