ベテラン自動車ライターの永福ランプこと清水草一とフリーエディターの安ドが、深いような浅いようなクルマ談義をするクルマ連載です。今回は、高級クロスオーバーSUVの先駆けとして10年以上前に誕生したパイオニア的モデルの最新型をチェック。清水さんが注目した「ディーゼルエンジンの静かさ」とは?
【登場人物】
永福ランプこと清水草一
日本中の貧乏フェラーリオーナーから絶大な人気を誇る大乗フェラーリ教の開祖。自動車評論家としてはもはやベテランの域で、様々な自動車専門誌や一般誌、Webなどに寄稿し、独自の視点でクルマを一刀両断しまくっています。本連載をまとめた「清水草一の超偏愛クルマ語り」も先日発売に。
安ド
元ゲットナビ編集部員のフリーエディター。MJブロンディを慕い「殿」と呼んでいます。
【今回のクルマ】BMW X3
SPEC【xDrive 20d M Sport】●全長×全幅×全高:4720×1890×1675㎜●車両重量:1860㎏●パワーユニット:1995㏄直列4気筒DOHCディーゼルエンジン●最高出力:190PS(140kW)/4000rpm●最大トルク:40.8㎏-m(400Nm)/1750〜2500rpm●カタログ燃費:17.0㎞/ℓ●639万〜710万円
「ディーゼルエンジンの静かさに感服!」
安ド「殿! 世界的なSUVブームですね!」
清水「うむ。よきにはからえ」
安ド「それはどうでもいいという意味で?」
清水「個人的にはな」
安ド「これまで47台もクルマを購入されてきた殿ですが、SUVは1台も買われていないとか」
清水「オフロード趣味がないのでな。が、もうひとつ理由がある」
安ド「スポーツカー好きの殿ですから、重心が高い、ですか?」
清水「いや、現代のSUVは重心の高さをまったく感じさせぬ。このX3も走りは抜群。実に安定していたぞ」
安ド「では何が?」
清水「SUVは背が高いぶん、重い。そして空気抵抗が大きい。よって燃費が悪くなる。節約を何よりも重視する私としては、SUVは選択外となる」
安ド「47台も買ってて、節約もないと思いますが」
清水「それを言うでない」
安ド「ははっ。言われてみれば確かにこのX3、2ℓディーゼル搭載モデルでしたが、今回の燃費は実質11㎞/ℓにとどまりました」
清水「であろう。何を隠そう現在の我が愛車は、同じく2ℓディーゼルを積むBMW 320D。そちらは平均で17㎞/ℓ走っておる」
安ド「それはロングドライブが多いからでは?」
清水「それを言うではない」
安ド「失礼しました。節約を優先するならセダンやステーションワゴンが有利ですよね。ただ私としましては、SUVのカッコ良さは捨てがたいです!」
清水「いや、この顔はブサイクである。あまりにもキドニーグリルがデカすぎる。これではまるでダッジラムだ」
安ド「そんなことはありません!新型は新鮮でイマっぽいです!」
清水「見解の相違であるな。ただ今回、この新型X3に心底感じ入ったことがある」
安ド「ジェスチャーコントロールのレスポンスが良くなった、とかですか?」
清水「そんなものは知らぬ。私が感服したのは、ディーゼルエンジンの静かさだ」
安ド「そう言えば、ガラガラ音がほとんど聞こえませんでした」
清水「私の320dは3年前の中古車。アイドリングでそれなりにガラガラ音が出るが、短期間でこれほど進化するとは驚きだ」
安ド「ディーゼルも進化してるんですね!」
清水「世の論調としては、ディーゼルはオワコンでこれからはEV一本だが、まだまだどうして。最新のディーゼルは、この重いSUVをわずか2ℓの排気量で軽々と加速させ、静かさもほとんどガソリン車と変わらず、燃費では大きくリードする。これがそう簡単に死ぬはずがない!」
安ド「なるほど!」
清水「私が新型X3で確信したもの。それはディーゼルの存続だ」
安ド「肝に銘じます!」
【注目パーツ01】コネクテッド・ドライブ
クルマが世界とつながるサービス
ニュースや天気などの各種情報収集、より正確なナビゲーションなどが実現でき、スマホからエアコンの起動やロックの解除などもできるようになります。似たような機能は各社がやってますが、輸入車ではBMWが初でした。
【注目パーツ02】キドニーグリル
大型化で大きく表情を変えた
BMWのフロントデザインを象徴するのが、2つのグリルを横並びにした“キドニーグリル”。新型では大型化されて、その存在感を高めています。ダイナミックで立体的にはなりましたが、個人的には繊細さがなくなりガッカリです。
【注目パーツ03】ラゲージ・アンダートレイ
自立したまま便利に使える
荷室の床下にスペースがあるのは、スペアタイヤを必要としなくなった近年のSUVでは当たり前のこと。が、X3では床下のフタ部分にダンパーが付いていて勝手に下がってきません! 高級車のボンネットと同じです。金かかってます。
【注目パーツ04】ジェスチャー・コントロール
空間上の手の動きを感知
ディスプレイの前で指をクルクル回したり、手首を動かしたりといった所作をするだけで、電話やボリュームなどを画面に触れずに操作することができます。ちなみに手がディスプレイから30㎝くらい離れていても操作可能でした。
【注目パーツ05】ウェルカム・ライト
光が便利さと雰囲気を演出
夜暗いなかでX3に乗ろうとすると、便利な照明が自動で2か所に灯ります。ひとつはドアハンドル(上)で、もうひとつは地面(下)。後者は「ウェルカム・ライト・カーペット」と呼ばれるもので、独特な模様で乗員を車内に導いてくれます。
【注目パーツ06】アンビエント・ライト
室内の高級感を高める照明
インテリアは、まるでおしゃれなバーのように間接照明で照らされます。ライトカラーは11パターンが設定されていて、気分に合わせて選択することができます。が、そのうち面倒になって変えなくなってしまうでしょう。
【注目パーツ07】ステアリング
高級感と使用感を両立
“ウォークナッパ”と呼ばれるレザーを表面に使った高級感あふれるステアリングです。このMスポーツだけは10時10分の位置に、親指を引っ掛ける出っぱり「サムレスト」が付いています。握ってみるとすごく太くてたくましいです。
【注目パーツ08】エア・ブリーザー
SUVのアクティブ感を強調
いかにもSUVらしいアクティブでワイルドな雰囲気を演出するのが、このフロントタイヤ後方に彫られたスリットです。よく見てみると穴は空いてなくてただのダミーのようですが、これでも空気抵抗を低減させる効果があるそうです。
【注目パーツ09】バックモニター
2画面2方向表示で車庫入れを簡単に
車両後方を確認できるバックモニターや、真上から見た図が表示されるトップビューモニターなどは多くのクルマに付いていますが、X3は両者を同時に表示できます。ディスプレイが横に長いって便利ですね。
【これぞ感動の細部だ】ディーゼルエンジン
パワーアップしつつ、静かに
新型X3は、ディーゼルとガソリン2種類のモデルが展開されています。今回テストしたのは先行販売されているディーゼル。ディーゼル自体の特徴でもある強大なトルクを発揮し、この大きく重いボディをものともせずグイグイ押し出すように走ります。実は私の愛車もBMWのディーゼルですが、やはり最新型は音も断然静かで、弱点がありません。
【参考にした本】
タイトル:清水草一の超偏愛クルマ語り
価格:926円+税