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2023/4/23 11:30

まるで、戦車!? アンダーアーマー最高峰のクッションモデル/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす! 「ランニングシューズ戦線異状なし」

2023「アンダーアーマー」春の陣③「UAホバー マキナ3」の巻(後編)

 

アンダーアーマーが誇る、最新鋭のインテリ“アメ車”。それが、今回試走する「UAホバー マキナ3(以下、マキナ3)」である。ご存じの通りアンダーアーマー(以下、UA)は、アメリカ・ボルチモアにヘッドクオータを持つ、グローバルスポーツカンパニーだ。

 

そのUAが誇る、クッション系の最高峰モデルが、今回のマキナ3。軽量、かつ反発性とクッション性に優れる、“機能てんこ盛り”で開発されたシューズである。機能てんこ盛りの秘密は、ミッドソールの「ホバー」と呼ばれるフォーム材。ホバーは、従来から多くのメーカーが使用してきたEVAとも、昨今の厚底カーボンシューズでも用いられるPEBA系とも違う、UA独自のオレフィン系のエラストマーなのだそう。

↑今回紹介するのは、写真手前の「UAホバー マキナ3(HOVR MACHINA3)」1万7600円(税込)。サイズ展開:メンズ25.0~30.0㎝、ウィメンズ22.5~26.0㎝。カラー展開:メンズ3色、ウィメンズ2色

 

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いよいよ、「UAホバー マキナ3」を試走!

と言うお話が、前編まで。後編では、マキナ3を実際に、履いて、走って、レビューする。まずは、シューズに足を入れた感覚およびウォーキングのインプレ。そして、「運動不足解消」が目的で走る、1㎞を約7分(=キロ7分)の、の~んびりペース。

 

続いて、脂肪を燃焼させる「痩せラン」に適した、1kmを約6分(=キロ6分)のゆっくりペース。最後は、距離ではなく、走る爽快感重視の、1㎞約4分30秒~5分で走る(キロ4.5~5分)「スカッと走」だ。いずれも、“たまには、走ってみようかな~”と思った際に目安になるペースである。

 

【まず、履いてみた!(走る前の足入れ感&ウォーキング)】

足入れをして、立ってみると、マキナ3の“安定感”の良さを実感。踵に巻き付くようなライトグリーンのウレタン樹脂(TPUのヒールラップ)は、押せばしなる程よい硬さで、しっかり足を守ってくれている。ヒールのカップ自体も深いので、踵を優しく包み込む。

 

歩けば、ホバーフォームがしっかり着地を受け止める。これまた程よい軟らかさ&硬さで、長時間のウォーキングや立ち仕事でも、疲れさせない感じだ。歩いても、ヒールはしっかりホールドされている。タン(甲に当たる“舌”のような形状の部材)は、ちょっと硬め。あくまで好き嫌いの範囲だが、筆者的にはもう少しソフトな方が好み。しっかりホールドされるのがお好きであれば、マキナ3の全体のバランス的には、むしろこちらが正解だろう。

 

肉厚のシューレース(靴ひも)は、チト長い。10年ほど前は、長いシューレースを付けているもシューズも多かったが、今は適切な長さがデフォルトとなっている。切って短くするほどでもないが、一回蝶結びにした後、レース時のように、もう1度結びたくなる。

 

【運動不足解消ジョグ(1㎞を7分で走るペース)】

歩きの次は、走り。運動不足の解消が目的なので、本来スピードは不問。でも、の~んびり走ると、だいたい1㎞を約7分程度のペースで走ることになる。歩きと同様、マキナ3は足をしっかりホールドしてくれて、厚底なのに低重心、安定した走りが得られる

 

たまに、「走っている時、何を考えているの?」と聞かれることがある。この問いを発する人は1000%普段走っていない人だが、2つのタイプがいると筆者は考えている。ひとつは、走っている際に、あれこれモノを考えるタイプ。発想の転換を含め、何かアイデアを得たかったり、ポジティブにモノを考えたい時に走る、という人たちだ。

 

もうひとつのタイプは、走ること自体を楽しむ人たち。走っている最中は、走ることしか考えず、走りに没入し日常と切り離した時間を楽しんでいる。レースにハマるのは、こういうマインドが高い人たちだ(ちなみに筆者は、その日の気分で、両方を楽しんでいる。イコール中途半端なので、仕事も、タイムも、そこそこで満足する平凡な人間である)。

 

マキナ3は、前者のように、何かを考えたり、発想の転換にランニングを選ぶ人には最適な1足だ。走ることに没入せずとも、自然にカラダが前に進む。シューズの性能について意識をする必要もなく、自然に脚が運ばれてゆく。その理由は、ミッドソールのフォーム材ホバーだ。着地時は、踵に配された軟めのホバーフォームが衝撃を吸収。蹴り出しの時には、前足部の硬めのホバーフォームが連携して、衝撃を推進力に換えてくれる。今流行りのフワフワではないが、しっかりしたクッション感ときっちりした反発感だ。

 

【痩せラン(1㎞を6分で走るペース)】

あれこれ走りながらモノを考える人にとって、脳の活性化と、体脂肪の代謝活性のW効果は、大きな魅力だ。甘味でストレスを発散せずとも、ランニングシューズを履いて、一歩前に進むだけで、雑事のストレスと共に、体型のストレスまで霧散させられる。しかも息が切れない程度の負荷で、長時間続けるほど、効率よく脂肪は燃焼し、思考力もアップする。

 

ということにメリットを感じる方にこそ、マキナ3である。この撮影とは別の日に、近所の里山でもマキナ3を試したが、公園内のアップダウンのある不安定な砂利の小径でも、安定した走りが得られる。前回お話を聞いた、UAのシューズ担当の松原恵治さんは「マキナは機械という意味。オートマ車のように自動的に進む」と表現していたが、まさにその通り。

 

速度を換えても、自動で変速されるように、マキナ3の乗り味は変わらない。試しに、手元のGPSウォッチを見ずに、マキナ3で自然に出せるペースで走ったところ、1㎞6分弱。“どこまで走る?”と聞かれたら、“どこまででも!”と答えられる。

 

【スカッと走(1㎞を4.5~5分で走るペース)】

気分転換に走る人にとって、走り出しは“運動不足解消ペース(キロ7分)”、リズムが上がってくると“痩せラン(キロ6分)”になるパターンも多い。レースのためのトレーニングではないのだから、その日の気分で好きに走るのは◎。

 

という方にとって、坂道のテッペンやゴールに向けて、(心の中で叫びながら)ペースを爆上げる“スカッと走(キロ4.5~5分)”もまた楽しからずや。そこで、マキナ3。ペースをキロ4前半に上げても変わらない安定感。正直、今どき、これほど変わらないシューズも珍しい。まさに、マシーンである。けっこうな斜度の下り坂でもカッ飛ばしたが、変わらぬマキナ3の安定感。シューズによっては、速度帯によって履き心地が変化するタイプもあるが、マキナ3は戦車のように進む(乗ったことないけど)。

 

マキナ3は、レースで誰かと競ったり、タイムを向上させるために追い込むシューズではない。走ることで得られる、カラダとココロのケアにフィットする一足と言える。もちろん、その延長線上にある、人生一度は挑戦したい42.195㎞のゴールまで、あなたの脚を守りながら、一緒に走ってくれるシューズでもある。

 

次回からは、マキナ3がオートマ車なら、UAにとってのマニュアル車だともいう「UAフロー ベロシティ ウインド2」のインプレに移る。どんなポテンシャルを秘めているか、期待したい!

 

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撮影/中田 悟

 

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