スポーツ
ランニング
2023/11/17 20:30

ニューバランスと渋谷区が「走る」で街おこし?「Run City Shibuya」の中身

国内では数少ない女性だけのマラソン大会として、2011年からこれまで約5000人の女性ランナーが参加している「渋谷・表参道Women’s Run」。このほど、同大会に協賛するニューバランス ジャパン(以下ニューバランス)と渋谷区による「S-SAP(シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー)協定」の締結式が行われました。そこで掲げられた新たなテーマが「Run City Shibuya」です。

 

ランニング×都市を通じて目指す「Run City Shibuya」

2023年11月9日、渋谷ヒカリエのイベント会場でニューバランスと渋谷区が、地域の社会的課題を解決していく公民連携制度「S-SAP協定」の締結式を行いました。そこでニューバランスが掲げたのが、「Run City Shibuya」という考えで、渋谷区との連携を強化することで、ランニング×都市を通じた、ランニングコースやコミュニティの場の創出など、多様な人がスポーツを楽しめる環境やカルチャーを作っていくことを目指します。

↑ランニングを中心に渋谷区と協働してきたニューバランスは、今後は他分野も含めて地域課題の解決に継続的に取り組む

 

S-SAPは渋谷区内に拠点を置く企業や大学などと渋谷区が協働し、地域の社会的課題を解決していく取り組みです。2016年4月からこれまで、みずほ銀行やキユーピー、ビームス、DeNAなどの民間企業27社、青山学院大学などの8大学と協定を結び、ニューバランスが36番目のパートナーとなりました。締結の内容は以下の6項目になります。

1.スポーツ及び健康増進に関する支援

2.文化振興及び観光に関する支援

3.次世代育成に関する支援

4.災害対策に関する支援

5.環境保全に関する支援

6.前各号に掲げるもののほか、相互に連携協力することが必要と認められる支援

 

メジャーシティマラソンでも街おこしを展開

発表会では最初にニューバランス ジャパン代表取締役社長・久保田真一氏が登壇し、同社のバックグラウンドが語られました。

 

「1906年の開業当初からランニングというカテゴリーがバックグラウンドにあり、2016年より『ニューヨークシティマラソン』のスポンサーをしています。これはマラソンのみならず、地元のニューヨークロードランナーズと提携し、ランニングを通じて街を盛り上げたり、子どもたちの支援をしたり、そういった活動を広く展開しています。同じくメジャーシティマラソンの一つでもある『ロンドンマラソン』も2017年より展開しています」(久保田氏)

↑「渋谷に暮らす人、そして働く人、ここにいる人みんなが健康的な日常をしっかり送れるように貢献したい」と意気込みを語った久保田氏

 

昨年、同社はボストンのグローバル本社の向かいに室内トラックを備える最新鋭のスポーツ施設を開設しました。トラック競技だけでなく、床を変えることでバスケット、サッカー、テニス、バレーなどのスポーツを行うことができ、地元のコミュニティにも開放。施設内のコンサートホール、レストラン、ビアホールなども地元住民らに開放することで町おこしにつなげています。

↑ニューヨークシティマラソンやロンドンマラソン、ニューバランス本社のスポーツ施設の写真

 

「日本では、特にこの渋谷区において我々が取り組んできたのが『渋谷・表参道Women’s Run』で、普段は走ったり、大手を振って道路の真ん中を通れない街中を駆け抜ける素晴らしいイベントになっております。もちろんランニングだけではなく、地元の協力店の方と協議してクーポンを配布するなど、レースの後に街も楽しんでもらうような活動もしています」(久保田氏)

↑渋谷・表参道Women’s Runや北渋RunRunフェスタを企画

 

この発表会の3日後には、今年で2回目となる「北渋RunRunフェスタ」も開催されました。国内初の1マイルロードレースとして「北渋エリア(初台・本町・笹塚地区)」の公道を舞台に行われたイベントには、昨年同様にニューバランス所属の田中希実選手も参加。田中選手は女子1000m・5000mの日本記録を持っている世界レベルのトップランナーです。

 

イベントでは、田中選手は子どもたちとも「北渋ひよこレース」で触れ合い、1マイルレース「NOZOMIRAI MILE(ノゾミライマイル)」では集団最後尾からスタートしたものの僅差の逆転で優勝しトップランナーの走りを見せるなど、盛況のうちに幕を閉じました。

 

「僕自身もランナーの端くれ」区長が語る締結への期待

続いて渋谷区長の長谷部 健氏がスーツ姿に足元はニューバランスのランニングシューズという姿で登壇しました。

 

「渋谷はこういったイベントを行う場所でもありますが、僕自身もランナーの端くれ。走ることで健康増進に当然つながりますが、走ることでコミュニティが生まれることも多々見てきたので、ぜひ背中を押していただけるとありがたい」と、ニューバランスとのS-SAP協定締結への期待を長谷部区長は語りました。

↑「最近ハロウィンとかで苦い顔ばかりの会見が多かった」とジョークも交えながら締結の喜びを語る長谷部区長

 

渋谷区では20年をかけて区内の学校、122校の学校施設を建て直す事業にも触れました。未来の学校をビジョンに、地域に校庭や体育館、プールや音楽室など、解放できる施設はすべて開放する前提で設計。実際、渋谷区では新たな土地(更地)にスポーツセンターなどの施設を建てることは不可能なので、スポーツや文化に触れる場所が学校ごとにできるという構想です。

 

「今ある資源をフル活用して、公共空間を共有することでさらにスポーツ・文化の振興を図っていきます。まさにニューバランスは本当に力になると勝手に期待しているところですし、スポーツ以外でもファッションとの親和性も高い。これからも膝を突き合わせていろんなアイデアを実現させていきたい」(長谷部氏)

↑壇上で協定書への調印をする両名。すでにランニングイベントで気の知れた仲、発表会は終始和やかな雰囲気で行われた

 

恒例のランニングイベントだけでなく、これからはどのような取り組みで渋谷を盛り上げてくれるのでしょうか。「Run your way.」をテーマに「一生懸命走らなくても楽しんでもらえば。そして生活が豊かになってもらえれば、我々にそこを応援させてください」とメッセージを送るニューバランスと、「ちがいをちからに変える街。」をスローガンに掲げる渋谷区。両者のタッグからは目が離せません。

 

 

【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】

New balance