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2017/9/20 11:00

手帳が特大トレーに、カマボコがかぐや姫の竹に!? 磁石で変形する最新「高機能ペンケース」レビュー

ここ数年、文房具業界全体が戦争状態に陥っているのをご存じだろうか。いわゆる「機能性ペンケースの変」と呼ばれる熾烈な争いである。

 

2014年の初め、戦端を開いたのは、ファスナーを開くことでペンスタンド型に変形するペンケース「ネオクリッツ」(コクヨ)のリニューアルである。この新型ネオクリッツが、数多のメディアで紹介され人気となったことから、大手・中小メーカー問わず「従来にない機能のペンケースを作ったら、メディアに注目されて売れるんじゃね?」という気運が業界全体に高まった。

 

結果として、ペンケースは単なる筆記具の入れ物から大きく進化を果たし、わずか数年のうちに「ノートにひっつく型」「ペントレーに変形型」などが登場し、機能性ペンケースという新たな大ジャンルを形成するまでに至ったのだ。

↑いま、最もアツい機能性ペンケースジャンルの面々
↑いま、最もアツい機能性ペンケースジャンルの面々

 

申し訳ない。先日、懐かしの深夜番組『カノッサの屈辱』の動画を立て続けに見てしまった結果、つい大仰な書き出しになってしまった。ただ、書き方は大仰であっても内容にウソはない。本当に「機能性ペンケースの変」と呼ばれてしまうぐらい、新しいペンケースが続々と生み出されているのだ。

 

そんな中、最近の注目株が「磁石でパチッと型」。本体内に磁石を内蔵し、磁力でフタを固定したり、二つ折りにしたりすることで便利になる……という発想で作られたペンケースが、この夏に立て続けに複数メーカーから発売されている。その中でも、筆者が注目している2製品をここで紹介したい。

 

検索性の高いパチッとトレー型

ペンケースで常に問題となるのが、収納した文房具の検索性である。特に大容量のものとなると、使いたいものをタイミングに応じてサッと取り出すのが難しくなる。その点で良くできているのが、レイメイ藤井の「パタリーノ」だ。

↑レイメイ藤井「パタリーノ」Lサイズ(左)1512円/Sサイズ(右)1080円
↑レイメイ藤井「パタリーノ」Lサイズ(左)1512円/Sサイズ(右)1080円

 

サイズはLとSがあるが、筆者がオススメなのは大容量の平形Lサイズ。外寸は約200×120mmとほぼA5サイズに近い大きさで、一般的に市販されているペンケースの中では最大と言っていいだろう。ただ、対して厚みは25㎜とかなり薄い。手に持った感覚としては、A5手帳一冊分、といった感じだろうか。

 

肝心のパチッと部分だが、ジッパーでフタを開いて折り返すと、本体上面に磁石でパチッと固定されるようになっている。これなら、使っている間に素材の弾力でフタが戻ってしまうという鬱陶しさもなく、普通の平置きペントレーとして安定して使うことができる、という趣向だ。この形態だと、中に何が入っているかは一目瞭然。使いたいモノをすぐに選んで抜き出すことができるだろう。

↑パタンとフタを折り返すと、磁力でパチッとくっつく
↑パタンとフタを折り返すと、磁力でパチッとくっつく

 

容量的にはご覧の通り、サイズを活かして中にモノをとにかくぎっしりと詰め込める。小型の電卓ぐらいなら筆記具と一緒に持ち歩けるので、店舗営業の人なんかにはかなり便利だろう。それでいて、この薄さ。荷物でパンパンに膨れたカバンであっても、ちょっとしたすき間さえあれば入ってしまう。このあたりは、ほかに大容量を謳うポーチやロールペンケースであっても、真似できないポイントだろう。

↑容量的には、一般的なペンなら15本は入る。高さもあるので、定規やハサミも軽く飲み込む
↑容量的には、一般的なペンなら15本は入る。高さもあるので、定規やハサミも軽く飲み込む

 

また、フタの裏側には小物ポケットを付属。消しゴムや修正テープといった、大容量ペンケースの底に沈みがちな物件を入れておけば、ケースの中に指を突っ込んでゴソゴソ探るような無様な作業とは無縁となる。

↑底には、ペン先がジッパーに当たって破損しないよう、底板がついている。細かい配慮がうれしい
↑底には、ペン先がジッパーに当たって破損しないよう、底板がついている。細かい配慮がうれしい

 

それでもどうしても中にモノが沈んでしまったという場合は、ファスナーを最後まで開けばフルオープンにすることもできる。これは、ペンケースの中身を入れ替える際にもかなり便利だ。

 

スタンド型の最後発は磁石でパチッと固定式

こちらは、立つペンケースとしては現時点で最後発となる「SMA・STA(スマ・スタ)」。学童文具メーカーのソニックが、初の大人向け製品として作ったという意欲作である。

↑ソニック「スマ・スタ」全5色 1404円
↑ソニック「スマ・スタ」全5色 1404円

 

通常時はカマボコのような半円柱のポーチ型。ここからファスナーを開けて二つ折りにすると、折り曲げた体勢のまま磁石でパチッと固定される。で、円柱を“袈裟懸け”にした(かぐや姫が入っていた竹のような)形になり、安定して自立する。これがスマ・スタのペンスタンド形態だ。

 

↑折り曲げると、そこでパチッと止まる。この感触がなかなか気持ちいい。
↑折り曲げると、そこでパチッと止まる。この感触がなかなか気持ちいい

 

ペンスタンドとしては、筆記具やハサミなど長物が入る後段と、小物をストックする前段……という二分割になっている。

 

で、注目したいのは前段の方。上の写真でも分かる通り、前段はスマホがすっぽり立てて入るポケット形状になっている。つまりスマホスタンドにもなるペンケースなので、名前が「SMA・STA(スマ・スタ)」というわけだ。

↑狭い机の上でも、筆記具とスマホの置き場が確保できる
↑狭い机の上でも、筆記具とスマホの置き場が確保できる

 

例えば、駅ナカのカフェなど極端に小さい机の上で作業をせねばならない場合、コーヒーカップと筆箱、ノートを置いたらもう、スマホを置いておく余剰地なんかない。仕方ないのでノートの上に乗せたりするけど、これがもう邪魔で邪魔で……。

 

しかしそういう場合でも、筆箱をペンスタンドにすれば面積が稼げるし、その上スマホも立てて置ければ、机の上はかなりスッキリするはずだ。

↑かなり深くて広いポケット。ただし、面ファスナーのフチがちょっと邪魔だった
↑かなり深くて広いポケット。ただし、面ファスナーのフチがちょっと邪魔だった

 

さらに、前段には小物用ポケットも装備。パタリーノと同様に底に沈みがちな消しゴムなどの小物は、ここに収納しておける。このポケットはマチがかなり深くなっているので、ステープラーやマスキングテープ2巻だって入ってしまうのだ。

 

このポケット、ペンケースに戻した際の中身の滑落防止用にマジックテープがついているのだが、試用中、中のモノが固いマジックテープのフチにひっかかり取り出しにくくてイラッ……ということを何度か体験した。ここは、できれば今後改善してほしいポイントだ。

 

あと、これは欠点というほどの話ではないが、磁石でパチッと型ペンケース全般、スチールデスクに置くときは磁石面を下にしないように意識した方がいい(スマ・スタはほぼ間違いなく磁石面が下になってしまうが)。磁力でくっついてしまって、持ち上げる際に思った以上の重量感を感じて「うおっ」と軽く驚くことになるからだ。

 

【著者プロフィール】

きだてたく

最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。