スバルが1997年から販売しているSUVが「フォレスター」。その6代目が2023年11月に米国で発表されていましたが、日本での予約受付がついに4月3日より始まりました。今やスバルの基幹車種となったフォレスターの6代目はどんなクルマに仕上がったのか? プロトタイプを袖ケ浦フォレスト・レースウェイ(千葉県)で試乗してきました。
◾️今回紹介するクルマ
※試乗グレード:スポーツEX、プレミアム S:HEV EX
価格:404万8000円〜459万8000円(税込)
この記事でわかること
SUVらしいワイルドなデザインに変貌
フォレスターは日本でも人気のSUVですが、それを大きく上回る人気を獲得しているのが北米です。実はフォレスターの総販売台数の約7割が北米であり、その実数は日本の5.5倍にも達します。これは驚きでした。日本車にもかかわらず、日本よりも1年以上も前に北米で発表された理由もここにあるのでしょう。
それだけにフォレスターの開発は、北米市場を意識して開発されたと言っても過言ではありません。頑丈かつ堂々としたワイルドなデザインで、その存在感は抜群。ヘッドライトはスバルのアイデンティティともなっている「ヘキサゴングリル」を基本に、上部にLEDのアクセントライトを、その下にはヘッドライトを配置。フロントから見た印象は押し出し感が強く、まさにアメリカンデザインと言えます。

ボディの側面は、これまでサイドウインドウの後端を持ち上げていましたが、水平基調へと変更されました。また、リアエンドのテールランプは左右にまで回り込んだデザインで、その左右はスバルのエンブレムを中心に太いラインで結ばれ、これがリアビューをより引き締めています。全体としてスパルタン志向の強いデザインになったといえるかもしれません。

400万円台オーバーの強気な価格設定も納得の理由
日本で展開されるラインナップは基本的に3種類で、アウトドア志向の「X-BREAK」と上質な装備を施した「プレミアム」には2.5リッター・ストロングハイブリッドのS:HEVを組み合わせ、加えて「スポーツ」にはこれまでの1.8リッターターボを組み合わせました。さらに、末尾に「EX」が付くグレードには、より高度な運転支援を行う「アイサイトX」が標準装着されるのも見逃せません。
気になる価格ですが、X-BREAK S:HEVで420万2000円、1.8リッターターボの「スポーツ」で404万8000円。さらに「EX」になると価格はアップすることになります。これまでフォレスターは、本格的なSUVを手軽に手に入れられるのが魅力と感じていましたが、400万円の大台が当たり前になったとなれば少々複雑な気持ちにはなります。
では、どうしてここまで価格が上がったのでしょうか? もちろん、昨今の原材料費の高騰が要因であることが理由の一つであることは間違いありません。さらに上位モデルについては2.5Lのストロングハイブリッドを搭載したことも大きな理由でしょう。しかし、それ以外にも納得いく装備が新たに搭載されていることがわかりました。その筆頭がスバルが得意とする安全装備の充実です。
歩行者保護エアバッグの容量アップでサイクリストに対応
スバルといえば、先進安全装備(ADAS)の要である「アイサイト」の搭載で知られます。新型フォレスターに機能を高めた最新のアイサイトが装備されているのは言うまでもありませんが、それに加えてサイクリスト保護も可能とした歩行者保護エアバッグの最新バージョンを搭載しているのが進化点です。
歩行者保護エアバッグは、自車が歩行者と前面衝突した際に、ボンネットとフロントウインドウの隙間から展開してフロントのAピラーなどの硬い部分を覆って歩行者のダメージを軽減するというもの。新型フォレスターでは、サイクリストに衝突した際により高い位置に頭部がぶつかる可能性が高くなるとして、エアバッグの容量を増やして展開エリアを拡大。歩行者だけでなくサイクリストにまで万一の安全性を高めたのです。スバルによれば、これは「おそらく世界初の装備」ということでした。

それ以外にも、11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステムは、ナビゲーション機能を内蔵するなど従来の機能を引き継いだものの、割高となっていることが多いETC2.0車載器キットを標準装備。高速道路上で交通情報提供を行っていた電波ビーコンはすでにサービスを終了しており、その意味でもうれしい装備となるでしょう。


