夏真っ盛り、お盆も間近に迫ってきた。貴重な休みを利用して、家族サービスをしようと新幹線を利用した旅のプランを計画している方も多いことだろう。とはいえ、この季節になるとどこへ行っても混みがち。さらに繁忙期ということで新幹線を含め旅費が割高になる。「今年も家にいるのが一番だな」なんてことにもなりがちだ。
しかし、割高になる季節でもよりおトクに新幹線に乗る方法はある。そこで本稿では、さらに席が取りにくいピークシーズンでも快適に旅をする方法を紹介したい。夏休みに利用することが多い、新幹線を賢く使って楽しい旅を満喫しよう。
割高になる新幹線料金と“しばり”をおさらい!
夏休み期間、新幹線の料金で高くなるのは指定席特急料金だ。7月21日〜8月31日の間は、通常期よりも200円増しとなる。自由席との価格差は通常期520円だが、夏休みとなると720円の差が付く。さらに東海道・山陽新幹線と九州新幹線の乗継ぎならば400円割し、秋田新幹線、山形新幹線の両区間はさらに340円増しに。特に家族連れでの乗車となると、この差はとても大きい。
さらに夏休み期間のなかでも、お盆時期の8月11日〜20日はさまざまなおトクなきっぷやサービスが使えなくなる。もしくはおトクな割引がなくなる。使えなくなる代表的なきっぷやサービスは次のとおりだ。
●レール&レンタカー(利用は可能だが、乗車券の20%割引などがない)※出発日が8月11日〜20日に限る
●さまざまなフリーきっぷ
●新幹線回数券
JR東日本であれば「週末パス」「首都圏週末フリー乗車券」などが使えなくなる(ほかJR各社のフリーきっぷの多くが同様)一方で、首都圏フリーきっぷの「休日おでかけパス」「東京フリーきっぷ」などは利用可能。要は近距離用のフリーきっぷはOKというわけだ。近場の旅に割り切るというのも、この季節の過ごし方としてはベターなのかも知れない。
また、割引された新幹線回数券は同期間には利用できない。金券ショップなどで販売されているものは、こうした回数券が多いので注意したい。
意外にこうした繁忙期の“しばり”は多い。ではこの期間、使える割引サービスはないのだろうか?
8月11日〜20日の期間でも割引されるサービスも!
その1)片道601km以上ならば「往復乗車券」が有効
JRグループでは営業距離が601km以上の区間であれば、往復料金が1割引となる(10円未満は切り捨て)。これは8月11日〜20日の旅行であっても適用される。これを使わない手はない。
東海道・山陽新幹線ならば、東京駅を起点にすれば西明石駅より先が600.1kmを越える距離となる。また、新大阪駅からの場合は博多駅(新大阪駅から623.3km)より先がその距離にあたる。さらに東北新幹線ならば、二戸駅(東京駅から601.0km)より以北が往復乗車券を購入した方がお得。ちなみに北陸新幹線、山形新幹線は全線乗車しても600.1km以内なので往復乗車券の割引は適用されない。
その2)満席時に発行される「立席特急券」で旅するのもひとつの手
JR東日本の新幹線には自由席がない列車がある。東北・秋田新幹線「はやぶさ」「はやて」「こまち」、北陸新幹線「かがやき」がそれに該当し(自由席券での乗車は不可)、この4列車のみ満席になると520円引きの「立席特急券」が発売される。いわゆる、デッキなどに立って乗れる特急券だ。
自由席のようにどの列車でも乗車可能という券ではなく、乗る列車が指定される特急券だ。自由席の場合、座れないと損した気分になりがちだが、立席と割り切れば、そうしたストレスも生まれないだろう。
また、盛岡駅〜新函館北斗駅間の各駅相互間で乗車できる特定特急券(指定券から520円引き)も販売されている。こちらは座席指定こそできないが、席が空いていれば座ることが可能だ。もちろん、座席を指定した人が乗車してきたら席を立たなければいけない。立席特急券は立って乗るのが基本ルールだが、特定特急券と同じで、同区間で空きがあれば座っていても問題はないようだ。
その3)「プラスEX」or「エクスプレス予約」も活用したい
