【路線案内1】盛駅をスタートして山側の駅や施設を見てまわる
貨物輸送専用の鉄道路線なので、もちろん列車への乗車はできない。そこでローカル線の旅としては異色だが、クルマで路線を見て回ろう。まずは盛駅を起点に山側の路線へ。
出発は盛駅から。岩手開発鉄道の盛駅は、JRや三陸鉄道の盛駅の北側に位置する。旅客営業をしていた時代のホームが残る。1両編成のディーゼルカー用に造られたホームは短く小さい。だが、四半世紀前に旅客営業を終了したのにも関わらず、待合室はそのまま、「盛駅」の案内もきれいに残っている。構内には立入禁止だが、盛駅の北側にある中井街道踏切から、その姿を間近に見ることができる。
中井街道踏切から駅と逆方向を見ると、岩手開発鉄道の本社と、その裏手に盛車両庫があり、検査中の機関車や貨車が建物内に入っているのが見える。
ここから路線は、終点の岩手石橋駅へ向けて、ほぼ盛川沿いに進む。クルマで巡る場合は、国道45号から国道107号(盛街道)を目指そう。この国道107号を走り始めると、盛川の対岸に路線が見えてくる。
途中に駅が2つあるので、立ち寄ってみたい。
まずは長安寺駅。国道107号から長安寺に向けて入り、赤い欄干のある長安寺橋を渡る。すぐに踏切がある。このあたりから長安寺駅の先にかけて、撮影に向いた場所が多くあり、行き来する列車の姿も十分に楽しめるところだ。
長安寺駅付近で上り下り列車を見たあと、次の日頃市駅を目指す。道路はしばらく路線沿いを通っているが、その後に、国道107号と合流、しだいに周囲の山並みが険しさを増していく。
列車の勾配もきつくなってくる区間で、長安寺駅前後が9.2パーミル(1000m間に9.2mのぼる)だったのに対して、次の駅の日頃市駅前後は19.6パーミルとなっている。
日頃市駅は大船渡警察署日頃市駐在所のすぐ先を左折する。細い道の奥に日頃市駅の駅舎がある。駅構内は立入禁止だが、駅舎横に空きスペースがあり、ここから列車の行き来を見ることができる。
【路線案内2】山の中腹に岩手石橋駅と石灰石積載施設がある
日頃市駅から先は、国道107号がかなり山あいを走るようになる。終点の岩手石橋駅へは、岩手開発鉄道の緑色の「第二盛街道陸橋」の手前の交差点を右折する。さらに県道180号線を線路沿いに約1.0km、石橋公民館前のT字路を左折すれば到着する。
岩手石橋駅はスイッチバック構造の駅で、列車はスイッチバック。進行方向を変えて駅に進入してくる。山の中腹に、巨大な石灰石の積載用のホッパ施設がある。このホッパ施設内に貨車がバックで少しずつ入り、数両ずつ石灰石を積み込んでいく。ガーッ、ガラン、ガラン、という石が積まれる音が山中に響き、迫力満点だ。
18両の貨車全車に石灰石が積まれたあとに、ディーゼル機関車が機回しされ、列車の逆側に連結される。そして後進して、スイッチバック用の引込線に入った後に進行方向を変更。石灰石を満載した上り列車は、下り勾配気味の路線をさっそうと駆け下りて行く。
岩手石橋駅の構内は立入禁止。踏切もあり注意が必要だ。見学の際は、安全なスペースでその様子を見守りたい。
【路線案内3】盛駅から赤崎駅までの路線も見てまわる
盛駅に戻り、臨海部にある赤崎駅を目指す。三陸鉄道の盛駅のすぐ横に岩手開発鉄道の留置線があるが、上り列車はここには停まらず、終点の赤崎駅を目指す。市街地を抜け、間もなく盛川橋梁を渡る。
この橋梁よりも港側に架かるのが三陸鉄道南リアス線の盛川橋梁だ。クルマで赤崎駅方面へ移動する場合は、南リアス線の橋梁と平行に架かる佐野橋を渡る。道はその先で、岩手開発鉄道の踏切を渡り、県道9号線と合流する交差点へ。ここを右折すれば、間もなく赤崎駅が見えてくる。
この赤崎駅は当初から旅客列車が走らなかったこともあり、ホームや駅舎はない。岩手開発鉄道の職員の詰め所と荷おろし場が設けられ、その姿は県道からも見える。岩手石橋駅を発車した上り列車は、約30分で到着。荷おろし場にそのまま進入した列車から降ろされた石灰石は、ベルトコンベアーで隣接する太平洋セメントへ運ばれていく。
赤崎駅〜岩手石橋駅間の11.5kmの旅。山あり川あり、趣ある駅舎が残るなど変化に富んでいる。
首都圏や、仙台市や盛岡市からも遠い岩手県の三陸海岸地方だが、三陸を訪れた際には震災復興を支える岩手開発鉄道にぜひ目を向けてみたい。最後に、大船渡周辺の復興状況と、そのほかの交通機関の現状を見ておこう。