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筆記用具
2023/12/30 20:00

買い忘れてない? プロが選んだ2023年マストバイの文房具5点を発表

実質的にウイルスも感染例もなくなったというわけではないが、人の流れはだいぶ元に戻ってきた感のある2023年だった。文房具業界も、昨年の凪ぎ傾向から比べると勢いもやや上向きな印象で、興味深い製品がいくつも登場している。

 

そこで、あらためて一年のシメとして、「そろそろ年末だけど、あの文房具買い忘れてない!?」という注意喚起の意味も含め、2023年発売のマストバイ文房具5選を紹介しようと思う。今年はいろいろとユニークな製品が発売されていただけに、買い逃しているともったいない物が多かった。本記事を見てまだ持ってないものがあったなら、忘れないうちに早めの購入をオススメしたい。

 

2023年はシャープペンシルの当たり年!

あくまでも個人の感想ではあるけれど、2023年はシャープペンシルの年だったと言っても過言ではないと思う。特に、自動で芯を繰り出すオートマチックシャープが人気の主軸だったが、非自動でもユニークな機能を備えた製品が目白押しだった。全体的にバラエティ豊富でハズレなし! という印象で、なんならシャープペンシルだけで今年の5選枠が全て埋まってしまいそうな勢いなのである。

 

そんな中でも、絶対に外せないものを選ぶとしたら、何と言っても、2023年初頭から話題となった、ぺんてる「オレンズAT デュアルグリップタイプ」だろう。商品名の「AT」とはAutomatic Technologyの略で、ノック不要のオートマ機構搭載を表している。

ぺんてる
オレンズAT(オレンズエーティー) デュアルグリップタイプ
0.5mm径
2000円(税別)

 

書き始めにまず軽くノックして芯を出したら、あとは芯1本を書ききるまで自動的に芯を出し続けてくれる。これによって、書けなくなる度にノックを強いられて集中力を削がれることがなくなり、長時間の筆記が続けやすくなったというわけ。「オレンズAT」の特徴は、このオートマ機構の心臓部を従来のものから再設計し、ローコストでも芯出しの精度を維持しているところだ。

↑軸内で芯を固定するボールチャックを金属の削り出しからプラに替え、オートマ機構を低コスト化した。性能はこれでまったく問題なし

 

合わせて特徴的なのが、金属の外装にゴムの突起を組み合わせたデュアルグリップ。重みを活かした低重心化とゴムによるグリップ性能を併せ持ち、さらに見た目のインパクトも増し増しになった、というなんとも印象に残る製品となっている。

↑12角形の金属グリップからゴム突起が突き出したデュアルグリップ。無骨なルックスがとにかく印象的だ

 

新開発のシャープ芯は滑らか高性能

もうひとつ、「オレンズAT」と同時期に発売された新型のシャープ芯「Pentel Ain(ぺんてるアイン)」も、注目の製品として語っておきたい。ぺんてるのシャープ芯としては13年ぶりのブランド刷新ということになるが、ただ単にパッケージを変えただけ……といったものではなく、芯の製法を新たにし、原材料に特殊なオイルを混ぜ込む新製法を用いるなど、性能も大幅に向上した

ぺんてる
Pentel Ain(ぺんてるアイン)
各220円(税別)
芯径0.2/0.3/0.4/0.5/0.7/0.9/1.3

 

シャープ芯は「黒の濃さ」と「芯の減りにくさ」、「書き味の滑らかさ」と「折れにくさ」などがそれぞれトレードオフの関係にある。例えば、濃い芯はすぐに減りやすいし、滑らかな芯は筆記中に折れやすい。これはもう根本的な部分なので仕方のない話なのだが、「Pentel Ain」は新製法によって、それらの性能をかなり高いところでバランスさせた優れものなのだ。

↑なめらかで粉が出にくく、発色クッキリ。書き比べると「違うな…!」と体感できる

 

特に、書き味の滑らかさは素晴らしく、ただスルスルと芯先を動かしているだけで、もうっとりする気持ち良さ。従来の替え芯と書き比べても、おそらくほとんどの人が違いを体感できるはずだ。この滑らかさは、ノンストップで長時間書き続けることになりがちなオートマ機構ととても相性が良い。ぶっちゃけると、オートマチックシャープを使うならこの芯がマスト、というレベルでオススメしたい高機能芯だ。

 

1100円で買える超高性能シャープペンシル

もう一点シャープペンシルを選ぶとしたら、トンボ鉛筆「モノグラフファイン」を紹介したい。こちらはオートマ機構を搭載していないが、その代わりに “ちょっと驚くレベルの高コスパ” であることがポイントだ。

トンボ鉛筆
モノグラフファイン
各1100円(税別)
2色展開

 

まず、口金を含む前軸全体が真ちゅうを削り出した一体成形なので、口金が緩んでガタつくなどのブレ感がゼロ。加えて、この前軸パーツの重量がかなりすごい。机に落とすと「ゴトン」と重い音がするほどで、かなりの低重心化が図られている。また、グリップ部には特殊なソフトフィール塗装が施されており、金属ながらツルツルと滑ることなく、しっとりとした手触りが得られる工夫も。つまり、徹底的な高剛性・低重心・高グリップ性能によって、筆記時の安定感は抜群。もちろん好き好みはあるだろうが、この筆記性能に不安を感じる人はいないのではないだろうか。

