【琴平線のお宝3】かつて都市部を走った名車両たちが集結
琴平線を走る電車は現在5種類の車両が使われる。かつてはみな都市部を走った車両ばかりだ。京浜急行電鉄(以降「京急」と略)や京王電鉄での主力車両として活躍し、現在は琴平線で“第二の人生”を過ごしている。それぞれの生い立ちをたどろう。
◆琴平線600形 元名古屋市営地下鉄1600形、1900形
琴平線の600形は名古屋市営地下鉄名城線を走っていた1600形、1700形だ。志度線、長尾線用に、ことでんが譲り受けた車両で、長尾線で余剰になったことから、琴平線用に使われている。15.5mと他車両に比べて短く、輸送力が劣ることから、主に朝のラッシュ時に使われている。
◆琴平線1070形 元京急600形
琴平線の1070形は、元京急の600形だった車両。6両が高松へやってきて、そのうち4両が今も走り続けている。
京急では1956(昭和31)年に導入、正面が2枚窓の姿がおなじみで、快速特急として活躍した。ことでんに来た後は、正面に貫通トビラを設けたため、面立ちはずいぶん変ってしまったが、今でも人気車両であることは変わりない。製造から60周年を迎えたこともあり2017年の秋から数回にわたり、特別運行が行われ注目を浴びた。
◆琴平線1080形 元京急1000形
ことでんには元京急の車両が多い。京急がことでんと同じ1500Vで電化され、線路幅も1435mmと同じ。大きく手を加える必要がないためだ。この1080形も京急の元車両で、京急では1000形(初代)として走った。1959(昭和34)年から製造を開始。都営浅草線への乗り入れ用として計356両が造られ、2010年まで活躍した。
ことでんには1988(昭和63)年から1991(平成3)年にかけて計12両が入線、現在も10両が在籍する。
◆琴平線1100形 元京王電鉄5000系
琴平線を走る1100形は、元京王電鉄の初代5000形で、京王線が1500Vに昇圧した1963(昭和38)年に導入された。ことでんへやってきた車両は、その最終盤の1969(昭和44)年に造られた車両で、1997(平成9)年から琴平線を走り始めている。
京王線が1372mmという特殊な線路幅ということから、台車を京急の1000形のものに履き替えた上で、ことでんに入線している。
◆琴平線1200形 元京急700形(2代目)
琴平線を走る1200形は琴平線で最も多い14両と主力車両として使われている。元は京急の700形で、1967(昭和42)年から導入された。京急700形は同社初の4扉車で、本線の普通列車として使われる予定だった。ところが加速性能に問題があったことから、大師線やラッシュ時用の優等列車に使われた車両だ。ことでんでは2003(平成15)年から運用開始、琴平線だけでなく、長尾線も走っている。
【琴平線のお宝4】高松築港駅では内堀の魚たちに注目したい
車両の話が長くなってしまった。このあたりで琴平線の沿線模様に戻ることにしよう。琴平線の起点は高松築港駅だ。この駅、初めて訪れた時はちょっとびっくりさせられた。
駅のすぐ横に高松城趾がある。もちろん高松城が造られた方が駅の開設よりもずっと前のことで、西暦1590年のこと。讃岐国を治めた大名、生駒親正(いこまちかまさ)により築城された。江戸時代には高松藩の藩庁が置かれた。生駒家が17世紀中ごろに転封されて以降は、親藩である松平家(水戸徳川家の血を受け継ぐ)の統治が続き、明治を迎えている。
松平家は高松藩を長年治め、特に水利の悪い讃岐の地でかんがい用のため池の整備に力を投じたとされる。これが讃岐にため池が多い一つの理由となっている。
高松城は瀬戸内海に面して造られた海城。内堀には海水が流れ込んでいる。高松城跡は玉藻(たまも)公園として親しまれていて、園内では堀を泳ぐ鯛に向けてのエサやり体験が楽しめる。この体験の名は「鯛願城就(たいがんじょうじゅ)」と名付けられている。
さて高松築港駅のホームからも、そんな高松城趾の様子を望むことができる。琴平線用の1番線が城趾の横にあり、ホームの壁は城趾の石垣そのものだ。さらに、ホームの中ほどが内堀に面している。目の前に高松城の二の丸と天守閣跡を結ぶ木の橋・鞘橋(さやばし)が見える。またホームのすぐ横にある内堀に、魚が群れる様子が楽しめる。
1番線ホームに高松城と内堀の案内板がある。この案内によると、内堀にはクロダイ・マダイやスズキ、ボラ、ヒラメ、フグといった魚が生息しているそうだ。
駅のホームが室町時代に建てられた城趾に接していて、さらに内堀が眺められ、しかも海の魚たちが泳ぐ姿が楽しめる。このような駅は、日本の数ある駅の中でも、たぶん高松築港駅のみではないかと思われる。
高松築港駅を発車した電車は高松城趾の周囲を回り込むように走っていく。左手には内堀、そして艮櫓(うしとやぐら)を過ぎると、電車は高松の繁華なエリアへ進んで行く。2駅目が瓦町駅(かわらまちえき)。ことでんで最も大きな駅で、同会社のターミナル的な役割をしている。志度線と長尾線の乗換駅としても機能している。