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2023/4/22 11:30

アンダーアーマーが誇る、最新鋭のインテリ“アメ車”登場!/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! 「ランニングシューズ戦線異状なし」

2023「アンダーアーマー」春の陣②「UAホバー マキナ3」の巻(前編)

 

アメリカ・ボルチモアに本拠を置くアンダーアーマー(以下、UA)。コンプレッションウェアというジャンルを新たに“開拓”し、創業30年を経ずして誰もが知るブランドとして怒涛の進撃を続けている。そのUAは、かねてよりアメリカンフットボールや野球、サッカーなどの競技用のスパイクをはじめ、汎用性の高いトレーニングシューズも開発している。

 

この春にUAが発表した、ハイエンド向けの厚底カーボンシューズは、ギョーカイに大きなインパクトを与えた。陸上競技の大本丸のひとつである、マラソンをはじめとする長距離の領域に、UAは本気のシューズを投入したのだ。

 

前回は、最新鋭のエリート向け厚底カーボンソールシューズによる、UAの世界戦略について取材を試みたが、今回からは、私たちに身近なランニングシューズの話へ移る。語っていただくのは、日本のアンダーアーマーでシューズ担当の松原恵治さんだ。

↑今回お話を伺った、アンダーアーマーのシューズを担当する松原恵治さん(ドーム マーチャンダイジング フットウェア プロフェッショナル)。新装となった「UNDER ARMOUR BRAND HOUSE 新宿」内のイベントスペースにて

 

「私たちUAが、今回『GetNavi web』読者の皆さんにお勧めするランニングシューズは2足あります。ひとつは、クッショニング系の最高峰モデルである『UAホバー マキナ3』。もう一足が、スピード系の『UAフロー ベロシティ ウインド2』というモデルです」(松原さん)

 

ご存じのように本連載では、各社の最新の話題とともに、私たち一般人にお薦めのエントリー向けと、普段のジョギングからレースにも使えるモデルの2足を推薦してもらっている。商品担当者に詳しい機能を聞いた上で、筆者が実際に2足を履いて走り、目的に応じて性能をチェックするのだ。

 

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UAクッション系の最高峰モデル

ということで、まずはクッション系の最高峰モデルUAホバー マキナ3(以下、マキナ3)について。そもそもマキナは、UAのフラッグシップとして、軽量で反発性もクッション性もある、“機能てんこ盛り”シューズとして開発された。

↑2022年5月から登場している「UAホバー マキナ3(HOVR MACHINA 3)」1万7600円(税込)。サイズ展開:メンズ25.0~30.0㎝、ウィメンズ22.5~26.0㎝。カラー展開:メンズ3色、ウィメンズ2色

 

「マキナは機械を意味します。足を、機械的に、楽に運んでくれる、クルマで例えると、オートマ車のように快適なシューズです。対するウィンドは、ドライブする感覚を楽しむ、まさにマニュアル車のようなシューズです。

 

マキナ3も、もちろんクッション性の高さが最大の特徴です。前モデルから大きく変えたのは、ミッドソールのホバー素材を2層にした点です。踵から着地した際、着地の衝撃を軟らかめに配合されたホバーフォームが受け止め、前足へ荷重されると、硬めに配合されたホバーフォームがスムーズに足を前に押し出します」(松原さん)

↑分厚い顔だが、オフセット(シューズ内での踵と爪先の高低差、ドロップとも言う)は8㎜と控え目

 

硬軟2層のミッドソールが、着地衝撃を推進力に換える

そもそもシューズ形状も、踵から爪先にかけてのロッカー構造(揺りかごのような形状)になっている。こうしたロッカー構造をサポートするように、マキナ3は硬度の異なる2層のホバーフォームが後押しするのだという(デュアルデンシティUA HOVR クッショニングシステム)。

 

「踵から中足部にかけてのグリーンのホバーには、クモの巣状にウェブを被しています。ホバーフォームは軟らかいため、チカラを横方向に逃さない工夫です。ホバーフォームは、とりわけ衝撃吸収性が高く、ウェブを壁にして力を止めないと、沈み込み続ける特性があります」(松原さん)

↑踵寄りのミッドソールのイエローのホバーには、クモの巣状のウェブが配されている。前足部のブラックのホバーは、踵よりも硬くなるように材料の混合比を変えている

 

なるほど、サスペンションのような構造なのだ。松原さんによると、踵のホバー部材は、一度発泡させたフォームにウェブをかけて、キュッと圧縮させて成型するのだとか。ホバーは、従来から多くのメーカーが使用してきたEVAとも、昨今の厚底カーボンシューズでも用いられるPEVA系とも違う、UA独自のオレフィン系のエラストマーなのだという。

 

「さらに踵には、ウレタン樹脂(TPU)のヒールラップを付け、安定性を高めています。また、ヒールのカップ自体も深いため、欧州車のシートのように踵を優しく包み込みます。踵側のアウトソール(靴裏)には耐摩耗性の高いラバーを貼り、前足部には反応性の高い発泡ラバーを貼っています。スムーズで快適な走行感を感じていただけるはずです」(松原さん)

↑踵のイエローのアウトソールには、耐摩耗性に優れたラバーが使用されている。一方、前足部のピンクのアウトソールは、蹴り出しのエネルギーロスを低減する発泡ラバーだ

 

アッパーは、今や各社がこぞって採用するエンジニアードメッシュを使用(UAではワープニットと呼ぶ)。文字通りニット(編みもの)なので、通気性を持たせる部分は粗く編み。サポートが必要な強度を持たせる部分は編目を密に変えられる特徴がある。軽量化と通気性を兼ね備えられるのだ。

 

「もうひとつ、右足の中足部にはチップが内蔵されています。UAのスマートシューズ機能であるスマホの『MAP MY RUN』アプリと通信させることで、GPSウォッチがなくても、距離やスピード、ストライド(歩幅)などが計測できます」(松原さん)

↑右足の中足部、5㎜厚のソックライナー(インナー)の下のホバーフォームには「MAP MY RUN」対応のチップを内蔵

 

走った距離や速度の記録は、“レース出場なんて×”な方でも、モチベーション向上に役立つ。たくさん運動した時の自分へのご褒美や、昨日の自分に打ち勝った満足感は、続けるための大切な糧。もちろん、月間の走行距離を自分で定め、計画的に走って走力向上を目指すランナーたちにとっては、言わずもがなである。

↑松原さんとは、10年ほど前、当時、東京・中野にあったUAランナーズハウスでのイベントでご一緒して以来の再会! 懐かしさに浸る髭ボブの筆者(左)

 

クッション性が高いマキナ3は、UAの故郷であるアメリカ的な、至れり尽くせりのゴージャスな一足だ。実際、こうしたクッション性の高いシューズは、当然、カラダが大きく(体重も重い)方々のニーズが高い。カラダが重いと感じている方のジョギングや、ダイエットのために走り始める際には、チョイスの候補にしたい一足と言える。

 

ということで後編では、マキナ3を実際に、履いて、歩いて、3段階のスピード(運動不足解消/痩せラン/スカッと走)で走ってレビューをしたい。UAが誇る、最新鋭のインテリ“アメ車”=マキナ3の実力やいかに!

 

撮影/中田 悟

 

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