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2023/1/27 11:30

プーマ「ディヴィエイト ニトロ 2」、“軟いけれど跳ねる”大胆不敵な野心作!/「大田原透のランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”大田原 透が、走って、試して、書き尽くす! ランニグシューズ戦線異状なし

2023「プーマ」冬の陣②ディヴィエイト ニトロ 2の

 

ランニングシューズブランド自慢の逸品を、走って、試して、書き尽くす本企画。今回は、北米のランニングカルチャーの拠点ボストンで開発された、プーマのランニングにおける世界戦略シューズ「DEVIATE NITRO 2(ディヴィエイト ニトロ 2)」である。

↑「ディヴィエイト ニトロ 2」 1万9800円(税込)。カーボンプレートを搭載し、“誰でも履けるみんなの厚底”を掲げる、プーマランニングのスタンダードモデルのひとつ。写真の2023SSカラーは、2月21日発売

 

「プーマがお薦めするシューズは『ディヴィエイト ニトロ 2』。“誰でも履けるみんなの厚底”というコンセプトのシューズです」

 

と語るのは、プーマのランニングの商品企画担当・安藤悠哉さん。見るからに“速そう”な雰囲気の安藤さん。それもそのはず、青山学院大学駅伝部の元主将という“ホンモノ”のランナーだ。前回の萩尾社長も含め、ランニングに対するプーマの意気込みが伝わってくる布陣なのである。

↑安藤悠哉さん/プーマ ジャパン株式会社マーチャンダイザー。箱根の10区を走り青山学院大学3連覇・大学駅伝3冠のゴールテープを切った、陸上競技部の元主将

 

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ビギナーでも履ける、カーボン入りシューズを開発

ディヴィエイト ニトロ 2は、見た目は流行の厚底シューズ。しかも、トップランナーが使うようなカーボンのプレートが入っている。この連載企画は、あくまで、普通の人が快適に走れるシューズが対象。ちょっと不安である……。

 

「カーボンプレート入りのシューズは、トップランナー向けと思われがちです。しかし、ディヴィエイト ニトロ 2は、トップランナーのトレーニング用として、ビギナーの方にも、普段から履いてもらえるシューズとして開発されました」(安藤さん)

↑シューズ中央の凹み奥にチラリと見えるのが、カーボンの「パワープレート」。中足部だけでなく、足裏全面に入っている。また、アウトソールには「プーマ グリップ LT」と呼ばれる、グリップ力が強く、かつ削りにくく耐久性に優れる素材が使用されている

 

カーボンプレートの特徴は、カーボンの硬さによる反発性だ。そのため、ひとつ間違うと怪我のリスクを高める可能性が付きまとう。それが、走る筋肉を鍛え上げたランナーのシューズを対象に、カーボンが採用されている理由でもある。ディヴィエイト ニトロ 2が、カーボンプレートを搭載しつつ、ランニングのビギナーにも履けるシューズになっている秘密は、ミッドソールにあると安藤さんは語る。

 

ミッドソールは、驚くほど軟らかい!

「ディヴィエイト ニトロ 2のミッドソールには、高い反発性とクッション性を持つ、2種類のフォーム材を採用しています。ひとつは、かかとから前足部にかけての『ニトロ フォーム』。もうひとつは、前足部を中心に入れている、さらに軽量で高反発な『ニトロ エリート フォーム』です。ニトロ エリート フォームには、『陸上競技のスパイクにも使用されている高反発な特殊素材』も注入されています」(安藤さん)

 

実際に触れてみると、前足部の「ニトロ エリート フォーム」は驚くほど軟らかい。プーマは、独自のフォーム材の素材は企業秘密ということだが、一般的なクッション材であるEVA素材にはない驚異的な軽さと軟らかさがある。

↑ミッドソールのホワイト部分が、ニトロ フォーム。グリーンがニトロ エリート フォームだ。プーマは、早くからミッドソールの現在の流れのひとつである、エラストマー系素材に注目し、製品化してきた。エラストマー系素材は、軽量で高反発、温度や湿度などの環境に左右されにくく、劣化もしにくい(しかしコストが高い!)。プーマのニトロ フォームとニトロ エリート フォームは、エラストマー系素材と考えるのが自然だろう

 

“誰でも履けるみんなの厚底”

「2層構造により、かかとから前足部にかけてのニトロフォームで着地の安定性を保ち、前足部のニトロ エリート フォームによって軟らかさと高反発性を実現しています。この構造によって、ディヴィエイト ニトロ 2は、カーボンプレートを搭載しながら、ビギナーでも走れるシューズになりました」(安藤さん)

 

ディヴィエイト ニトロ 2は、前足部からかかとにかけて曲率(いわゆるロッカー構造)が比較的にフラットだ。ロッカーが大きい、ゆりかごの形状だと、転がるように進む。確かにスピードが出るのだが、これまた怪我のリスクを高める可能性がある。

 

「いわゆる“シューズに走らされる”ことがない設計です。前足部にあるロッカーも、フォーム自体が軟らかく沈み込むため、見た目ほど大きくありません。自分の感覚でしっかりと地面を踏んで、でもプレートの推進力を感じてもらえるので、 “誰でも履けるみんなの厚底”なのです」(安藤さん)

↑初代「ディヴィエイト ニトロ」から大きく変わったのは、かかと部分。軽量化を求めて、レーシングに近い肉薄タイプを、肉厚タイプに変更。しっかりとホールドさせたという

 

「カーボン入りシューズの敷居を下げる」

そもそも、ディヴィエイト ニトロ 2にカーボンプレートを入れた意図は、何なのだろう? 軟らかなミッドソールのフォーム材とカーボンプレートは相反する組み合わせなので、大いに気になる。

 

「シンプルに“速さを味わっていただきたい”という理由です。初代の「ディヴィエイト ニトロ」は、2021年SS(春夏)に登場しました。まさに、各社のプレートシューズが一斉にローンチされたタイミングです。プーマは、カーボンプレート入りのシューズの敷居を下げる、というコンセプトを2代目のディヴィエイト ニトロ 2にも継承しています。このシューズで使用されているカーボンプレートは、フルサイズながら、ハードになり過ぎないナチュラルな成型を施しています」(安藤さん)

 

前回ご登場いただいた萩尾社長の話でも、「ディヴィエイト ニトロ 2は、着地のファーストインパクトは軟らかだけれど、カーボンが弾いてくれるので良く進む」と評価していた。これは、試さずにはおれないぞ!

 

プーマのグローバル75周年を祝ったデザインのディヴィエイト ニトロ 2ブラックカラーモデルには、アニバーサリーのインソールが入り、2023年4月より展開予定。75周年モデルは、ディヴィエイト ニトロ 2の他にも、レーシングモデル、サッカー、ランニングアパレルでも予定している。

 

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