SUVは世界のクルマ市場で大きなトレンドとなっていますが、日本での主流は使い勝手の良いコンパクトSUVです。トヨタ C-HRから王座奪回を狙うホンダ ヴェゼルは改良され、三菱はエクリプス クロスでスズキはクロスビーで参入。覇権を握るのはどれでしょうか? プロがシビアな目でチェックしました。
※採点はすべてガソリンエンジンの4WDモデルで行いました。グレードは、エクリプス クロスがG、ヴェゼルがG Honda SENSING、クロスビーがHYBRID MZ、C-HRがG-T
【解説する人】
モータージャーナリスト 岡本幸一郎さん
動画メディア出身の自動車評論家。今年2人目の子どもが誕生し、家族のためのクルマ選びを検討中です。
小型SUVのトレンドは個性的な“攻め”のデザイン
かつては大柄なモデルが主流だったSUVですが、ここ数年はダウンサイジング化が顕著。デザインも多様化しており、個性的なモデルが目立つようになりました。オーソドックスなスタイルのヴェゼルに代わって、スポーティなC-HRが2017年のSUV販売台数1位となったのは、その象徴です。
三菱自動車が満を持して送り出したエクリプス クロスは、シャープかつダイナミックな佇まい。スズキのクロスビーは、同社の軽自動車ハスラーを踏襲したポップな仕様。好き嫌いが分かれそうな“攻め”のデザインですが、いずれも高い人気を博しています。
【その1】三菱4年ぶりとなる新型車は大胆なデザインが特徴
三菱自動車
エクリプス クロス
253万2600円~309万5280円
同社では4年ぶりとなる新型車で、発売前から約5000台もの受注を集めた注目モデル。斬新なリアデザインが特徴です。●全長×全幅×全高/車両重量:4405×1805×1685㎜/1550㎏(4WD・G)【駆動方式:FF、4WD】【乗車定員:5名】【総排気量:1498㏄】【カタログ燃費:14.0㎞/ℓ(4WD)】
クーペのようなルーフ形状や大胆なサイドラインが特徴。上下2分割されたリアウインドウも印象的です。
運転席横にはタッチパッドコントローラーを搭載。運転姿勢のままでオーディオシステムなどの操作が可能です。
エンジンは1.5ℓ直列4気筒直噴ターボ。独自の四輪制御技術を採用し、安定感のある走りを実現します。
本車は世界約80か国で展開されるグローバルモデル。そのため、インパネデザインはコンサバ仕様です。
乗員まわりのスペースには十分な余裕を確保しています。リアシートはスライド&リクライニングが可能。
【JUDGEMENT】
独自技術で充実の走りと高い安全性能を実現する
衝突被害ブレーキシステム[FCM]など「Mitsubishi e-Assist」が高い安全性能を実現。デザインは好みが分かれそう。
【その2】走りと安全性を高めて王者への返り咲きを狙う
ホンダ
ヴェゼル
207万5000円~247万5000円
2013年登場のベストセラー車がマイナーチェンジ。安全運転支援システム「ホンダセンシング」が全車標準搭載となりました。●全長×全幅×全高/車両重量:4330×1770×1605㎜/1180㎏(4WD・G)【駆動方式:FF、4WD】【乗車定員:5名】【総排気量:1496㏄、1496㏄+モーター】【カタログ燃費:19.6㎞/ℓ(4WD・G)】
力強いSUVスタイルを磨いたデザイン。インラインLEDライトを採用するなど先進性も高められています。
ミニバンのヒットメーカーらしく使い勝手の良さが光る荷室空間。小型ボディながら容量を確保しています。
ハイブリッドシステムが改良され、加速フィーリングがスムーズに。ガソリンエンジン車も燃費が向上しました。
Apple CarPlayやAndroid Autoに対応。運転中のオーディオ再生や通話操作を容易にします。
形状が改良されたフロントシートはホールド性や快適性を向上。ステッチが変更され、質感も高められました。
【JUDGEMENT】
走りの課題を改善しつつリーズナブルな価格をキープ
足回りを改善し、乗り心地の硬さを解消。デザインには少し野暮ったさもありますが、200万円台で買えるのはおトクです。
【その3】大人の遊び心をくすぐるポップなデザイン
スズキ
クロスビー
176万5800円~214万5960円
同社の人気軽自動車ハスラーのデザインを生かしつつボディサイズを拡大。エンジンは1ℓターボのみで、4WDも用意します。●全長×全幅×全高/車両重量:3760×1670×1705㎜/960㎏(HYBRID MZ)【駆動方式:FF、4WD】【乗車定員:5名】【総排気量:996㏄】【カタログ燃費:20.6㎞/ℓ(4WD)】
ハスラー同様の丸いヘッドライトと横長グリルが特徴。ぶ厚いフェンダーモールがSUVらしさを強調します。
荷室の表面には撥水素材を採用し、濡れたものでも気にせず積み込めます。リアシートは5:5の分割可倒式。
1ℓ直3ターボエンジンは6速ATとの組み合わせ。最低地上高の高さも相まって、悪路走破性はまずまずです。
コンパクトですが全高を高くして乗員の居住性を確保。シートにはボディカラーとマッチしたパイピングが施されます。
ポップなデザインのインパネ。自動ブレーキや誤発進抑制機能など安全装備は十分。
【JUDGEMENT】
縦方向に広がりを感じる室内スペースは独自の魅力
荷室の奥行きが短く、装備の充実度で劣ります。ウインドウが立っていることで広さを感じさせる独特の居住空間が面白いですね。
【その4】プリウスと共通の車体構造で高い運動性能を実現
トヨタ
C-HR
251万6400円~292万9200円
現行型プリウスと共通の車体構造を採用し、ハイブリッドとターボエンジンを選べる。2017年の販売台数はSUVで1位に輝きました。●全長×全幅×全高/車両重量:4360×1795×1565㎜/1470㎏(G-T)【駆動方式:FF、4WD】【乗車定員:5名】【総排気量:1196㏄、1797㏄+モーター】【カタログ燃費:15.4㎞/ℓ(4WD・G-T)】
絞り込まれたスタイリングはダイヤモンドがモチーフ。ツートンカラー仕様(メイン写真)は昨夏に追加。
プリウスでも採用する同社の新型プラットフォーム(車体骨組)「TNGA」を採用。運動性能を高める効果があります。
1.8ℓエンジン+モーターのハイブリッド(写真)と、1.2ℓターボエンジンを用意します。
オーソドックスながらスポーティな雰囲気。衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を備えます。
上級モデルでは、ファブリックと本革を組み合わせた上質なシートを採用。室内空間はさほど広くはありません。
【JUDGEMENT】
視界や居住性を犠牲にしてスポーティなデザインを実現
ハンドリング性能の高さが好印象。後方の視界や後席の乗降性は、デザインのために割り切って犠牲にしています。