文房具
2018/10/5 21:30

ヨガや瞑想が難しい人に、描くだけでリラックスできる方法があった!

近年のヨガブームで、瞑想が身近なものになっている人が増えています。イライラしたり、ネガティブ思考になったりしたとき、目を閉じて“今”に集中する瞑想を行うと、心を落ち着かせることができます。一方で、目を閉じてもあれこれと考えごとをしてしまい、瞑想がうまくできないという声も。静止するのが苦手なら、逆に“動く”ことで瞑想状態に入り込める、「ゼンタングル」がおすすめです。

 

ゼンタングルとは、「Zen(禅)」と「Tangle(絡まる)」を合わせた造語で、線や丸などを一定のリズムで描いていくことで、瞑想のようなリラックス効果が得られる米国発の新感覚アートです。ここでは、2011年に日本人初のゼンタングル認定講師となり、国内外でゼンタングルの教室を開催している、さとういずみさんにその魅力を聞きました。

 

ストレスの多い現代人におすすめのアート

「ゼンタングルは、絵を描く才能がないと思っていたり、絵を描く楽しさを知らなかったりする人でも、手軽にはじめられます。1枚の作品を描き上げるのはわずか15分ほど。やるべきことに追われ、ストレスの多い毎日を過ごしている方にこそおすすめです。就寝前の自分時間や家事のすき間にゼンタングルを描くことで、頭の中がすっきりし、心が安らぐのを実感いただきたいです」(さとういずみさん・以下同)

 

基本のストロークはこれだけ!

↑ゼンタングルの基本ストロークは、点、直線、カーブ、S字、丸の5つ

 

ゼンタングルは、2004年にアメリカ、マサチューセッツ州に住むリック・ロバーツとマリア・トーマスが始めたアートの技法です。「リックとマリアは『点、直線、カーブ、S字、丸の5つの基本ストロークが描ければ、誰でもゼンタングルを楽しむことができる』と言っています」

 

カリグラフィーデザイナーとして活躍していたマリアは、ある日、同じパターンを繰り返し描いている間、余計な雑念から開放されて無心になれることに気づきます。17年間もの間、僧の修行をした経験のあるリックは、マリアからその話を聞き、同じパターンを繰り返し描くことで瞑想のような状態になれることを知ります。そのことがきっかけで、このリラックス方法を多くの人に広めたいという二人の思いから、ゼンタングルは誕生しました。

 

リックとマリアがこだわったのは、直線や曲線、丸などの簡単なパターンを繰り返し描くだけで、誰でも気軽に楽しめるアートであること。今では40カ国以上、3000人以上のゼンタングル認定講師が、その魅力を広める活動をしています。

 

ゼンタングルで描く模様(パターン)はさまざまですが、「ペンを持ってゆるやかなアーチ(オーラ)を描く、そしてその上にもう1本、同じようなオーラを描く」「2本のラインの幅が等間隔になるように落ち着いてペン先を動かしていく」など、一つひとつは単純作業なので、ペン先に意識を集中しながらも、非常にリラックスできるのが想像できると思います。

 

「ゼンタングルは、絵がうまくなるためのレッスンではありません。描いているわずか数分でも、リラックス効果が得られるアートです。楽しみ方は無限に広げられますが、今というこの瞬間の自分自身と向き合える時間を楽しみ、“リズミカルにペンを動かすのは気持ちがいいな”とか、“オーラを重ねていくのが好きだな”など、感じたことや自分の好みから得られる気づきやひらめきを味わってください」

 

初心者でも美しい作品が簡単に作れる!

実際にどのように描いていくのか、順を追ってご紹介します。ここでは、いずみさんが講習会でも愛用している、サクラクレパスの『ゼンタングル専用キット』を使いました。ゼンタングル専用の道具をそろえなくても、インクがにじまない程度の厚めの用紙と、ペン先が細めの黒ペン、鉛筆、綿棒などがあれば始められます。

※()内の名称はゼンタングルで使用されている用語です。

 

ゼンタングルを描く手順

1.まずは、9cm×9cm四方の厚紙(ペーパータイル)の四隅に、鉛筆で点を描いて線で結び、外枠を作ります。その中にさらにアルファベットのZの形になるように線(ストリング)を描き、4つのスペース(セクション)に分けます。慣れてきたら、セクションの分け方や数はお好みのアレンジで進めてください。

 

2.「ピグマ」など細字の黒ペンを使って、それぞれのスペースに同じパターン(タングル)を描いていきます。「ゼンタングル専用キット」内にあるパターン例を参考にしてもよいでしょう。ゼンタングルでは消しゴムや定規は使いません。フリーハンドで線を描き、ピグマを使って、失敗を恐れずにどんどんとパターンを描いていきます。

 

3.すべてのセクションにパターンを描き終わったら、鉛筆で模様の隙間を薄く塗ったり、「擦筆(さっぴつ)」で鉛筆の線をぼかしたりしながら陰影をつけ、立体感を出します。このぼかしは、綿棒や指でもできますが、擦筆を使うことで細かい部分まで陰影の調整がしやすくなります。

 

4.完成したら、自分の描いたものを手に取って眺めてみます。天地が逆になるだけでも印象が変わります。このときに思わぬ発見があるかもしれません。描いたときの気持ちを形に残すためにも、イニシャルで作品の向きを決めます。ペーパータイルの空いたスペースに自分のイニシャルをサインします。

 

5.ペーパータイルの裏側には、日付とサインをします。このとき、余白に「描いたときの気持ち」や「描いた場所」などの情報をメモして保存しておくと、日記のような役割に。「病院の待ち時間に描いたら、いつもより待ち時間が早く感じられた!」など、平穏に過ごせた時間への気づきを得ることもできるでしょう。

 

消しゴムや定規を使わずに流れにまかせる

失敗したと思うような形になっても、消さずに描き続けていくと、新たな模様になったり、作品のアクセントにできたりします。定規を使わずにフリーハンドで進めていくのも、自然の流れを生かすアートだからです。「『人生に起きるできごとを消したり、時間を元に戻したりすることはできないけれど、前を向いて歩みを進めていけば、失敗と思ったことから思わぬ好結果を招くこともある』というのを、ゼンタングルを描くことで感じてみてください」

 

ゼンタングルの基本の描き方を押さえたところで、続いてせっかくの自分で描いたゼンタングルをどのように暮らしに取り入れるか、さとういずみさん流の取り入れ方を教えてもらいました。

 

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