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2018/11/4 19:00

今まで見たことのない新しい車両—鉄道車両のデザインに一石を投じる「西武新型特急」

おもしろ鉄道の世界 〜〜来春にお目見え!新車情報その2〜〜

西武鉄道の特急といえば、長らくレッドアロー号の名で武蔵野や、秩父路を走り続けてきた。そんな西武特急が姿を大きく変えて来春に登場することになる。

 

10月28日には新型特急の第1編成が山口県にある日立製作所笠戸事業所から西武鉄道の小手指(こてさし)車両基地に運ばれた。翌10月29日に行われた車両発表会見で愛称と形式名が発表された。加えて車両の一部写真、使われる予定のリクライニングシートが公開された。全貌の公開は無かったが、西武鉄道が言うところの「今まで見たことのない新しい車両」の一端が見えてきた。

 

西武鉄道はどのような新特急を走らせようとしているのか。未知なるその姿に迫ってみた。

 

写真提供:西武鉄道株式会社(一部は筆者撮影)

 

 

【新特急が走り出す1】西武鉄道の有料特急の歴史を振り返る

西武鉄道の有料特急の歴史は西武秩父線の開業とともにはじまった。1969(昭和44)年10月14日、西武秩父線が開業したちょうどその日に5000系による有料特急「ちちぶ」の運転が池袋駅〜西武秩父駅の間で開始された。5000系には「レッドアロー」の愛称が付けられた。初代レッドアロー号の登場である。

 

初代が誕生してから四半世紀近くたった1993(平成5)年に登場したのが、2代目10000系だった。現在も主力車両として走る10000系には「ニューレッドアロー」の愛称が付けられた。四半世紀のサイクルで置き換えが図られてきた西武特急の歴史。ちょうど四半世紀にあたる2018年に10000系に置き換わる新型車両が車両基地へ運ばれたのだった。

↑左が初代の有料特急車両5000系。現在は1両のみが保存され、横瀬車両基地で開かれるイベントなどで一般公開されている。右は現在、主力として走る10000系。西武池袋線と西武秩父線、西武新宿線用の有料特急として走り続けてきた

 

2017年6月、新型特急車両の基本デザインがすでに発表されている。

 

その時に発表された車両イメージは、かなり異彩を放っていた。筆者は本当に、このような形の特急が走るのだろうか、架空の姿なのではないだろうか、と多少の疑問を感じていた。

 

実際に今回、車両発表会見で公開された写真は、以前に発表された基本デザインを踏襲したもので、「今までに見たことのない新しい車両」として実際に仕上がりつつあることをうかがわせた。

 

ちょうど10年前の2008年に導入された30000系が、西武鉄道の車両デザインとしては最初の「今までに見たことのない新しい車両」だった。こうした革命的な鉄道デザインを、さらに推し進めているという印象を強く持った。

↑2008(平成20)年に登場した30000系は、当時の鉄道車両として異彩を放っていた。愛称は「スマイルトレイン」。「たまご」をモチーフしたデザインとされる。プロジェクトに参加した女性社員の意見を取り入れた意欲的な電車だ

 

 

【新特急が走り出す2】「レッドアロー」から「ラビュー」に

車両発表会見では、2019年3月に登場予定の新特急の形式名と愛称が発表された。

 

車両形式は「001系」。西武鉄道の「次の100年に向けた出発点である車両」を表現するために100年を逆から表し、「001」とした。「00」には「∞(無限)」の可能性という意味も込められている。

 

さらに愛称は「Laview(ラビュー)」と発表された。Laviewの「L」は贅沢(Luxery)なリビング(Living)のような空間を指す。そして「a」は矢(arrow)のような速達性。「view」は大きな窓から移りゆく眺望(view)を指すとしている。

 

この001系「Laview」は2018年度に16両、2019年度には40両の計8両×7編成が製造される予定だ。2018年度は西武池袋線、西武秩父線での運用が主体となる。現在、主力車両の10000系の7両×7編成は、2019年度にはすべてが置き換わる予定。その時に、長年親しまれてきたレッドアローという西武特急の愛称も消えることになりそうだ。

 

↑新型特急001系の愛称は「Laview」と発表された。登壇したのは後藤高志西武鉄道取締役会長(右から)、女優の土屋太鳳さん、建築家の妹島和世氏、若林久西武鉄道代表取締役社長(西武鉄道 新型特急車両発表会見で)
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