↑剛性の高い前軸には、薄くゴム引きをしたような手触りのソフトフィール塗装が施されている

 

さらに、軸後端のMONOカラーリングからも分かる通り、ノックノブ内にはφ3.6mmの繰り出し式MONO消しゴムを搭載。しかも、この消しゴムは軸を逆さすると、内蔵のスイッチによって自動的にノックノブがロックされる。ゴシゴシと圧をかけて消しゴムをかけてもノブが押し込まれず、スムーズに字を消せるのは地味に嬉しい機構である(ちなみに、ペン先を下に向ければ、ロックは自動解除)。

↑軸を逆さにするとノック周りがロックされる「ファインイレース機構」を搭載

 

これだけ機能が盛り込まれていて、価格が1100円なのだ。前述した通り「コスパ高すぎ!」としか言いようがないアイテムであることが、お分かりいただけたであろう。

 

たっぷりインクで書きやすい静音ボールペン

ボールペンにもいくつか注目したい製品があるが、個人的にハマッたのが、サンスター文具のゲルボールペン「ミュートンである。こちらは、一昨年からのペントレンドである静音機構を搭載し、ノックしてもカチカチと大きな音がしない、というのが最大の特徴となっている。

サンスター文具
mute-on(ミュートン)
240円(税別)
8色展開

 

一般的なノック式ボールペンと比較すると、ノック音が20db以上小さく、普通の環境下ならノックした本人に聞こえるかどうかギリギリ、という静音ぶり。これなら、図書館のような静かな場所でも、なんの気兼ねもなくペン先の出し入れができるだろう。各社から発売されている静音ボールペンの中でも、ミュートンはトップクラスの静音性能と言って間違いはなさそうだ。

↑カチッ! という耳障りな高音域がカットされており、ノック音はほぼ意識できないレベル

 

と、静音性の話をしてきたが、実は筆者がミュートンを気に入ったのは、静音性能ではなく書き味の良さの部分だったりする。とにかくたっぷりとインクが出るつゆだく系のフローで、とても軽く、サラサラと気持ちよく書けるのだ。つまり、筆者のように書き味の良さで選んだとしても、ついでに周囲にノック音で迷惑をかける心配も無くなるわけで。これは、まさに選ぶ価値のあるボールペンだと自信を持っておすすめできる。

↑静音性もありがたいが、個人的には書き味のサラサラ感も素晴らしいと感じた

 

今年も進化が止まらない開梱カッター

さて、筆記具ばかりが続いたが、5つ目に紹介したいのはハサミ兼開梱カッターのコクヨ「2Way携帯ハサミ<ハコアケ>」(以下、携帯ハコアケ)だ。こちらは、開梱用ハサミ「ハコアケ」シリーズから、ペンケースに入れて携帯できるモデルとして発売されたものである。

コクヨ
2Way携帯ハサミ<ハコアケ>
左:チタン刃 1200円(税別)
右:スタンダード刃 850円(税別)

 

フォールディングナイフの柄のような形状で、本体側面にあるスライダーを動かすことで、連動して本体内から刃がニュッとせり出す。このスライダーを中央で止めると開梱カッターモード、最奥まで押し込み刃が飛び出すとハサミになるという仕組みだ。

↑スライダーの押し込みによってモードチェンジ!

 

開梱カッターモードでは、露出した刃を梱包テープに突き刺して引き切ることで開梱作業を行う。このとき、段ボールの上面および側面にカッター刃が最適な角度で入るよう、本体にガイド機構が付いているのがポイント。これがなかなか効果的で、開梱カッターを使い慣れてない人でも手間取ることなく、サクッと素早く作業を行うことができるのだ。ハサミの方も、硬いPPバンドが切れるぐらいの性能があり、これひとつ手元にあれば、家庭レベルの荷開けなら間違いなくかなり効率的になるだろう。というわけで、商品名には “携帯” とあるが、個人的には自宅の玄関脇に備えておくことをぜひオススメしたい。

↑ナナメになった本体底部を梱包テープに当てると、ジャストな角度で刃が入るガイド機構が便利

 

最後に、来年の文房具動向予想も添えておこう。確度が高そうなのは、「来年もシャープペンシルが面白そう」という辺りだ。ぺんてるが「オレンズAT」用に開発したオートマ機構の心臓部(ボールチャック)は、おそらく次に出てくる新製品にも搭載されるはず。より廉価な量産機になるか、オートマ+αの高機能機になるかは定かではないが、どちらにしても興味深いシャープになることは間違いない。

 

また、これだけオートマチックシャープの注目度が高まっているにも関わらず、まだ現時点で参戦していない筆記具メーカーがあるのも気になるところだ。

 

他にどのジャンルが盛り上がるかはまだ分からないが、2024年も引き続き新製品をチェックし続けていきたい。