GetNavi web×新日本プロレス コラボ連載
プロレスラー・矢野 通選手が革小物のものづくり体験に挑む!
恒例の「Get Navi Web × 新日本プロレス」のコラボ連載。今回は、反則技で敵を翻弄する曲者ヒールとして大人気の矢野 通選手。酒好き、アウトドア好きという豪快なイメージで知られていますが、今回は矢野選手たっての希望で、革小物のものづくり体験にチャレンジ! 革製品の魅力から良い革製品の見分け方、矢野選手の知られざる才能に迫りました!
PROFILE
矢野 通(やの・とおる) 矢野選手のTwitterはコチラ
東京都荒川区出身。新日本プロレス所属。第51代、第59代IWGPヘビー級タッグ王者。新日本プロレスを代表する曲者として知られ、「Y・T・R」「崇高なる大泥棒」などのニックネームを持つ。身長186cm、体重115kgの体格を生かした得意技は鬼殺し、裏霞、赤霧、黒霧島、大吟醸など酒に由来するものが多い。お約束のポーズは、自らの頭を両手親指で指す「Y・T・Rポーズ」、両手のひらを見せて肩をすくめる「デニーロポーズ」など。反則技を繰り返すヒールスタイルだが、そのキャラクターが熱狂的なファンに支持されている。自らスポーツバー「EBRIETAS」を経営するなど実業家としても手腕を振るう。
【今回訪れたお店】
池之端銀革店
この道29年、皮革の特性を知り尽くした小野勝久さんが、2004年にオープンした革製品専門店。高いデザイン性と技術力を兼ね備えたオリジナル商品やコラボアイテムなどが手頃な価格で購入できるとあって、大人の男性たちから熱い支持を受けています。
住所:東京都台東区池之端3-4-30
革製品の販売店兼工房で革とは何かを学ぶ
――今回おじゃましたのは、東京・台東区にある池之端銀革店です。矢野選手は「革製品を学びたい」と希望されたそうですが、革製品に興味をお持ちになったきっかけは何ですか?
矢野 北海道に行ったときに、とある工房に寄る機会があったんです。そこで革財布に名前を入れてもらう作業を見たら、自分でもやりたくなってしまって。あと、僕は実家が西日暮里なので、子どもの頃は日暮里の繊維の問屋街にもよく遊びに行っていて。革も素材として売っていたので、「自分で作ってみたいな」と、ずっと思っていたんです。実はこう見えて、ものを作る作業が好きで、手先もわりと器用なんですよ。ミシンを買ってバッグを作ったこともあるくらい(笑)。
――意外ですね(笑)。ちなみに、革製品で一番欲しいものは何ですか?
矢野 欲しい革製品はいろいろとあるんですけど、大人の男としては、最終的にオーダーメイドの革靴に憧れます。簡単に手を出せる価格じゃないので、いつか買うときのために、革の種類を勉強しておきたいし、革製品の製造過程を知っておきたいなと。
――なるほど。では、早速工房に移動して、「革とはなんぞや」を教えていただきましょうか。
矢野 ぜひ!
希少な革、コードバンに興味津々
――今回革について教えてもらうのが、革製品を扱って29年の大ベテラン、小野勝久さんです。どうぞよろしくお願い致します!
小野 よろしくお願いします! さて、早速ですが、こちらを見ていただけますか? これがコードバンという革です。
矢野 あ、コードバンってよく聞くから知りたかったんです! これは硬いんですか?
小野 硬いというよりも、コラーゲンの繊維が高密度で整然と並んでいるので、「滑らかなのに丈夫」という言い方がいいかもしれないですね。馬のお尻のほんの一部分からしか採れない希少な皮の裏側を、薄く薄く削っていくと、ほんの少ししか厚みのないコードバンの層に行き当たる。馬はどちらかというと繊維が粗くて裂けやすいんですが、ここだけは薄くてもすごく丈夫なんです。
矢野 値段でいうと、普通の牛革とどれくらい違うんですか?
小野 原価の話をしちゃうと普通の牛皮の10〜20倍はしますね。
矢野 そんなに! 本当に希少で高価な革なんですね……。
小野 ちなみに、この革はアメリカのHORWIN(ホーウィン)社製。HORWINはコードバンでもっとも有名なブランドで、コードバンでは、日本の新喜皮革(しんきひかく)とシェアを二分するブランドです。ホーウィンが皮らしいワイルドな風合いである一方、新喜皮革は極めてキレイに仕立てるという違いがありますね。これはどちらがいいというよりも、好みの問題です。
小野 革製品の基本的な作業工程は、「裁断」→「皮すき(パーツに合わせて厚みを変える)」→「パーツの磨き」→「組み立て」→「糊付け」→「縫製」です。流れ作業の安物だと、縫製しっぱなし、裁断面に顔料を塗りっぱなしでおしまいですが、ウチは縫製後、職人さんが裁断面を「カンナで面取り」→「染料の塗り込み」→「ペーパーでの磨き」という作業を個別にすることで、光沢感を出しているんです。
矢野 へえ〜!
小野 今日はコードバンを使ったWフラップカードケースで、縫製後の工程を体験してもらおうと思います。
矢野 はい! 楽しみです!
まずは通常の牛革で腕試し
小野 では、本番の前に削りやすいイタリアの牛革で練習してみましょうか。このカンナで裁断面をスーッと削ってみてください。
矢野 こんな感じで、刃を斜めに当てるイメージですか?