いよいよ試乗! ストレスフリーな走りで超快適な2.5Lストロングハイブリッド
車内に乗り込むと、上質な雰囲気に包まれているのがわかります。Premiumにはダッシュボードやドアトリムにソフトパッドが貼られ、シート色に合わせたタン色が随所に施されて、プレミアム感も充分。本革ステアリングのタッチも心地よく、質感を高めようと細部にまで気配りがなされたことを実感します。シートサイズもたっぷりとしており、ランバーサポートも備わっているので長距離走行でも疲れは出にくいのではないかと思います。



後席は、身長168cmの筆者が運転席を最適位置に合わせた状態で、大人4人が楽に座れる広さ。頭上の空間にも余裕があり、水平基調のウインドウの効果もあって広々とした空間を感じさせます。バックシートの高さも充分で、リアシートでの居住性はSUVらしいゆったりとした居心地の良さを感じさせました。


運転席に座るとボンネットはやや高めでしたが、ダッシュボード上面が平らなこともあって前方視界は良好です。水平基調としたサイドウインドウの効果もあって、斜め後方の視界も十分確保されていました。運転はかなりしやすい印象です。
最初に試乗したのは2.5Lストロングハイブリッド(S:HEV)の「プレミアム S:HEV EX」でした。2.5Lの排気量の拡大と電動モータによるアシストのおかげもあり、スタート直後からストレスフリーで加速していくのは、まさに気持ちいいの一言。試乗前はパワーユニットの重量増が、ヘアピンなどで影響が出るのではないかと推測していましたが、実際に走ればそんな心配は無用。カーブでの挙動変化が穏やかであったため、思った通りのコースをトレースでき、存分に運転を楽しむことができました。

一方の1.8Lターボエンジンの「スポーツEX」は、アクセルを踏み込んだところでターボエンジンらしい力強さを感じさせます。パワーユニットが軽いことも幸いしてフットワークの良さも実感でき、4輪の接地性では1.8Lターボエンジンの「スポーツEX」に軍配が上がりそうです。ただ、ターボが効き出すまでに若干のラグがあり、低速域での乗り心地の硬さも気になるところではあります。とはいえ、好みに応じて明らかにコンセプトが異なる3つのタイプから最良の一台が選べるのは新型フォレスターの魅力の一つでしょう。

その音を聴けば納得の「ハーマンカードンサウンドシステム」
最後に、新型フォレスターにオプションで用意された「Harman/Kardon(ハーマンカードン)サウンドシステム」についてお伝えします。
ハーマンカードンは「JBL」や「マークレビンソン」などを持つハーマンインターナショナルのブランドの一つです。新型フォレスターに搭載されたシステムは、専用品ではないものの、カーゴスペースにサブウーファー(200mm口径)を備えた11スピーカーを8ch・576WのDSP付クラスDアンプによって駆動。新型フォレスター向けのチューニングが施されており、車体の剛性アップによって導き出された静粛性は、このシステムがフルに活かせる環境をもたらされたと言っていいでしょう。

そのサウンドを試聴すると、透明感のあるスッキリとした解像感があり、伸びやかなボーカルは聴いていてとても心地が良い。ジャズ系のベース音が少し強めに出るサウンドも、低域が不必要に出しゃばらないため、気持ちよく聴けたのです。しかも、X-BREAK S:HEVを除く全車に装着可能で、価格はオプションの組み合わせによりますが13万2000円からの設定になるとのこと。これは魅力的なオプションとなることは間違いないでしょう。


SPEC【スポーツEX】●全長×全幅×全高:4655×1830×1730mm●車両重量:1640kg●パワーユニット:1.8L DOHC 直噴ターボ “DIT”●エンジン最高出力:130kW/5200〜5600rpm●エンジン最大トルク:300Nm/1600〜3600rrpm●WLTCモード燃費:13.6km/L
SPEC【プレミアム S:HEV EX】●全長×全幅×全高:4655×1830×1730mm●車両重量:1750kg●パワーユニット:2.5L DOHC 16バルブ AVCS 直噴●エンジン最高出力:118kW/5600rpm[モーター最高出力:88kW]●エンジン最大トルク:209Nm/4000〜4400rrpm[モーター最高出力:270Nm]●WLTCモード燃費:18.4km/L
【フォトギャラリー(画像をタップすると閲覧できます)】
撮影/宮越考政