プラスEXは東海道新幹線のみ、エクスプレス予約は東海道・山陽新幹線のネット予約サービスだ。いずれも、早めに予約すると割引率がアップする「早得」予約ができる。また、通常の乗車でも通年を通して割安となりおトクだ。年会費がかかるものの、たびたび東海道・山陽新幹線を使う人は利用した方が賢明だろう。
筆者も使っているが、列車の変更を何度おこなっても無料、さらに号車指定、席指定も簡単にできるのでとても便利なサービスだ。9月2日からはプラスEXとエクスプレス予約のサービスが統合されるので、さらに便利になる。
とはいえ問題もある。カード発行に時間がかかるので、すぐに使いたい、というわけにいかない。カード発行に最低10日以上の期間が必要になる。よって、いまから申し込みをしても、単純計算でもお盆明けの8月中旬以降にカードが届くことになってしまう。
さらに特定市内駅の利点が含まれていない。特定市内駅とは例えば、東京地区でいうと23区内の駅のこと。東京駅まで遠距離きっぷを購入すると通常時は23区内のJR駅までの運賃が含まれる。ところがEXカード、エクスプレス予約では、新幹線の下車駅までの分しか乗車券が含まれない。他駅へ乗り継ぐ必要がある場合は、その分プラスαの運賃が必要になる。乗継ぎ区間が長い場合は損することもあるため、使い分けが肝心なシステムといえるだろう。
その4)JR東日本の列車なら「えきねっと」が便利
JR東日本の新幹線が走る路線ならば「えきねっと」が便利だ。希望列車の空き具合がすぐにわかり、また号車、席などの指定もできる。通常期に限定されるが、乗車13日前までの予約は「お先にトクだ値」は最大25%割引となる。通常期、繁忙期に関わらずポイント加算も行われる。
会員登録もネットで簡単にできる。ただしEXカードなどと異なり、JRの窓口の予約と同じで、1回の変更は無料だが、頻繁に変更というわけにはいかない。払い戻しも手数料が必要となる。乗車前に駅でのチケット受取が必要となる(一部の列車ではチケットレスサービスがあり)。
とはいえ、スマホで列車の空き具合などが逐次、確認できるという。会員登録しておけば旅先でも大きなメリットになる。
繁忙期の自由席・指定席の賢い獲得法&利用法
お盆シーズンでも混んでいる列車と、比較的、混雑度が低い列車がある。どうして、そのような差ができるのだろう。また、どのような列車を選べば、自由席が確保しやすいのだろうか。すでに満席となっている列車の指定席は、これからでも確保することができるのか。最後に、繁忙期の自由席、指定席の賢い獲得法&利用法を探ってみたい。
狙い目1:「のぞみ」はなるべく臨時列車を狙いたい
お盆シーズンは利用者が増えるだけに、列車自体もかなり増発される。さらに「のぞみ」ならば東京〜新大阪駅間のみ運転される列車があり、こちらは狙い目となる。上りも新大阪駅発があり、始発駅の新大阪駅から乗車すれば自由席も着席できる確率がぐっと高まる。
狙い目2:「ひかり」を使うのもひとつの方法
「こだま」は各駅停車のため、所要時間がかなりかかる。一方、「ひかり」は停車駅が「のぞみ」に比べて多いものの、所要時間に極端な差はなし(東京〜新大阪間で20分〜40分程度遅い)。自由席も上りならば、途中の米原駅や岐阜羽島駅で降りる人があり、着席しやすくおすすめだ。
狙い目3:近くまでなら「なすの」「あさま」「たにがわ」がおすすめ
JR東日本の東北新幹線や北陸新幹線ならば、東海道新幹線の「こだま」にあたる各駅停車して走る列車が比較的空いている。そして、自由席の席数も多い。東北新幹線ならば「なすの」や北陸新幹線の「あさま」、上越新幹線の「たにがわ」がそれにあたる。近くへの急がない旅ならば、これらの列車の自由席を利用してのんびり旅をしてみてはいかがだろう。
狙い目4:乗車2日前のキャンセルを狙う
特急券の払い戻しは前々日までは所定の手数料で払い戻しできるが、前日になると手数料+料金の30%が必要となる。そのため前々日にキャンセルする人が少なからず出る。自由席でなく、なるべく指定席で座って旅がしたいときは、前日にチェックすると空きが見つかることがある。
ただし、キャンセル券の販売は5時30分からの解禁。みどりの窓口も、ネットなどの予約も5時30分からできるようになる。繁忙期に、座って旅するためには、早朝に起きて券の確保に励む、といった“努力”が必要かも知れない。