小野 角度や力の入れ方にセンスが出るんです。あ、うまいですね! めちゃめちゃセンスいいです。できない人は、カンナが繊維にガツガツ引っかかってしまうんです。
矢野 繊維の密度が低かったり、なめしが甘かったりすると、引っかかりやすそうですね。
小野 おっしゃる通りです。さて、ある程度面取りができたら、次は磨き。面取りした部分のザラザラ感をよく覚えておいてください。
矢野 はい。(面取りした裁断面をなでる)
小野 いろいろなやり方がありますが、うちの場合は面取りした部分を水に漬けて、繊維を一度ゆるゆるにしてから、磨き用の糊を硬めの木の棒でこすり付けます。
小野 乾いたら、綿布で磨き上げます。これはなんてことない普通の綿布なんですけど、何年も使ってるから糊が染み込んで、革がつるつるになるんですよ。焼き鳥屋が何年もかけて熟成させたタレと同じくらいの宝物です。さて、磨いてみた感触はいかがですか?
矢野 すごい! 光ってる! 感触が全然違いますね。
小野 ラッカーを塗ったみたいでしょ。実はこれ、磨きすぎてもダメなんですよ。力を入れすぎると形がいびつになってしまいますから。角を潰すように、美しい丸みを作るよう意識してみてください。このさじ加減が職人の技術とセンスですね。
いよいよコードバンにカンナを入れる!
小野 では、いよいよ本番です。コードバンにカンナを入れてみましょう。軽く削ってもらえれば、ヤスリがけの工程である程度のごまかしはききますので、削りすぎないことを意識してください。
矢野 …これはちょっと緊張しますね(笑)。
小野 いやあ、矢野さん。大きな手なのにものすごく繊細で、それでいて大胆で、お世辞抜きに筋がいいですよ。難しい角もなめらかですし、テクニシャンです。
矢野 いや、めちゃくちゃ難しいです(苦笑)。ちょっと刃を入れる場所がずれると入らないですし。
小野 そんなときは、当てる角度をちょっと変えると入りやすくなりますよ。
矢野 こんな感じですか?
小野 おお、バッチリです!
良い革製品を見分けるポイントとは?
小野 次に、この機械で磨くと、コバ(裁断面)をペーパーで磨くよりなめらかになります。この回転する部分に、カンナで面取りしたコバを当てて磨いてください。
矢野 はい。
小野 すごい集中力ですね……。面取りと磨きは、やる気とセンスが露呈する工程ですが、矢野選手は文句なしです。次は、磨き用の糊を塗って磨いて仕上げましょう。
小野 めちゃめちゃいい感じですねえ。
矢野 劇的に仕上がりが良くなりますね。
小野 そうでしょう? 実は、いま矢野選手にやっていただいている仕上げの工程は、やらなくても機能的には問題がないし、パッと見た感じは大きく変わらないので、省くところも多いんです。逆に言うと、ここをきちんとやっている店で、ほかで手を抜くということはありえない。ですから、このコバが仕上がっている革製品は、他の部分もすべてしっかりしているんです。ですから、革製品の質を見分けるには、ここを見るとわかりやすいですね。
矢野 ほかにもいい革製品を見分けるポイントはあるんですか?
小野 糸切りの処理や、金具の付け方などでしょうか。でも、やっぱり、一番の違いはこのコバの磨きに出ますよ。
矢野 なるほど。じゃあ、次からはここをしっかり見るようにしますね。教えてもらえてよかったです!
矢野選手の腕前は文句なしの100点!
――小野さん、矢野選手の腕前はいかがでしたか?
小野 初めてだと考えると文句なしの100点です。では、最後にホックを打って完成です。
矢野 できました!
――矢野選手、体験してみて、いかがでしたか?
矢野 とにかく楽しかったです。時間を忘れて没頭してしまいました。
小野 …ちなみに、矢野選手はおいくつですか?
矢野 38歳です。
小野 じゃあ、まだまだ職人を目指せる年齢ですよ(真顔)。
矢野 どれくらい修行すれば独り立ちできるんでしょうか?
小野 全工程を一人でできるようになるには、早くて半年くらいですね。矢野さんなら問題ないですよ(真顔)。
矢野 ありがとうございます(笑)。(店内を見渡して)今度は、もう少しこういうバッグも作りたいなあ。革の種類とか、作業工程とか、いろいろ知ることができて、ますますいろいろなものが欲しくなりました! けっこうズボラなところがあるので、手入れを怠る傾向があるんですけど、こんなふうに自分で作ったものは、買ったものと全然違います。大切にして長く使いたいですね。
数々のお弟子さんを育ててきた小野さんから、そのセンスの良さを絶賛された矢野選手。男らしい大きな手を繊細に動かしながら、細かい作業に没頭する姿に職人魂を感じました。「無理だとは思いますけど、いつか革靴も作ってみたいですね」と野望を語ってくれましたが、「なるようにしかならない人生を、どう楽しむかがモットー」という矢野選手なら、実現してしまうかもしれません。
さて、次回は矢野選手が所属するユニット、CHAOS(ケイオス)の日本人選手全員が集合する大型企画が始動! 誕生日を迎えた外道選手に全員がプレゼントを用意して、サプライズパーティを仕掛けます。お楽しみに!
【池之端銀革店の通販情報】
小野さんが手掛けるブランド「Cramp(クランプ)」が手掛けた天然本藍染 薄長財布「JAPAN BLUE」の販売ページはコチラ
【試合情報】
戦国炎舞-KIZNA- Presents SAKURA GENESIS 2017
日時:4月9日(日) 14:30開場 16:00開始
会場:東京・両国国技館
※最新情報は新日本プロレス オフィシャルサイトへ
撮影/石上 彰