【きだてたく文房具レビュー】高熱でも超音波でもかかって来い! のカッターマット
文房具には、「必要があるから使うモノ」と「使ってみて初めて必要性が分かるモノ」がある。
必要があるから使う……というのは、これを使わないと元から作業が成り立たないモノ。例えばペンがないと字は書けないし、糊を使わないと接着できない。つまり、かなり重要度が高いやつだ。対して、カッターマットなんかは、なくても紙が切れてしまう。新聞とか雑誌を下に敷けばなんとかなるし、気にせず机の上ダイレクトでカッター使っちゃう人だっている。
ところが、実際にマットを使うとカッター刃のもちは良くなるし、なにより切りやすい。一度使えば「あ、やっぱりマットいるんだ」と分かるのだ。
で、もちろん筆者も、カッターマットの必要性は把握していたのだけど、このほど、実はその“さらに先”があったことを知った。使ってみたら、ガラス製カッターマットがものすごく良かったのである。
今回紹介したいのは、ゴッドハンドの「ガラスカッターマット」。名前に聞き覚えがない人もいるかもしれないが、ゴッドハンドというのは文房具メーカーではない。異常に鋭くて切れ味の良いニッパーなどを作っている、模型工作用具のメーカーだ。
そもそも、ガラスがカッターマットに使えるのか? と思われるかもしれないが、それが使えるのである。
実は、かつて印刷所でアナログ製版をしていた頃は、フィルムを切り貼りするのに巨大なガラスの作業台が使われていたのである。また、日本ではあまり普及していないが、海外のクラフト業界では、けっこう使われているとも聞く。
では、普通の軟質樹脂製のカッターマットと比べてガラスの何がいいかって、まず切りやすい。カッターの刃先がガラスの上で滑るので、刃がスルスル動かせる。思った方向に刃を動かせるので、曲線カットや細かい切り抜きなんかもすごくやりやすいのだ。
ただし、その代わりカッターの刃が鈍るスピードはやたら速くなる。刃もちの悪さは意識して、こまめに刃を折る必要があるだろう。
ガラスだと刃がマットの中に沈み込まないというのも、切りやすさのポイント。
軟質マットでギザギザと刃を動かして切ると、曲がり角の頂点に大きくえぐったような穴が開いてしまう。これ、「こういう切り方をしたら、こうなるものだ」と思って今まで気にもしていなかったのだが、実はマットに刃が沈み込んでいたからこその現象だったのだ。
その証拠に、ガラスカッターマットなら切り口がキレイで、穴も開いていない。
あと、これは切りやすさには関係ないのだが、作業中に塗料や接着剤が付いても溶剤で簡単に拭き取れる、というのもガラスの大きなメリットだ。
油性マーカーのインクなんかも、軟質樹脂製カッターマットに付いてしまうと、もう二度と取れないものだが、これも無水エタノールとペーパータオルで拭うと、すっかりピカピカ。ペーパークラフトをする時にのり・接着剤をこぼしたり、塗料がついてしまったりするのはよくあるトラブルだが、それが簡単にリカバリーできるのはありがたい。
サイズ比やカッター刃のランニングコストで考えれば、かなり割高感のあるマットだが、趣味でクラフトをやっている人なら買って間違いはないと思う。性能的には、一度使うともう軟質樹脂製マットに戻れないぐらいのインパクトがある。
ただしかなりの人気商品のため、一度売り切れるとしばらくは品切れが続いてしまう。ネットで見つけたら即買いをオススメしておく。
【著者プロフィール】
きだてたく
最新機能系から駄雑貨系おもちゃ文具まで、なんでも使い倒してレビューする文房具ライター。現在は文房具関連会社の企画広報として企業のオリジナルノベルティ提案なども行っており、筆箱の中は試作用のカッターやはさみ、テープのりなどでギチギチ。著書に『日本懐かし文房具大全』(辰巳出版)、『愛しき駄文具』(飛鳥新社)など。