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2023/8/4 20:30

トレラン界に君臨する山の王サロモンが作った、ロードラン用シューズ/大田原 透の「ランニングシューズ戦線異状なし」

ギョーカイ“猛者”が走って、試して、書き尽くす!「ランニングシューズ戦線異状なし」

2023「サロモン」夏の陣③「エアロ グライド」の巻(前編)

 

フランス・アヌシーで産声を上げたサロモン(Salomon)。スキーから始まるアウトドアブランドである。冬はクロカンスキー、夏はトレランという北欧のライフスタイルを取り入れ、今や世界のトレラン文化を牽引する存在として、日本のみならず世界のトレイルランナーの圧倒的な支持を得ている。

 

そのサロモンが得意とする、スキーやスノーボードなどのウインタースポーツ、そしてトレランやハイキングなどのマウンテンスポーツに共通する哲学は“ライト&ファスト”。より短時間に、距離を稼ぎ、ミニマルな装備で、身体のパフォーマンスをできる限り維持することが、商品開発の根本にある。

 

サロモンの“ライト&ファスト”を体現したトレランシューズの紹介と実際に走ったインプレが、前回まで。今回からは、いよいよトレランを極めることで、全てのサーフェイス(路面状況)に精通したサロモンが、“どこでも走る”ランニングブランドとなるべく開発した、オンロード向けのランニングシューズへのフォーカスとなる。

↑「エアロ グライド(AERO GLIDE)」1万8700円(税込)。サイズ展開:メンズ25.0~28.5㎝、ウィメンズ22.0~25.0㎝。カラー展開:メンズ4色、ウィメンズ4色。ソール厚:前足部27mm /かかと37mm。ドロップ(踵と前足部の高低差):10㎜。重量:254g(27㎝片足)

 

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サロモンが提案する、世界的トレンドへのひとつの答え

「2023年にサロモンが強化するのが、“エブリデイ ラン”。サロモンが提供する一連のロードランニングシューズでも、初のクッショニングのモデルです。北米を含め、体重のある方々も買い求めやすいタイプのシューズがリニューアルしました」

 

と語るのは、サロモンのイケメンMD山村 拓さん。山村さんが、GetNavi web読者を含めたランニング初心者にすすめてくれたのは、「エアロ グライド」というモデル。厚底をトレンドも踏まえ、真上から見ると接地面のソールが広くせり出したフォルムが印象的である。

 

エアロ グライドは、見た瞬間に、安定性に秀でると直感的に伝わるシューズだ。3Dメッシュのアッパーには、軽量化にも寄与するリサイクル素材が使用されており、この見た目ながら254g(27㎝片足)と、オンロードで先行する競合他社の商品と比べても遜色はない。

↑今回お話を伺った、サロモンの山村 拓さん。日本での展開商品の選定やプロモーションをマーケチームと連携して行う。トレランはもちろん、アウトドアスポーツとサッカーを愛するイケメンMD

 

全くの初心者から、ガチレースでのリカバリー目的まで

「(大柄の方が多い)北米市場も意識しているので、日常使いはもちろん、運動不足解消ための日々のウォーキングや、体脂肪を燃やすためのジョギングなどのシーンを想定しています。膝が気になっていたり、シューズのクッション性に不安がある方など、ご自身が抱える“問題解決”になる1足になれば……、と願っています」(山村さん)

 

山村さんによると、エアログライドは、サロモン社内のレース好きのガチなトレイルランナーたちが、100マイル(=160㎞)などの過酷なレースの翌日、リカバリー用に履くことが多いという。アスリートは、酷使した脚の筋肉に対して、スローペースで“走って!”血行を促すことで、筋肉痛を軽減させると共にパフォーマンスをリカバリー(回復)させるのである。

 

しかも、泥や砂まみれのトレランシューズは、きれいに洗っても、翌朝に快適に履くのには難があるのだ。なるほど、ゆっくり走っても安定性に優れる“もう一足”としてエアロ グライドが人気なのが頷ける。

↑エアロ グライドは、“エブリデイ ラン”を標榜するサロモン2023年の強化シューズ。サロモンが展開するロードシューズ群で、初のクッショニングモデルとしてローンチされた。3Dメッシュにはリサイクル素材を採用し、比較可能な前モデルから21g(27㎝片足)の軽量化に成功している

 

過酷な山で磨かれた高い技術を、ロードシューズに展開

エアロ グライドは、爪先とかかとが揺りかごのようにラウンドする「ロッカー構造」を採用している。そのため、かかとでの着地から、爪先での蹴り出しにかけて、滑らか(グライド)に足が運ばれる。あまりに極端なロッカー構造は、ともするとスネの筋肉に過度な負担をかけることがある。しかしながら、エアロ グライドのロッカーは穏やか。安全な設計と言える。

 

「エアロ グライドに使われる厚底のミッドソールは、サロモンが独自に開発した『エナジーフォーム』という素材です。エナジーフォームは、衝撃吸収性富んだEVAに、反発性を高めるオレフィンを配合しています。着地衝撃を推進力に換え、ガシガシと山を駆け巡るために開発された素材を、オンロード用にも使用しています」(山村さん)

 

エナジーフォームは、前回まで紹介してきたトレランシューズ「ウルトラ グライド 2」にも使用されており、同素材をオンロード用のエアロ グライドへ搭載することは、トレラン好きにとって、大いに興味を惹かれるところなのだ(詳しくは、次回のインプレにて!)。

↑白いミッドソールは、高い衝撃吸収を持つEVAに、高反発なオレフィンを配合した「エナジーフォーム」。今どきの厚底のかかと部は、何と37㎜! アッパーには、シューレースと一体になって足首全体を包み込む、センシフィットテクノロジーが採用されている(サロモンのロゴがプリントされたライトグリーンの部分)

 

「あらゆるサーフェイスを知る」サロモンだからこそのアウトソール

硬いアスファルトなどの舗装路を、同じようなペースと足運びで走るオンロードでのラン。数万人もの参加者とともに、トップアスリートが賞金を懸けて競い合うことで、使用されるシューズの技術は飛躍的に進化してきた。

 

サロモンが得意としてきたのは、土や岩などの路面状況(サーフェイス)はもとより、気温差も湿度の差も激しいオフロードでのランである。近年は人気も急上昇し、出場資格をポイント制にして、出場選手のレベルと安全確保を行う人気レースも増えている。

 

サロモンは、世界中のトレランレースを走る選手たちのサポートを通じて、あらゆるサーフェイスを研究し、さまざまな環境に対応できる技術を磨いてきた。そして今、その高い技術を武器に、オンロードのランニングの世界への足掛かりを着実に固めている。

 

「こうした、サロモンのサーフェイスへの対応力が、アウトソールの開発でも活かされています。それが『コンタグリップ』と呼ばれるラバーです。コンタグリップは、サロモンが開発するアウトソールの総称で、使用させるサーフェイスに応じてラバーの性質を調整しています」(山村さん)

 

エアロ グライドに使用されているのは、硬い路面での耐摩耗性が高く、しかも軽量なコンタグリップ。アウトドアのゴツゴツしたアウトソールとは対照的に、シンプルな分、高い技術力が求められているという。

↑サロモンが独自に開発をしたロード用のアウトソール「コンタグリップ」を搭載(グレーの部材)。アスファルトなど硬い路面で、一定方向からの着地が重なるため、耐摩耗性の高くなる混合比のラバーが採用されている。ちなみに、赤いポッチは、コンタグリップのマークである

 

山の王サロモンが睥睨(へいげい)する、ロードランニングの平原

トレラン界に君臨する山の王サロモンは、その高い技術を武器に、ロードランニングの平原への拡大計画を着実に推し進めている。ヨーロッパには新興のランニングブランドも乱立し、これまでシェア争いに勤しんでいた巨大ブランドたちも、生き残りをかけた開発競争に突入せざるを得なくなっている。

 

東京の郊外、古民家を再利用して作られたサロモンのショップは、日本のアウトドアシーンの巨大な玄関=高尾に位置する、まさに最前線。呑気にも、カフェでアイスコーヒーを飲んでいる筆者なのだが、ランニングシューズ戦線は、今、とんでもない歴史的なシーンを迎えているのだ。

 

次回は、山の王サロモンがロードランニング界に放つエアロ グライドのインプレである。と、独り緊張が高まってきたところで、本連載『ロードシューズ戦線異状なし』、サロモン夏の陣「エアロ グライド」は、大団円の後編に続くのであった。

↑山村さんにお話を伺ったのは、サロモンブランドのコンセプトショップ、東京・八王子市の「TAKAO MOUNTAIN HOUSE」。京王線高尾山口駅からスグのアクセスの良さもあり、コアなファンの忘れ物需要だけでなく、今までサロモンブランドに触れてこなかったレジャー客層も立ち寄るようになったとか

 

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撮影/中田 悟

 

 

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